46:間違いなく、アミルの母親は……
アミルはルビー色の瞳を細め、自身の足元にいるプラジュを撫でながら答える。
「驚きだよ。自身の守護霊獣である黒猫と、同化している。変身ではなく、同化だ。そんなことできる魔法、オレは知らなかった。王宮の大魔術師は知っていたが、守護霊獣と同化するなんて聞いたことがないと。しかも、変身魔法であれ、同化魔法であれ、言葉は人間のものが話せるはずだが、それができない状態だという。恐らくそれも魔法でそうなっている。だから事情も聞けない。本人による解除も、現状では難しい。
では解術するしかないとなるが……。大魔術師は、自分の代では無理で、解術するには三代先の大魔術師までかかるのでは、なんて悠長なことを言っている。でも、なんというか、王宮の奴らは本気ではないというか。母親にかけられた魔法を解術することに、積極的ではない気がしている」
今、私はとんでもない話を聞いてしまった。
アミルが話している最中に、何度も声をあげそうになり、それを堪えた。
そしていろいろな意味で、パニックにさえなりかける。
だがなんとか気持ちを落ち着かせ、思案する。
間違いなく、アミルの母親は……アンジェラだ。
どうしてもっと早く、気づけなかったのだろう。
だが仕方ない。
まさかアンジェラの子供と、こんな風に出会うなんて、どんなリスク管理をしている人間でも、想像できないと思う。というか、今のこの思考、不要な気がする。落ち着け、私。
ごちゃごちゃしそうな思考を整理する。
私が知っていることは何か。
アミルの母親の魔法を、解術する方法を知っている。アミルの母親が、王族たちからどんな仕打ちを受けていたのかを、知っている。なぜ逃げたのかも。そして今のような状態になった経緯も。さらに言えば、王宮の人達が解術に消極的な理由も。
この事実と私の解放をかけ、慎重に動く必要がある……と思った。
そのためにまず、確認しよう。
「アミル、お母様の魔法の解術に、王宮の人達は積極的ではないのよね。でもアミルには弟さんが二人いる。その二人は王宮にいるのでは? 二人の弟さんは、解術に協力はしてくれないの?」
『奇跡の子』の女性と魔力の強い男性が結ばれると、非常に魔力の強い子供が、確実に生まれる。アンジェラの子供は、すべてギリス王国の王族との間に生れている。王族は代々魔力強化のために、魔力の強い相手との婚姻を繰り返しているから、間違いなく魔力が強い。
だから……。
アミルの弟もアンジェラの子供。当然、魔力はアミル並に強いはず。そして王宮で育っているなら、アミルと違い、ちゃんと教育を受けているはず。であるならば。アンジェラにかけられた魔法の解析は、できるだろう。
「二人の弟は……。弟たちは、オレが兄であると知らされていない。当然、オレの母親が自分達の母親だなんて、知らない。最初は、なんで事実を教えないのかと思ったが……。オレは魔力を暴走させ、幽閉されている出来損ない。そして母親は、男好きの淫乱だ。
そんなのが自分の家族だなんて、知ったところで悲しくなるだけだ。だから、オレから弟達に、自分や母親のことを話すつもりはない。それに次男のラフィーは、次期大魔術師として、大切に育てられている。三男のヤシンも、将来の筆頭魔術騎士として、教育を受けている」
なんて悲しい判断を、アミルはしたのだろう。
孤立無援なのだから。血のつながった兄弟を味方にできれば、どれだけ心強いか。それをせず、輝かしい弟達の未来のために、自分を犠牲にするなんて。
アミルを深く知れば知るほど、放っておけない気持ちになる。でも、アミルと結ばれるつもりはない。私にはクリスがいる。クリスのところへ、帰りたい。
だから軽く深呼吸をして、ゆっくり口を開く。
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!
皆様、アミルの母親の正体、予想通りでした? 意外でした?
このあと 12時台に もう1話公開します~
 

























































