24:よくよく見ると、胸元に……
まずは扉を念入りに確認する。
肩から降りたミルキーも、扉の前をウロウロして、探ってくれる。
扉は青銅で、レリーフには様々な幾何学模様が見て取れる。触れると冷たく、ずっしりとして、重そうだ。まさに閉じ込めるための扉。そんな風に思えてしまう。
ピッタリと閉じられているし、隙間なんてどこにもない。
閂は完全に扉と一体化しており、外せる気配はゼロ。
それでも試すが、まったく歯が立たない。
今度はリングのドアの取っ手を掴み、押してみるが……。
当然、ビクともしない。
それでもなんとかならないかと、扉の検分を続けたが……。
無理だ。
魔法を使えたら、こんな扉、簡単に開けられるのに。
この扉をどうかすることを考えるぐらいなら……。
部屋を見渡し、窓を見る。
窓には室内面格子がはめられている。
ツタのような美しい模様の格子であるが、オシャレである分、細い。あれを折ることができれば……。強化ガラスなんて、この世界にはない。窓ガラスは簡単に割ることができるはず。
となると、あの格子をどう折るかだけど……。
「ミルキー、窓の方に行くわよ」
ミルキーを抱き上げ、肩にのせる。
窓の前に立ち、格子を掴んでみる。
細く見えるが、さすがに両腕の力だけで、折るとか広げるのは……無理ね。
あ、でもタオルを結わいて、棒を使って……。
バスルームにタオルを取りに行き、そこでとんでもないものに気づいてしまう。
よくよく見ると、胸元に、赤い痣のようなものがある。
こ、これって……。
頬が赤くなり、全身がかあーっと熱くなる。
キ、キスマークでは!?
こんなものをつけられたのは、当然、人生初。
しかもつけたのは間違いなく……あの眉目秀麗男子だ。
そもそもこんな姿、誰にも見せたくなかった。
どうしても見せるとしても、それは間違いなくクリスだけ。
それをあの眉目秀麗男子は……。
下着姿に等しいこの姿を見た上に、キスマークまで……。
恥ずかしさと同時に怒りがわく。
悔しくなり、そして……。
ありえないと思うし、クリスは絶対に強い。
でも、もし負けることがあれば……。
万一のことがあったら、あの眉目秀麗男子に私は……。
いや、ダメ、そんなの考えちゃ。縁起でもない。
クリスは負けない。絶対に。
小さめのタオルを取り出し、水を浸し、絞ると胸元に当てる。
なんとなく冷やすと、キスマークが消えてくれるように思えた。タオルで胸元を冷やしながら、壁にもたれて考える。
格子を折ることができたとしても、一度折れば、元に戻すことはできない。となると折るからには、確実に逃げ出さなければならない。
つまり思いつきで安易に行動するわけにはいかない。
そうなると……いろいろ確認する必要がある。
この部屋の外は、どうなっているのか。
窓の外の様子は全く分からない。
この世界は前世とは違い、塔をのぞき、邸宅などが高層であることは少ない。ただ、宮殿や王宮は……。
もし格子と窓を突破し、外に出られるとなって、地面が遥か下にあるとなると……。
事前に確認しないとダメだ。
ここが本当に王宮なのか、何階なのか、そして防御魔法などを展開していないか。
防御魔法は、基本的に外からの侵入を検知する。でも防御したい内側での異変を察知できるよう、魔法をかけられないわけではない。もしあの眉目秀麗男子が抜け目なく、部屋の内外で、物理的な異変を察知できる防御魔法を展開していたら……。窓から逃げるのは――無理だ。
探らないとダメ。情報を集めてからじゃなきゃ、動けない。
「キュッキュ」
ミルキーが頬に触れる。
「ごめんね。怖い顔をしていたかも。私」
タオルを置き、ミルキーを抱き上げ、バスルームを出た。
本日はここまでですが、明日は……
「悪役令嬢の悲惨なエンドの一つ」を
11時台 に公開します!!
キュンと切なくドキッとする回です。

























































