70:これは……驚いたな。とんでもない話だ
悲しそうな顔をしたアミルだったが、しっかりとした口調で自身の考えを話し始めた。
「オレとしてはニーナと出会い、幸せになるつもりだった。でもそれは……。オレの描く幸せであって、ニーナにとっての幸せではない。残念だけど。だからオレは……まずは魔法をちゃんと学び直したいと思った。魔法を学んだその後は……まだ分からない。オレがどんな職業に就けるかは、未知数だ。ただ、もしコンカドール魔術学園を卒業し、メリア魔法国で仕事が見つかるなら……。オレはこの国に帰化するつもりだ」
これにはその場にいる全員が「「「「「え」」」」」と声を出していた。
そんなこと、ギリス王国が許すはずがないと思ったのだ。
「そんなに驚くことか? オレは単純にこう考えた。ギリス王国には、ラフィーとヤシンがいる。当然だが、魔力は強い。そしてきっと将来、ベルディムと母さんの間には、オレの兄弟が生まれる。そうなると、ギリス王国には、オレを含めた四人もの最強魔法使いがいることになる。でもメリア魔法国はどうだ? クリスは間違いなく、強い魔力を持つ。そしてウィルも、多分そうだろう。でも他は? 四対二では心細いだろう? しかもベルディムと母さんの間には、何人子供が生まれるか分からない。だからオレがメリア魔法国に帰化すれば、少しは安心できるだろう? それにオレがこの国に帰化すれば、ベルディムと母さんも、喜んでメリア魔法国を友好国として認めると思う。いや、認めるよ」
そこでアミルはすまなさそうに頭を掻いた。そしてなぜかクリスと私のことを交互に見て、口を開いた。
「クリス、ニーナ、オレの母さんは……二人に随分と迷惑をかけたようだ。本当にそれは、すまなかった。母さんに加え、オレまで二人に迷惑をかけようとした……。そのことを、オレも母さんも自覚している。だから絶対に、クリスとニーナに、メリア魔法国には、悪さをしない。もしベルディムと母さんの間に子供が沢山できたら、メリア魔法国の王族と、婚姻関係を結んでもいいって」
「これは……驚いたな。とんでもない話だ。アミル、これは公式な話として受け止めていいのか?」
ウィルが問うと、アミルの手には、いつの間にか書簡が握られている。しかもその書簡には、ギリス王国のシグネットリングの封蝋が見える。つまり、国としての正式な書簡ということだ。
「オレが話した内容の、国として公式な見解が必要なものが、まとめられている。これを国王陛下に渡して欲しい。とはいえ書面一枚では済まないだろう。後の手続きは、国王同士で進めてほしい。基本、今のギリス王国の国王は、メリア魔法国から出された条件を100%飲む。だからって足元を見るようなことは……しないとは思うが、しないでほしい。あくまでお互いが、友好国でいられるようにしてほしい」
アミルはそう言うと、ウィルに書簡を渡した。書簡を受け取ったウィルは、封蝋を確認し、大きく息をはく。
「本物だ。これはギリス王国の封蝋だ。……どうやらアミル、君は、天性の国の上に立つ者に相応しい器を持っているようだ。わずか短期間で、ここまでギリス王国を掌握するなんて。並の者ができることではない。君は……すごいよ。コンカドール魔術学園でぜひ学ぶといい。ただし手続きは正しくやってもらおう」
ウィルに指摘されると、アミルは「はあい」と可愛らしく返事をした。
そんなアミルを見て、クリスが尋ねる。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
アミルの発言には驚くばかり。
次回、『まさかこんな風に、ムキになるなんて』は
明日、11時台 に公開です!
そして。
6日と7日はプチサプライズありです☆
引き続き何卒よろしくお願いいたします~


























































