1:プロローグ~念願が叶う!~
ベルの音が鳴り響き、無音だった教室に、一斉に様々な音が沸き起こる。羽ペンを置く音。大きなため息。椅子を動かす音。そして生徒達の喜びと嘆きの声。
「ようやく終わったわ」「時間切れだよ」
「難しかった」「あとは夏休みを待つだけ」
そう。
今日は期末考査の最終日。科目は「王国史」。
私にとっては、得意科目だ。
これはウィルのおかげ。
以前、ウィルからちょこっと王国史について習った時。
その説明がとても面白かった。
だから。
期末考査で勉強するにあたり、名前を覚えるのが難しい人物や出来事について、ウィルに尋ねたのだが……。まるで冒険活劇を聞くような、とてもドラマチックな説明をしてくれた。あれだけ覚えられなかったへんてこりんな名前も、一発で覚えることができた。
そのへんてこりんな名前は勿論、ウィルが「これとこれは絶対に期末考査に出題されるよ」と教えてくれた出来事や法案が、まさに問題として登場していたのだ! つまり私はスラスラと問題を解くことができ、ベルの音が鳴った瞬間に感じたのは……。
達成感。
すべての問題に回答し、自信もある。
もう清々しくて、たまらない。
「ニーナ、すごい笑顔ね。羨ましいわ」
そんな風にメグから指摘されるぐらい、笑顔になっていた。
でも、笑顔の理由は、それだけではない。
なぜなら。
この後、クリスと私は……。
初めての、二人きりのデートをすることになっているのだ!!
しかも制服姿で。
制服。
今は6月末。既に夏服。
夏服は、半袖のパフ・スリーブのブラウスに、襟元には黒いリボン、ピンクと黒のチェック柄の、ハイウエストのジャンパースカートだ。
前世で彼氏なしを全うした私にとって、ティーンの頃からの憧れは……制服デート。
一応、制服デート自体は、早い段階で実現した。
ただ、それは二人きりではない。
ウィル、アンソニー、ジェシカ、そしてアミル。
このメンバーと、常に一緒だった。
ただ、クレープを食べる時、テーブルではクリスと私の二人きり。
だから私は、それで満足していたのだが……。
期末考査の最終日。
いろいろな奇跡が重なった。
その結果。
クリスと私は、二人きりでデートできることになったのだ!
まず、アミル。
アミルは私のことを諦めた……ハズだったが、6人で行動している時、気づけば私のそばにいることが多かった。もちろん、抱きしめるとか、キスをしようとするとか、そんなことはしない。
だが……。
「ニーナ、これも食べてみろよ、上手いぞ」と言って、私にドーナツを齧らせる。
「なあ、ニーナ、これ、何だ?」そう言って、私の手を掴む。
「ニーナ、そっち、見てみろよ」そんなことを言いながら、さりげなく肩に手を回す。
そのすべてが何というか、友達であれば許されるギリギリラインというか……。だからクリスも、アミルの行動が気になっているが、注意もしにくい。
とうことで6人の中で、一番私に絡むことが多いアミルがまず、期末考査の最終日に、予定が入った。
「なんか、クラスの親睦を深めるために、期末考査の最終日、みんなでお茶会をするんだって。本当はニーナやみんなと、一緒がいいのだけど……」
学校からの帰りの馬車の中で、アミルがこう口にした瞬間。
この時点で、クリスとの二人きりデートができる兆しなんて、もちろんゼロだった。ただ普通にアミルには、ちゃんと社交術を身に着けて欲しいと思っていた。
だから……。
「アミル、そういうクラスの行事って、面倒だと思う気持ちも分からなくないわ。でもせっかく誘ってくれたのだから、一度は参加した方がいいと思うの。つまらなかった、楽しかったは、参加してみないと、判断できないでしょう?」
私がそう指摘すると、ウィルも同意を示した。
「みんなアミルと仲良くなりたいと思っているハズだ。ギリス王国とメリア魔法国の友好のためにも、参加するといいよ」
するとジェシカが……。
「確かアミル様のクラスには、ヒュー・マーブルという子がいますわよね? ブルンデルクには、マーブルおばさんのバームクーヘンという有名なお店があります。彼は、その店主の甥っ子さんだと聞いていますわ。きっとそのお茶会には、マーブルおばさんのバームクーヘンの、特別なお菓子が出る可能性があると思いますの。ですから出席することを、おすすめしますわ」
「そうなのか!」とアミルが叫び、「そうなの!?」と私も叫ぶ。アミルも私も、マーブルおばさんのバームクーヘンが、大好きだった。ゆえにジェシカのこの一言が決め手となり、アミルはお茶会への出席を決めた。
一方の私は、ものすごくこのお茶会に参加したい……その時はそんな感じだった。
ともかくこれで、アミルは期末考査の最終日、私達と一緒に帰らないことになる。
Episode3スタートしました~!
引き続きお楽しみくださいっ!

























































