25:悪役令嬢の悲惨なエンドの一つ
気づくと窓の外が、ブルーに見える。
どうやら陽が落ち、夕方になったようだ。
!!
部屋の中にあるランプが突然灯った。
いくつものランプによる間接照明と、部屋を飾るベールのようなシースルーの布のおかげで、なんだか幻想的な雰囲気になっている。
このランプは勝手に灯った。
ということは、一定の時間になったらランプが灯るという魔法が、使われているのだろう。
ゆっくりと本棚の前へ移動する。
引き出しの中は空っぽなのに、本棚だけは違う。
びっしり本が並んでいる。
目についた本を取り出すと……。
よ、読めない。
多分、共通言語ができる前の、ギリス王国の古い言葉で書かれている。流麗な筆記体のような文字は、クリスの文字同様、アートだ。
そこでまたクリスのことを思い浮かべてしまう。
きっとすごく心配しているはずだ。
心配しているのは……ウィルもジェシカもアンソニーも、あの場にいた魔法騎士のみんなも同じはず。それに私が消えたことは、ウィンスレット辺境伯に伝わり、そして両親や兄、セスにも知らされているはずだ。ケイトだって心配しているだろう。
つい最近、アンジェラにさらわれ、みんなに心配をかけ、迷惑をかけたのに。こんなに短期間で、またさらわれるなんて……。
そこで怖い想像をしてしまう。
もしかするとゲームの抑止力……?
私が悪役令嬢として正しく動かないから、このマジパラの世界から排除しようとしている……とか?
いや、それとも……。
待って。
悪役令嬢の悲惨なエンドの一つに、国外追放があった。この末路につながるのは……。
そこで驚愕する。
ヒロインのユーリアがクリスを攻略すると、私は、悪役令嬢ニーナは、国外追放になったはず。
え、まさか、ユーリアがクリスを攻略しようとしているの? もしかしてあの黒い森に突然ユーリアが現れ、クリスに魅了の魔法をかけ、瞬時に攻略したとか!? だから私はギリス王国に追放された……とか!?
「キュッキュ」
ミルキーの声に我に返る。
だが心臓は、嫌な速度で鼓動している。
落ち着いて。私。
仮にユーリアがクリスを攻略しようとしても、クリスはそんなに簡単に攻略されるわけがない。9年間も私のことだけを想ってくれたのだ。銀狼の姿で、黒い森に閉じ込められることになっても、あのアンジェラを拒み、私を選んでくれた。いくらヒロインの幸運設定があったとしても、クリスがユーリアになびくなんて、あり得ない。
そう、そんなことあるわけがない。
クリスは『奇跡の子』。そして次期大魔法使い。
メリア魔法国で一番魔力が強いのだ。
魅了の魔法になんか、そう簡単にかかるはずがない。
それでも……。
離れ離れの今、クリスがどんな状況なのかが分からない。
黒い森に閉じ込められた時は、クリスがそばにいてくれた。
でも、今は違う。
どうしても不安が拭えない。
あ……。
ずっと我慢していたのに。
涙がこぼれ落ちた。
ダメ。泣いちゃダメ。
気持ちを強くもたなきゃ。
そう思うのだが、涙は止まってくれない。
するとどんどん悪いことばかり、考えてしまう。
黒い森の時のように、セスがアマガエルを私のところに送り込ませることは……できない。この部屋には誰も助けにくることができない。あの眉目秀麗男子は、クリスを倒せないと思うが、倒されることもないかもしれない。そうなれば私はずっと、この部屋に閉じ込められ……。もしかしたらその間に、ユーリアがクリスに近づいて、クリスの心を奪ってしまうかもしれない。
クリスの首に腕を絡める、ユーリアの姿が浮かぶ。
王都での舞踏会で見た、背中が大きく開いた、シルクの黒いバックレスドレスを着たユーリア。ダークネイビーの髪をアップにし、パールの髪飾りでまとめたその姿は……。
すごく妖艶だった。とんでもない色気があった。
あの妖艶さと色気。今の私には、ないものだ。
あんなユーリアに迫られたら……。
不安で不安でたまらなくなり、ベッドに崩れ落ちる。
「キュッ」
「!!」
肩にいたのに、突然ベッドに投げ出される形になったミルキーが、驚きの声をあげる。
「ごめんなさい、ミルキー」
「キュー、キュー」
なんだかミルキーまで、悲しそうな声で私を見上げている。
「泣くな」
声と同時に後ろから抱きしめられ、心臓が止まりそうになる。
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このあと 12時台に もう1話公開します。
(T-T*)
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