45:自問自答
落ち着いて、私。
まずは自問自答する。
そもそも外に出て何をしようと思ったの?
――外へ出られたら魔法を使うつもりだった。
何の魔法を?
――転移魔法。
つまり逃げるつもりだった。
そう、そのつもりだったが、後先をよく考えていなかった。
アミルがそばにいない状態で転移魔法を使えば、時間稼ぎもできたはずだ。でもアミルがそばにいる状態で転移魔法を使うのは、リスクが大きすぎる。
何より、あと一歩なのだ。
あと一歩で、アミルは私を人生の師と考え、妻にという考えを改めるかもしれないのだ。私を妻にと考える限り、アミルは私を追うだろうし、クリスを敵対視する。
でも私を人生の師と認めれば、私がメリア魔法国に戻ることを、許してくれるかもしれない。そうなればクリスを敵対視することなく、アミルから円満に離れることができる。
つまり、今、転移魔法を使うのは時期尚早。
「ニーナ、こっちに来い。帰るぞ」
クリスは、なぜ転移魔法を起動させないのかと、思うかもしれないが……。
「ニーナ!」
「はい」
アミルと共に部屋へ戻った。
◇
部屋に戻り、私はすぐにトイレへ行くことになった。
そしてトイレから出ると、ローソファに腰かけていたアミルが立ち上がった。
「ニーナ、オレは出掛けてくる」
出掛ける……。
昨日も出掛けたが、どこに行っているのだろう……?
「夕ご飯を買って戻るから」
夕方まで……。
可能な限り早く、アミルには私を人生の師として、認定して欲しかった。そして認定してもらうには、話をするしかない気がするのだが。
外出されては、それもできない。
勿論、夕方に戻ってきてからでも、話すことはできる。
ただ、今日一日は、ほぼほぼ無駄になる。
何より、クリスは心配するはずだ。
私が転移魔法を使わないことを。
「ニーナ、もしかしてオレが外出すると寂しいか……?」
そういうわけではないのだが……。
だが今、アミルは私を気遣う姿勢を見せている。
ならば……。
「寂しいというか……。学校も行っていないのに、何をしているのかな、と」
そう口にして、自分が今日、学校をサボるのだと思い至る。
夏季休暇の補習がどんどん増えて行く気がする……。
「……そう、だよな。昨日も結局、ニーナを一人にしてしまった。そして今日も……」
アミルはふうと大きく息をはく。
「あれだけ魔力の強さを、ニーナに誇示したのに。これは恥ずかしい話だが……。どうしても解術できない魔法があって。それを解くために、王宮に通っている」
「アミルでも解術できない魔法があるのね……」
「白状するよ、ニーナ。オレは魔力が強い。でも学校にも通っていない。だから覚えている魔法は、必要となるものだけだ。だからニーナのその指輪にかかっている魔法だって、何がかかっているのか、さっぱり分からない。そもそもその指輪の魔法は複雑だし、見たこともないし、呪文の言葉さえも知らないもの。だから解術なんて無理だ」
なるほど。
昔のウィルと同じだ。
魔力はあるけど、魔法を覚えていない。
解術できるようになるには、沢山の魔法を覚える必要がある。
「それでこれまで、困ることはなかったの?」
話が長くなりそうだと感じたので、ベッドに腰をおろし、思わずそう尋ねると。
「そもそもオレに魔法をかけられる奴なんて、いなかった。だから解術の必要もない。もし必要になっても、かけた奴を脅せば、済む話だ。魔力を奪うと脅せば、大概の奴が従うだろうから」
「アミル、なんて乱暴なやり方を……。解術はちゃんと魔法を覚えて、取り組むものよ。そんなやり方では、絶対に行き詰まるわ」
アミルは自身の髪をくしゃっとかきあげる。
「ニーナの言う通りだよ。まさに今がそうだ。術者自身の言葉が奪われているから、どうしてこの状態になったのかも、よく分からない。王宮にいる大魔術師でも、お手上げだ」
「どういうこと?」
首を傾げて尋ねると、アミルは再び大きく息をはく。
「オレが解術したいと思っているのは、オレの母親にかけられた魔法だ。かけられたのか、本人がかけたのか、それも分からないが。ただ最近知ったが、母親も相応に強い魔力の持ち主だったらしい。だから本人がかけた可能性もあるわけだが……。
もし本人がかけたなら、なんでそんな魔法を自分自身にかけたのか、と思うばかりだ。可能性としては……王宮から逃げ出す時に、宝物庫から金目ものを盗んでいる。その罪に問われるのを、恐れた可能性もある。今の状態では、確かに罪に問いにくいから」
「一体どんな状態なの、アミルのお母様は?」
本日更新分を最後までお読みいただき
ありがとうございます!
逃げたいのになかなか逃げられない……!!
ニーナ、どうなる!?
続きは明日 11時台 に公開です。
間もなくGW。
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