34:クリス……?
あり得ない思考の件は一旦忘れ、必死に言葉を紡ぐ。
「そ、その、気持ちは嬉しいのですが……。ついさっきまで、私の気持ちは別の場所にあったのです。ですからそう簡単に切り替えることはできません。焦らず、手順を踏んで、時間をかけてください。女心に少しだけ、配慮してください」
心臓はまだバクバクしたままだし、アミルにこのままキスして欲しいと思っている。だがそのとんでもない考えを懸命に抑え込み、告げると……。
「なるほど。女心、か。想像もしたことがなかった。……いいだろう。ニーナはオレのものになると分かっている。だったらお前が望むやり方で愛してやろう」
陥落しそうになる心と体を必死に押しとどめた。
今のアミルの言葉は、マジパラの攻略対象がいかにも言いそうなセリフ。これを聞いてドキッとするのは、仕方ないのかもしれない。でも反応しても、ドキッとぐらいだ。
こんなに心臓をバクバクさせ、抱きつきたくなるなんて……あり得ない!
計画のため、クリスを諦める素振りを見せるが、本心ではクリスを諦めるつもりはまったくない。
アミルの言葉に反応している場合じゃない、私!!
これ以上、アミルの言葉を聞くのは危険だ。
今だって手が、アミルに伸びかかっている。
どっかいって、お願い!!
内なる叫びが、アミルに届いたのかどうかは分からない。
でもアミルは耳朶にキスをすると、私から離れた。
その瞬間、落ちた。
つまり座り込んでいた。
「ニーナ、どうした?」
アミルがこちらに再び近づく気配を感じ、即答する。
「ミルキーを、床におろそうかと思っただけです」
「そうか」
なんだという顔でアミルが離れて行くことに安堵する。
安堵しているが、心臓は爆発しそうだ。
全身が熱く、どう考えても、アミルに体が反応している。
それを理解し、泣きそうになる。
クリスのことが大好きで、大好きで、たまらないのに。
どうしてこんなに反応してしまうの、私。
それでもなんとか自分のことを落ち着かせる。
何度も何度も深呼吸して。
思いの外、時間がかかったが。
ようやく心臓が落ち着き、呼吸も正常に戻った。
なんとか立ち上がり、ローソファに行こうとしたが。
ローソファを見た瞬間。
アミルの姿を思い出してしまい、またも心臓がざわざわしだしたので、回れ右をする。
目についたのはベッドだったので、そのままベッドに向かった。
ベッドに置かれていた丸いクッションをとり、オットマンにのせ、そこに爆睡中のミルキーをのせた。
ベッドの端にそのまま座り、左手の指輪を見る。
クリス……。
会いたかった。
今すぐクリスに会って、ぎゅっと抱きしめて欲しかった。
クリスの、透明感のある清楚な香りを感じたかった。
その瞬間。
後ろからふわりと抱きしめられ、胸がドクンと大きな音を立てた。
クリス……?
もう1話、時間差で公開します!

























































