62:志の高い魔法騎士達
今回得られたアミル達の情報は、今後のギリス王国との関わりを考える上で大きな意味を持つ。私はさらわれることになったが、無事戻って来ることができた。その上でメリア魔法国としては、ギリス王国の機密情報をいくつも得ることになったのだ。これは大きな収穫を得ることが出来たと言えるだろう。
「それで、アンソニーの方はどうだった?」
ウィルにふられたアンソニーは、パンをお皿に置き話し出す。
アンソニーもまた、騎士達の訓練を終えたウィンスレット辺境伯と話すことが出来た。ウィル同様、自分達の無事の帰還を報告し、アミルについて話したという。するとウィンスレット辺境伯もまた、アミル達兄弟のことを知ると、警戒心を強めた。ブルンデルクはギリス王国と国境を接している。ギリス王国との間に何かあれば、ブルンデルクは最前線になる。よってこの反応もまた、当然だった。
ちなみに私の父親は昨日、ブルンデルクにやってきていた。そして今日はまさに黒い森へ足を運んでいる最中なのだという。
クリス、ウィル、アンソニーは、私の救出のため、すぐにあの砂漠の町へ向かった。一方の残された魔法騎士達は、守護霊獣の保護活動を続けていた。
私がさらわれたとアンソニーが報告した直後。魔法騎士達は、自分達も私の救出に協力したいと口々に申し出てくれた。しかしそれを止めたのは、クリスだった。
クリスはすぐに追跡魔法を使い、だいたいの状況を把握した。私がいる場所に使われている魔法の細かい解析は終えていないが、なかなかに厄介な魔法が使われている。大人数で何かしてどうかなるものではないと判断した。ゆえに魔法騎士達の申し出は有難かったが、辞退することにしたのだ。
だが魔法騎士達は、志が高い人ばかり。それでも何か手助けができないかと、ウィルに直談判する。クリスは既に、砂漠の町へ出向くと宣言していた。そこでウィルは魔法騎士達に、守護霊獣の保護活動を続けるよう命じる。
魔法騎士達は、ウィルの命令に最初は困惑した。でも私が連れ去られたきっかけは、守護霊獣だった。不用意に黒い森の守護霊獣と接触し、第二の私のようにさらわれる人間が出てくるかもしれない。そうならいためにも守護霊獣を保護することは重要だ――ウィルにそう説得され、魔法騎士達は保護活動を再開した。
クリスやウィルという戦力を失い、日曜日で活動を終えることは当然できない。そこで引き続き活動を続けており、今日にも終わるということで、父親はその手伝いに向かったのだという。
クリスからの報告で、私の救出は長期戦になることも予想されていた。せっかく王都からブルンデルクに父親は来たわけだが、空振りで戻る可能性も高い。それならば、私がやろうとしてやり遂げられなかったことを手伝ってやりたい――そう考えた父親は、魔法騎士達に手伝いを申し出たのだ。
父親は、王都で暮らす伯爵家の当主だ。本来、そんな守護霊獣の保護活動なんて、しなくていい立場。それを手伝うと言ったので、魔法騎士達は大いに驚く。勿論ウィンスレット辺境伯も、ビックリしていたという。それでも父親の気持ちを汲んでくれた。ウィンスレット辺境伯は、私の父親を黒い森へ送り出す。護衛兼手伝いで自身の部下の魔法騎士をつけて。
この話をアンソニーから教えてもらった時は、さすがに胸が熱くなった。
悪役令嬢にならないため、両親を騙し、ブルンデルクにやってきた。つい最近クリスやウィルと共に王都へ戻ったが。それまでの9年間、一度も王都にも、ノヴァ伯爵家にも、顔を出すことはなかった。それなのに父親は、親孝行をほとんどすることもない娘を心配し、わざわざブルンデルクにまた来てくれた。さらに私が途中で投げ出すことになった守護霊獣の保護活動を手伝っているのだ。感動した。夏季休暇は短期間でも、王都に戻ろうかな――そんな気持ちになっていた。
こうしてウィルとアンソニーの話を聞き、遅い昼食を終えると。まず私の父親が黒い森から帰ってきた。続いてジェシカが学校から戻った。さらに守護霊獣の保護活動を終えた魔法騎士達も帰途についた。最後にウィンスレット辺境伯が帰宅したわけだが。
クリスもウィルもアンソニーも私も、帰ってくる皆を迎え、お互いの無事を喜び、何があったかを話した。するとあっという間に、夕食の時間になった。
ウィンスレット辺境伯は、私の無事の帰還を喜び、夕食会を開催してくれた。それは母屋の一番広いホールで行われ、そこには守護霊獣の保護活動を行ったウィルの魔法騎士達も招かれている。さらに用意された料理は、晩餐会かと思うぐらいゴージャスなもの。
美味しい料理に舌鼓を打ち、あっという間に夜は更けていった。
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明日も 11時台に以下を公開です。
『前世から憧れていたシチュエーション』
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