3:プロローグ~実現前に妄想炸裂☆~
期末考査の二日目、魔法の実技試験を終え、帰宅した後。
翌日に備え、勉強部屋に集合し、皆で勉強に励んでいた。
夕食後のクリスとの二人だけの時間も、教科書片手にクリスが問題を出題し、私が答えるという感じで過ごしている。ただ、ソファに座るクリスは、私のことを抱き寄せていた。私もクリスの胸に身を預けている。もし会話が聞こえなければ。ソファに座り、甘えている二人にしか見えないだろう。
ちなみにミルキーは、銀狼の尻尾に包まれ、気持ちよさそうに寝ている。私とクリス以上に、ミルキーと銀狼は仲がいい。
「うん。ニーナ、正解だよ。……もうあと5分で、僕は部屋に戻らないといけない。だからニーナ、勉強はもういいかな?」
クリスは間違いなく、期末考査のために勉強をしなくても満点をとれる。でも何一つ文句を言わず、私の勉強に付き合ってくれた。二人だけの時間も、期末考査が始まってからは、勉強タイムになっている。でも何も言わない。ただ自身の部屋に戻る前の5分間だけ。その5分は甘えさせて欲しいと、やんわりアピールする。
正直、そのクリスの健気さが堪らなかった。
遠慮して5分なんて言わず、30分ぐらいラブラブしたいと言ってくれてもいいのに。クリスはなんて謙虚なのだろう。
もうその言葉がそろそろ出ると感じた瞬間から、私の胸はキュンキュンしている。だからその問いかけにも即答で「もちろん! ありがとう、クリス。私の勉強に付き合ってくれて」と言い、その胸に抱きついた。
するとクリスは……。
ずっとそうしたかったという気持ちを伝えるように、私をぎゅっと抱きしめた。
この瞬間は……言葉にできない幸せな気持ちになる。
クリスのドキドキしている心音も聞こえ、透明感のある清楚な香りに包まれ、もう本当に嬉しさでとろけそうになる。
「ねえ、ニーナ。今日のウィルの言葉、聞いていた? 朝の馬車の中で言っていたこと」
「ウィルの言葉……? 寄付金のこと? あれは本当に多額よね。私が生徒会のメンバーだったら……フィアマールに姉妹校を立てて、冬のうんと寒い時期は、そっちの校舎で学びたいわ。あ、でもそうすると、スケートができなくなっちゃう。ねえ、クリス。冬になったら、スケートをしましょう。クリスはスケート、やったことがある?」
私が顔を上げると、クリスはライラック色の瞳を輝かせ、笑顔になる。そして私の頭を愛しそうに撫でながら口を開く。
「ニーナの案は素敵だね。学生のうちに違う土地で過ごすのは、経験という意味で、とても重要だと思うよ。でも確かにスケート……。ブルンデルクには、ニーナに会うため、春にしか来たことがないから。知らないし、やったことがないな。僕でもできるかな?」
「もちろん! クリスなら運動神経もいいから、すぐに滑れるようになるわ」
「本当に? ニーナが教えてくれる?」
私がクリスに教える!?
クリスに教えてもらうことは、山ほどあっても。
私がクリスに教えることがあるなんて……。
想像したことがなかった。
そうか。
私がクリスに教えるのか。
妄想が広がる。
「ニーナ、本当にこんな靴で立てるのかい? 歩くというか、滑るのかい?」
「そうよ、クリス。ちゃんと私が支えるから大丈夫」
「分かったよ」
ああ。とまどう顔のクリスは、とってもキュートに違いない。
「ニーナ、こんな靴で氷の上にいったら……滑りそうだよ」
「滑って正解よ、クリス。滑るためにはいたのだから」
「そうか……! ニ、ニーナ!?」
「大丈夫よ、クリス、私につかまって」
「でも、ニーナ、本当に僕を支えられる?」
「それは……」
もし二人ですってんころりんしても、きっとその後……。
「ニーナ、ごめんよ、どこも怪我していない?」
「平気よ。私も初めてのスケートでは、こんな感じだったから」
「そうか。何度かやれば上達するのかな?」
「そうよ。練習すれば大丈夫よ、クリス」
「分かった。頑張るよ、ニーナ」
そう言ってクリスは私のことをぎゅっと抱きしめて……。
「ニーナ?」
現実のクリスの声に、ハッとする。
慌ててクリスを見ると……。
ニコニコと微笑んでいる。
「なんだか楽しい空想が広がっていたみたいだね。そこにはちゃんと僕もいたのかな?」
「それはもちろん……。って、ごめんなさい。クリスが甘える時間だったのに」
「大丈夫だよ、ニーナ。それでウィルの言っていた件だけど。期末考査の最終日、ウィルも予定が入ってしまった。つまりこの日は、ニーナと僕の二人で馬車に乗って家に帰ることになる」
「あ、なるほ……」
そこで私はハッとしてクリスを見る。
クリスは「?」という顔になったが、すぐに笑顔になる。
「期末考査の最終日だ。宿題もないし、羽を伸ばしてもいいよね。しかもお昼前に終わるから。時間もたっぷりある。ニーナ、僕とデートするかい? 二人きりで」
そこで私はようやく気づく。
夢のようなシチュエーションが待っていることに。
期末考査の最終日に!!!
クリスと二人きり! 二人だけでデート!
制服姿で、放課後、二人きりでデート!
またも妄想の世界にダイブしそうになるが。
意識を現実に戻し、返事をする。
「する! 絶対にする! 二人きりで、クリスと二人きりで、デートする!」
「決まりだね、ニーナ。デートしよう」
そう答えたクリスは、嬉しそうに私にキスをして……。
これまでで一番ハイテンションなキスを交わした。
最後までお読みいただきありがとうございます!
クリスと2人きりのデートが次回、始まります!
明日、11時台に『ニーナはいけない子だね』が公開です。
いけないと言いつつ
クリスはニーナに……(*/▽\*)
引き続きよろしくお願い致します♪

























































