39:ニーナ、愛しているよ
「ニーナ、愛しているよ。婚約の証に。受け取って欲しい」
「クリス……!」
ライラック色の宝石とダイヤモンドが輝く指輪を、箱から取り出したクリスを見ると。泣きそうになってしまう。嬉しさと感動に震えながら、手を差し出した。
?
手に髪の感触がある。
目がパチリと開き、自分の手が、コバルトブルーの髪に触れていることに気づく。さらに私の胸に顔を埋めるように、アミルが抱きついている姿を目にした。
「きゃああああああ」
当然、悲鳴を上げることになった。
◇
「ニーナ、ごめん。わざとじゃない。本当に、事故だから」
そう言ってこちらへ来ようとするアミルを制する。
アミルはベッドに、私はローソファにいた。
ベッドには、アミルの守護霊獣のプラジュもいる。
ミルキーはさっき私のところへ走って来て、今はローテーブルの上にいた。
「言い訳はいらないです。手を出さないって言ったのに……」
「手は出していないだろう? ただ抱きついていただけだ」
「寝ている無防備な私を抱きしめるなんて、手を出したも同然です!」
アミルは「参った」というように両手を挙げる。
「ごめん。ニーナ。今晩は魔法で、ニーナが寝ている場所に、転がらないようにするから。許して欲しい」
「これだけ広い部屋なのよ。魔法を使うぐらいなら、もう一台ベッドを用意してください!」
大きくため息をついたアミルは、ルビー色の瞳を悲しそうに曇らせる。
その姿は、思わず許したくなる表情だが。
ここで許すわけにはいかない。
そう思ったのだが。
「ニーナ。こんな話をするのはニーナが初めてだ」
そう言ったアミルは、髪をゆっくりかきあげる。
そして真っ直ぐに、ルビー色の瞳をこちらへ向けた。
さらにランプの一つが遠くで灯り、ほんの少しだけ部屋が明るくなる。
夜明けは近いが、まだ、夜は明けていない。
「オレは生まれた時から魔力が強かった。だから王族の他の奴らから嫌われていた」
藪から棒に、何を話すつもりなのだろう?
アミルに視線を向けると。
力ない顔で微笑み、口を開く。
「この国は一夫多妻制だ。オレの母親は……正妃ではない。側妃でもないと言われた。奴らは……娼婦みたいなものだと言っていた……」
何を話し始めるのかと思ったら。
なんだか重そうな話だ。
自然と居住まいを正していた。
「まあ、母親がそんなでも、オレは魔力がダントツで強い。だからその時、王太子だった第一王子を王太子から外し、オレが王太子になることが決まった。でも、そんなの正妃が喜ぶはずがない。それまでは仲の悪かった正妃と側妃が結託し、オレが5歳になると、嫌がらせを始めた。
彼女達は魔力でオレに敵わないと分かっていたし、暴力を振るえば、国王にバレると理解していた。だから……言葉での嫌がらせをした。5歳になったオレに嫌がらせを始めたのは……オレが言葉を理解するのを待ったからだ。用意周到だよ。それにずっと不満をためていたのだろうな。嫌がらせを始めると、オレに関すること、母親に関すること、それはもう沢山いろいろ言われた」
その時のことを思い出したのだろうか。
アミルの顔が苦しそうに歪む。
だが一度深呼吸をすると、再び口を開く。
「母親は娼婦だと聞いていたから、王宮にはいないと思っていた。でも違う。王宮には、王が許可した者しか入れない、特別なエリアがある。そのエリアの一部屋に、オレの母親はいた。そしてそこにはオレの弟が二人いると、彼女達に言われた。しかもその弟たちは二人とも年子。つまり、オレが5歳で、弟は4歳と3歳だと。その意味が分かるか、と言われた」
意味?
年子であることに、何か意味があるのだろうか?
「オレの母親は淫乱だと。オレを産んで一カ月もすると、今度は第一王子、つまりは元王太子と関係を持ち、一年後に子供を産んだと。第一王子は正妃の子供で、俺よりうんと年も離れ、成人していた。そして第一王子の子供を産んで、またも一カ月もたたないうちに、第二王子とも関係を持ち、そしてまた一年後に子供を産んだ。第二王子は側妃の子。さらに第三王子との子供も身ごもっていたが、それは流産したと……。第三王子は王妃の子だ」
これは驚くしかない。
国王の子供を年子で産んでいるなら、まあ、そうなのかと思えるが。第一王子、第二王子、第三王子とも関係を持つなんて……。
でも四人もの王族を虜にする、相当魅力的な娼婦だったということなのだろうか?
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