69:復讐
復讐について尋ねられたアミルは静かにその答えを口にする。
「最初は、復讐を考えたと思う。でも、ベルディムの純粋な愛に触れるうちに、考えが変わった。母さんは王族への復讐をやめ、代わりに第四王子を王太子にするように求めた。ベルディムにだけ、魔力を戻すよう、オレに頼んだ。オレもそれがいいと思った。だからベルディムの魔力を戻した。さらに二人の弟、ラフィーとヤシンにも真実を伝えたけど……」
……! 遂に二人の弟にも話したのね。
でもアミルのこの表情……。
「最初は二人とも信じなかった。だが観念した国王が、それは真実だと二人に告げ、ようやくラフィーとヤシンも、母さんが本当の親であると信じた。今は二人とも、ベルディムと母さんのために、引き続き魔法を学び、武術を極めようと努力しているよ」
良かった!
二人の弟もようやく真実を知ることが出来た。
何よりもあのアンジェラが復讐をせず、未来に向けて動き出したのは……。
本当に良かったと思う。ここでアンジェラが復讐をすれば、アンジェラに対する遺恨が生まれる。それは将来的にギリス王国に、不穏な影を落とすはずだ。今回の帰結の仕方であれば、現国王の血筋も、ベルディムのおかげで残ることになる。ベルディムとアンジェラの間に子供が生まれれば、それは強い魔力を持つ子供であり、王国の行く末としては、好ましいことだろう。
「あ、あと、母さんは今、ベルディムと時間を見つけては、あちこちに転移魔法で出掛けている。なんでも『過去に迷惑をかけた人に、お詫びを行脚しているのよ』って、言っていた」
これにはクリス、ウィル、私が反応していた。
アンジェラが過去に行っていたこと。それは……。
――「いろいろな国を渡り歩き、魔力の強い男性を見つけると、品定めをするようになる。自分の基準にあわない男性は消し、基準にあっても満足できないと消す。そんなことを繰り返していた」
『奇跡の子』同士には『共鳴』というテレパシーみたいなものがあり、お互いの精神領域に踏み入ることができるという。意図せずして、アンジェラの過去の記憶を見たクリスは、彼女が世界中を旅し、行っていたことについて教えてくれた。ただ、ウィルのさらなる調査で分かったことがある。
アンジェラは、完全に心が壊れたわけではなかった。超えてはいけない一線を越えず、踏みとどまっていた。ウィルと話したクリスは、そのことをこう評している。
「アンジェラは一度、流産を経験している。その時に命の重み、尊さを、知ったのだろう。自分の手で誰かの命を奪う――そこまでは、できなかった。だからアミルと同じだ。僕のことを消す、と言っていたけど、殺すわけではない。魔力を奪い、魔法を使えない人間にする。つまり、アンジェラはいろいろな国を渡り、男性に手を出していたが、魔力を奪うだけで、命をとることはなかった。とはいえ、魔力を奪われたなんて、知られたくない人も多かったのだろう。アンジェラから解放された後は、街や国を出てしまう者も多かった。よってアンジェラによって殺された――と思われていたのだろうね」
アンジェラは今、ベルディムと共に、魔力を奪った男性の元を訪れているのだろう。奪った魔力を戻すために。アンジェラがそこまで心を入れ替えたのは、間違いなく、ベルディムのおかげだろう。心から愛する男性と結ばれて……本当に良かったと思う。
「アンジェラが幸せに向け、歩み出していることはよく分かった。それで、君自身はどうなんだい、アミル?」
クリスの問いに、アミルは少し悲しそうな顔になった。
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