59:クリスって、なんて甘えん坊なの!!
クラシックなアールグレイを入れ終えると、クリスの元へと運ぶ。私がよく知るアールグレイとは異なるが、飲み慣れると癖になる味だ。
「ニーナ、ありがとう」
笑顔のクリスが、紅茶を口に運ぶ。
あああああ、なんて優雅なのだろう。
こうやってソファに寛ぎ、紅茶を飲むクリスは、ザ・貴公子という感じで、とんでもなく優雅なのだ。砂漠の民の、露出多めの姿も素敵だったが、クリスはやっぱりこの姿が一番。
心の中のカメラで、シャッター切りまくりだ。
「クリス、魔力を消費した時は、甘いものでしょ。これ、お部屋に用意されていたから」
ウィンスレット辺境伯の、客人へのもてなしで素晴らしい点。それは客間であれば、例えその客が留守にしていても、いつ戻ってきても寛げるよう、整えていることだ。焼き菓子やチョコレートも、ちゃんと新しいものが用意されている。私はそれをお皿に並べ、紅茶と一緒に、テーブルに並べていた。
「美味しそうなお菓子だね。ありがとう、ニーナ」
カップをソーサーに置くと、クリスは焼き菓子やチョコレートが載せられたお皿に手を伸ばす。だが何も取らず、膝へと戻してしまう。もしかして食べたいお菓子がなかったのかしら?と思い、クリスを見ると。
甘えるように輝く、ライラック色の瞳と目が合う。
当然、そんな目で見られれば、心臓が一気に大騒ぎ状態になる。
「ニーナに食べさせて欲しいな」
!!
もう、クリスって、なんて甘えん坊なの!!
そんな風に脳内でツッコみをいれているが、完全に頬が緩んでいるのを感じる。
一旦クリスがいるのとは反対側を見て、ニヤけまくった顔を引き締める。
「分かったわ。どのお菓子がいいかしら?」
伯爵令嬢らしく、落ち着いた顔つきで、お菓子の乗ったお皿を左手で持ち、クリスの方へ顔を向ける。
「そうだね」と呟いたクリスは、お菓子を眺める。
「これがいいかな」と示したのは……。
クグロフだ。
レーズンなどのフルーツが入ったクグロフは、私も好きな焼き菓子だ。
「はい。どうぞ」
クリスの口元へクグロフを運ぶと。
「ありがとう」と笑顔を見せたクリスが、パクリと焼き菓子を頬張る。そのまま手を戻そうとしたら、手首をつかまれた。
「?」
指先についた砂糖をクリスが舐めた瞬間。
心臓がドクンと大きく跳ね上がる。
砂糖を舐め終えるとそのまま指先にキスをして、さらに手首にキスをして……。
ゆっくり腰を引き寄せると、今度は唇にキスをする。
甘い焼き菓子の香りが鼻孔に広がり、クリスの唇は温かく、そして……とても甘い。もうドキドキが止まらない。さらにクリスはキスを繰り返しながら、こんなことを口にする。
「ニーナが心配で、ずっとアミルとニーナの様子を見ていたけど……。アミルがニーナに触れる度、これまでにない強い怒りを感じたよ。怒りそのままに転移魔法を使いそうになり、その気持ちを鎮めるには……とても苦労した……」
キスだけでもドキドキしているのに、こんなことを言われると、さらにドキドキが加速される。全身が一気に熱くなり、頬に火照りを感じながらも、必死に弁明する。
「あんな姿を見せることになって、本当にごめんなさい、クリス。懸命に抵抗したのだけど、アミルの力は強かったし、脅されていたから……」
クリスは頬にキスをしながら「ニーナは悪くないよ」と繰り返す。
「ニーナは悪くない。それはよく理解している。ただ、僕がしたことがないようなことを、アミルがニーナにしたと思うと……。男として本当に、アミルには怒りを感じるよ」
苦しそうに掠れた声を出すクリスは……。
怒りと悔しさと同時に、なんだかとんでもなくワイルドで、男の色気にあふれている。
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もう1ページ、『止まらなくなってしまう……』を
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