4:ニーナはいけない子だね
終礼も済み、後はもう帰るだけだ。
期末考査の出来が思うようではなくても、この瞬間だけは、皆、笑顔だ。
「ではご機嫌よう、ニーナ」
「ご機嫌よう、メグ」
メグに挨拶すると、すぐにクリスの元へ駆け寄る。
もし私に尻尾があるなら、もう嬉しさで尻尾をふりまくりな気がする。代わりに肩にいるミルキーが、可愛い尻尾を振ってくれている。
「ニーナ、満面の笑みだね。期末考査が終わって、とても嬉しいんだね」
確かに、期末考査が終わったことは嬉しい。
でもこの笑顔は……。
椅子から立ち上がったクリスに、背伸びして「ねぇねぇ」と袖を引っ張る。
これは『クリスにだけ話したいことがあるの』という合図。
高身長のクリスとの内緒話には、身を屈めてもらわないと無理だから。すぐにクリスは、私の顔に自身の耳を近づけてくれる。
「期末考査が終わったのは、もちろん嬉しいわ。でもこの後、クリスと二人きりでデートだから。デートが楽しみで笑顔になっちゃうの」
クリスの耳元でそう囁くと……。
その頬が、うっすらと赤くなった。
「ニーナ、ここは教室だよ……。そんな僕を狂わすようなことを言わないで」
サラサラの前髪をかきあげ、ほうっとため息をつくクリスは、とんでもなく艶っぽい。偶然目撃してしまった女生徒の何人かが倒れそうになり、男子でさえ顔を赤くする。
当然、私も失神寸前になり、クリスに体を支えられ、なんとか歩き出す。その後ろを銀狼が追いかける。
まさか自分の言葉のせいで、失神寸前になるなんて。
クリスに気持ちを伝える時は、なるべく二人きりの時にしよう。
私が猛省する一方、クリスは上機嫌で私に話しかける。
「今日はニーナとの初めての二人きりのデート。王都では二人きりで、揚げていないドーナツを買いに行ったりしたよね。でもブルンデルクでは初めて。当然、いろいろと考えたよ。『初めて』というのは、一回限りだからね。だからいっぱい楽しもう、ニーナ」
そんな頼もしいことを言われると、なんとか保っている意識が、またも吹き飛びそうになる。
ここはまだ校舎内。落ち着け、私。
必死に意識を保ち、なんとか馬車に乗り込む。
でも乗り込んだ瞬間。
たまらずにクリスに抱きつく。
「どうしたの、ニーナ!?」
「この馬車は、みんなで乗るものでしょ。こんなこと、普段は絶対できないから……」
背徳感ですよ。
普段はみんなで乗る馬車の中で、クリスに抱きつく。
このいけないと分かっていることをしてしまうゾクゾク感。
たまらないです。
「ニーナはいけない子だね」
クリスはそう言っているのに。
気づけばしっかり私にキスをしている。
クリスだっていけない子なんだから。
とかなんとか思いながら、もう馬車の中でも、ラブラブしてしまう。
「ねえ、クリス、どこに向かっているの?」
「まずはお昼ご飯と思ってね。僕も初めて行くお店だけど、ブルンデルクを訪れる要人が利用するというから、きっと美味しい料理を楽しめるはずだよ」
クリスはいつもみんなと一緒にいるので、お店の下見はできない。
それでもいろいろ調べ、見つけてくれたに違いない。
その気持ちと行動だけで、私は十分満たされる。
クリスと一緒のお店なら、どんなお店でも構わない。
私はそんな気持ちだったが、クリスが連れて行ってくれたのは……。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
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サラサラの前髪をかきあげ
ほうっとため息をつくクリス(*/▽\*)
絵で、絵で見たい!
12時台の更新に続きますっ!

























































