21:服を、服を着替えたい!
眉目秀麗男子が姿を消した後、すぐにいろいろな魔法を試した。ここから逃亡するための魔法、この部屋を破壊するような魔法、助けを呼ぶための魔法。
でもすべてダメだった。
「キュッキュ」
「ミルキー、協力してくれたのに、ダメだったわ……」
服装が変化した時、ミルキーは、ポケットから瞬時に逃げ出していたようだ。眉目秀麗男子がいた時は、棚の下に隠れていたが、彼が姿を消したので、姿を現してくれた。
ミルキーの鳴き声を聞いた時は、とても驚いてしまった。でも同時にその存在を、大変心強く感じていた。一人じゃない。ミルキーがいてくれる。ただそれだけで、勇気づけられた。そしてすぐにここから逃げ出すため魔法を使い、ミルキーも懸命に魔力のサポートをしてくれたのだが……。
まったく魔法が使えない。
黒い森では、火をつける魔法は使えた。
でもここでは、一切の魔法が使えない。
あの時、アンジェラが魔法を加減していたのか。
それともあの眉目秀麗男子が、よっぽどの強い魔力の持ち主で、一切の魔法を禁じることができているのか。さっぱり見当がつかない。
とりあえず魔法は使えないと分かった。
その次に私がしようとしたことは……。
着替えだ。
こんな露出の多い恰好、前世ではもちろん、このマジパラにおいてもしたことがない。
ドレスは、胸元や背中が大きく開いていることも多い。
だからといって、ここまでの露出はない。
何より、貴族の令嬢が脚を露わにするなど、あり得ないこと。
ということで、部屋にある箪笥など一通り探したが。
なんてことだろう。
すっからかん。
引き出しの中は空っぽ。
ドレッサーがあったので、ドレッサーチェアの収納も見たが、何もない。
バスルームを見つけ、そこの棚も探したが、あるのはタオルのみ。ならばと部屋中に飾られているベールのような布を手にとってみたが。
何せシースルーの布。折り畳んで眺めても、透けている。
これでは意味がない。
ではとベッドカバーを試すことも考えたが。
とにかくベッドが大きいので、布も大きい。
体に巻き付けるとしたら、何回巻けばいいのか分からない。
長さも何もかも、身にまとうには向いていない。
そうなると絨毯……。
いや、無理だろう。素材的にも何か違う。
散々部屋を物色し、無理だと気付く。
物色する中で、扉を見つけたが、もちろん開かない。
窓には模様のように、美しい格子がはめられている。
ガラスは曇りガラスで、外の様子も分からない。
一通り、物色を終え、仕方なくベッドに腰を下ろすと。
「ぐるるる」とお腹が鳴った。
黒い森でも、私のお腹は正しく空腹を伝えてくれた。
その時のことを思い出した瞬間。
これまで考えないようにしていたクリスの顔が、脳裏に浮かんでしまった。
一度クリスのことを思ってしまうと、もう止まらない。
会いたい……!
クリスを求める感情が、まず頭の中を渦巻く。
そしてそれが今この状況では難しいと分かると。
クリスは今、どうしているのだろう……。
現状把握へと移行する。
私が突然いなくなり、とても驚いているはずだ。
心配し、懸命に、私のことを探してくれているはず。
クリスの魔力だったら、私を見つけられると思う反面、見つけることができても、すぐに動くのは難しいのではと感じた。
うっかり追跡魔法を使いながら、転移魔法を私が使ってしまったと思ったが、そうではなかった。あの眉目秀麗男子が、自身の守護霊獣プラジュを介して、転移魔法を使った。つまりあの男子の転移魔法により、私はこの部屋に入ることができた。
なんとなくの予想であるが。
この部屋は追跡魔法で追うことはできるが、遮蔽魔法がかかっており、それなりの魔力の強い者でないと、この部屋はトラッキングできないようになっている。でもクリスは私以上の魔力があるから、この部屋を追跡魔法でトラッキングすることはできるはずだ。
でも、問題はその後だ。
一体何が問題なのでしょうか!?
皆様、気になると思います。
13時迄にもう1話公開しますね!

























































