50:クリスに会いたい
ようやくアミルと分かり合えたが、大切なことをもう一つ、伝えないといけない。
「ねえ、アミル。アンジェラの魔法を解術できたとして、その……アンジェラが暴走しないように、そこはちゃんと宥めてあげてね。王族のみんなに、アンジェラは腹いせ行為をするかもしれない。そうしたくなる気持ちは、分かるのだけど……」
「分かるよ、ニーナが言いたいこと。王宮の奴らが、母親の魔法の解術に積極的ではないのも、それが理由だろう? しかも今、奴らは魔法を使えないから、なおのこと母親のことを恐れている。本当は母親を追い出したいが、そんなことをすればオレが怒る。だから解術にも消極的で、ただ放置している」
アミルの理解の早さに感動してしまう。
もしアミルが常識のある大人に育てられていたら、王太子に相応しい器へと、成長していたはずだ。というか、多分、年齢は私と同じぐらいだろう。今からでも遅くはない。
アミル、頑張れ!
思わず心の中で、エールを送ってしまう。
「オレは王宮に行くつもりだけど、ニーナはどうする? 帰りたいよな、クリスの元に」
「うん……。クリスに会いたい」
クリスの名を口にすることを禁じられていたから。
久しぶりにその名を呼ぶことができた。
その瞬間、信じられないほど胸が高鳴り、クリスに会いたい気持ちでいっぱいになる。
「分かった。転移魔法でニーナを帰すよ」
「本当に! 良かったわ」
「それでどこへ帰せばいい?」
アミルに聞かれた私は、思わず考え込む。
黒い森へ戻してもらっても、そこにクリス達がいるとは限らない。
ウィンスレット辺境伯家の屋敷に戻ったら……もしかしたらクリス達は、いるかもしれない。
いや、待って。
今朝、朝食を食べた街……いや、その街から少し離れた場所に、クリス達がいた可能性が高い。でもそこがどこだか全く分からない。やみくもに転移しても、ここは砂漠も近いから、とんでもないことになるかもしれない。
「うん? ニーナ?」
「アミル、試したいことがあるの」
「試したいこと……?」
「実はこの指輪には、クリスの魔法で、転移魔法がかけられているの。ただ、まだ一度も使ったことがないから、起動してどうなるか分からなくて。もしうまくいけば、それで私は帰れる。もし失敗したら、その時はアミルにお願いしてもいい?」
私の話を聞いたアミルは、目を丸くする。
「クリスって何者なんだ!? ニーナは、オレの方が魔力は強いと言っているけど……。転移魔法がかけられているって……。そんな魔法のかけ方があるのか? できるのか? オレがニーナを転移させたのは、プラジュを媒介にできたからで……。それにこの部屋で魔法を使えるのは、オレだけのはずなのに……」
「ま、まあ、そうよね。でもクリスは、魔法に関して研究熱心だから……。抜け道を見つけたのかもしれないわ」
「なるほど……。ただ、どうだろう。オレの転移魔法は二十の陣形で起動しているからな。そのクリスの陣形はどれぐらいなんだ? 中途半端だと、砂漠のど真ん中に転移するかもしれないぞ」
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アミル、最後にサラリとすごいことを言っていません!?
このあと 12時台に もう1話公開します~
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