65:同じ過ちはしたくない
アミルに問われたクリスは、とても落ち着いた声で答えている。
「アミル。君のことはニーナから聞いているよ。僕は一度失敗したら、同じ過ちはしたくないと思っている。君の魔力は解析済みだ。すでにこの国に侵入した時点から、把握させてもらっている。コンカドール魔術学園へ向かい、恐らくはその場で教師に魔法を使い、学園への入学を認めさせ、制服も手に入れた。そしてニーナの魔力を追い、ここまで来たのだろう?」
……!
クリスは既に、アミルに気づいていたの!?
「これは……驚いた。何者だ、クリス、お前は? いや……もしかしてお前が、母さんの言っていたメリア魔法国の最強大魔術師か?」
「あいにくだが違う。大魔法使いメイズさまは王都にいる」
アンソニーがジェシカを庇い、ウィルは既に自身の足元に円陣を出現させている。ジェシカもようやく眉目秀麗な男子が敵かもしれないと分かり、顔が緊張している。
「ふうーん。てっきりお前がその大魔術師だと……!?……な、これは……」
アミルが絶句する。でもすぐに口を開く。
「防御魔法……? こんな防御魔法、知らないぞ!?」
何をアミルが言っているのか、分からない。
たまらずクリスの背中から顔を出し、前方を見た私は絶句する。
アミルの膝から先が消えている。
いや、違う、石畳の中に両脚が飲み込まれつつある。
確かに、こんな防御魔法、知らない……。
「アミル、目的は? 返答次第で、他の魔法もすべて発動させてもらう」
え、えええええ!?
クリス、この広場にいつの間に、魔法を展開していたの!?
ずっと甘々モードで、私をとろけさせる笑みを見せ、ドキッとする言葉を囁いていたのに!
いくらクリスが戦略家であっても、これにはもう、ただただ驚くしかない。ウィルもアンソニーもジェシカも、仰天した状態でアミルとクリスを見守っている。
「ニーナ、嘘をついたな。クリスの方が魔力が弱い? そんなことはない。とんでもない魔力だ。しかも使っている魔法が……さっぱり理解できない。オレは学校に行っていない。無知だから分からないとも思ったが……。そういう問題ではないだろう、これは!?」
「アミル、魔力は間違いなくあなたが強いはずよ。ただクリスは戦略と戦術にも長けているから。それより、どうしてブルンデルクにいるの!? これは不法入国よ」
再度、クリスの背からアミルを見ると、太股の半分が消えていた。いや、石畳の中に吸い込まれている。
「分かったよ、ニーナ。確かにこれは不法入国だ。だがその件で話をしたいと思っている。そこの男は王族だろう? 広場に現れた騎士は王族に仕える者だろう? 王族とクリスとニーナの四人で話したい。攻撃をするつもりはない」
アミルの言葉に広場を見渡すと、さっきまで学生やら親子連れで賑わっていたのに、その姿がない。代わりに大勢の騎士の姿が見える。どうやらウィルは、クリスとアミルが問答している間に、自身の騎士や魔法騎士を呼び出し、広場にいた市民を避難させていたようだ。さすが、ウィル!
「アミル、交渉するなら僕としてほしい。ニーナを巻き込まないでもらいたい」
凛としたクリスの声にアミルは……。
「分かった、分かった。クリス、頼む。交渉させてくれ。このオレの体を飲み込もうとする魔法を解除してくれ」
「その魔法は解除する。でも他の魔法は君の行動次第で発動させる。特に、ニーナに何かした時、僕は手加減をしない。ここはブルンデルク、メリア魔法国だ。ギリス王国ではない。地の利は僕にある」
「クリスは戦略と戦術にも長けている――か。確かにその通りだ。……ニーナには手を出させない。母さんの名に誓って」
張りつめていた緊張の糸がほぐれた。
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