29:最後通告は私から
アミルの視線が突き刺さる。
だがひるむことなく私は口を開く。
「魔力が強い者に惹かれるのは、DNAに刻まれた本能。きっと私の本能はアミルを選べと命じていると思います。でも私はその本能に抗おうとしている。彼と結ばれたい気持ちがあるのは事実です。でも彼はアミルには勝てない……。それでも彼は、アミルに挑むと思うわ。私がただ囚われたままでいたら。囚われている理由も分からない、だから助け出そうとする」
アミルは無言で私を見つめ、話を聞いている。
「どうしたら彼は無駄なあがきを止めると思いますか? 直接、私が告げるしかない。あなたと別れると。私はアミルを選んだと。そうすれば彼もあきらめるでしょう。万一にもあなたに盾つくなんてことも、しなくなるはず。それにあなたに挑んだしとても。彼は負けて死ぬだけですから」
予想外の言葉だったのだろう。
アミルのその顔を見れば分かる。
こんなことを私が言い出すとは、思っていなかったはずだ。
後はもう、畳みかけるだけ。
「分かりますよね、アミル。彼はあなたより弱い。あなたに挑まなければ、生きていられる。でも私がはっきり、アミルと結婚すると言わなければ……負け戦を挑んでしまいます。死ぬことになるのに。彼には生きて欲しい。だからです。だからこそ、私から彼に最後通告をするのです。そしてこの指輪の魔法を解除させ、彼に返します」
アミルはしばし硬い表情をしていたが、フッと笑みを漏らした。
「ニーナ、お前は……。そこまでして奴を守りたいのか? 嫉妬を覚えずには、いられないな。でも……増々お前のことが、欲しくなった」
強引に抱き寄せられ、抵抗したくなるのを我慢する。
今は、我慢。
「だが、ニーナ、それでいいのか? それでオレに抱かれるので、本当にいいのか?」
「それはアミル、あなたに私が聞きたいことです。魔力が強い女性は、五万といるのに。王族であれば、結婚相手に事欠かないでしょう。なぜ私なのですか?」
「痛いところをつくな……。だがニーナ、お前は自分の本音を話した。だからオレも教えてやろう」
私から体を離すと、アミルはこんなことを打ち明けた。
「確かにオレは王族の一員だ。だが、オレの存在は喜ばれ、そして厭われている。オレの魔力は強い。その強さを、喜ばれた。しかし……。オレは一度、王宮で魔力を暴走させたことがある。そこでオレは……。怪我人が出た。だからオレはここに、砂漠のど真ん中にあるこの部屋に、幽閉されている。むろん、奴らはできうる限りの魔法で、オレがここから出られないようにしたつもりだろう。でも奴らの使う魔法なんて、オレからしたら子供だましだ。よって自由にこの部屋の出入りをしている」
まるで私の真似をするように、アミルは畳みかける。
「分かるだろう、ニーナ? オレは嫌われ者だ。魔力が暴走するなら、魔力を抑える魔法をかければいい。だが、奴らの魔法では、オレの魔力を抑えることはできない。当然、こんなオレの妻になりたい女性なんていない。
……正直、こんなところへ追いやられた瞬間、オレは自分の存在意義について考えた。なんのために生きているのだろう、ってな。だがこうなったのはあの母親のせいだ……。自由奔放なあの女をつかまえて、文句の一つも言い、なんなら道連れにして……、そう思いプラジュを、あちこちに向かわせた。
あの女は自由気ままで、神出鬼没。だから目撃情報を仕入れ、そこにプラジュを送り込んだ。しかし、なかなかあの女は捕まらない。そうこうしていたら、あの女は……。罰が当たったんだな。王都に戻ってきた。しかも王宮の奴らでは、どうにもならないような状態で、戻ってきた。ざまあみろだ。あの女は王都に戻った。だが、プラジュが戻って来ない。そうしてようやく戻ってきたと思ったら……」
アミルはそこでクスッと笑う。
「プラジュは俺にとっての母親代わりだ。あの女に執着することを、何度も止めさせようとした。そして……オレに希望を与えようとしたのだろうな」
自分の足元にいるプラジュを、アルミは慈しむように撫でる。
「生きる希望。一人じゃなくなる方法。妻を娶る。そう、ニーナを見つけてくれた」
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