11:ハア……。かっこよかです。
ダークブルーの短髪に、ラピスラズリを思わせる青い瞳。
鼻は高く、彫の深い顔立ちをしている。
口元からのぞく白い歯も眩しい。
何より日頃の訓練の賜物で、上腕の筋肉が半端ない。
ウエストは引き締まっていて、全身に贅肉がないと分かる。
そして肩にいる守護霊獣のオオタカ。
2メートルに届くかという高身長で、筆頭魔法騎士として鍛えたジェラルドさまだからこそ釣り合いのとれるオオタカだ。
ちなみに魔法騎士は、魔力が強く、かつ騎士としての訓練も積んだ者のこと。魔法と武術の両方に秀でた精鋭で、その中で最も優れた魔法騎士に与えられる称号、それが「筆頭魔法騎士」だ。
さらに。
戦場において、その身に傷一つつけることが敵わないと言われている筆頭魔法騎士にだけ、着用が認められているものがある。それは白のマントと白の軍服だ。
最強ゆえに決して汚れることがない。だからこその純白の装備。
しかもこの純白の装備をまとってもなお、スリムに見えるなんて。通常、全身白なんて着たら、膨張色だから太って見えてしまうのに。むしろ引き締まって見えるなんて奇跡。
ハア……。かっこよかです。
何せ初めて見るマジパラの攻略対象。
これは感無量……って、そんな風に浸っている場合ではない。
なぜに、なぜに、ここに、ジェラルドがいる!?
というか、ウィリアムと言わなかったか?
ウィリアムと言ったよね、ジェラルドさま!!
私は目をギラつかせ周囲を伺う。
ジェラルドのそばにいるのは魔法騎士だ。
皆、一様に、紺色の生地に白で装飾が施された魔法騎士の隊服と赤いマントを着用している。その魔法騎士のそばにいるのは、黒いローブを羽織った教師だ。
ウィリアムはどこ!?
「ジェラルド、いい質問だ。丁度、僕もこの令嬢の名前を知りたかったところだ」
まさか……。
今の私は顔面蒼白だ。
まるで機械仕掛けの人形のように首を動かし、私をここまで連れて来てくれたハンサム男子を見る。
……!
その肩にはウィリアムの守護霊獣であるイーグルがいる!
嘘、さっきはいなかったのに。
あ、でも鳥の守護霊獣は自由に空を飛んでいることも多かった気がする。
で、でも、どうして!?
確かに瞳の色はオパールグリーンで、髪は……ブロンドベージュだ。でもマジパラのウィリアムは、肩までの長髪だったが、目の前にいるウィリアムは、ジェラルド同様の短髪。
しかも小顔で……いや、小顔だ、今も。
でもとにかく華奢で手足も細く、すべすべ肌の女子みたいな容姿だったはず。
こんな日焼けした肌に、精悍な顔つきで、ハンサムだったなんて聞いていない!
なんなの、バグ!?
王都にいるはずが、ブルンデルクに来たから、容姿が大きく変貌した!?
いや、もしそうであるならば、ジェラルドだって変わるはず。
一体何が、何が……。
いや、それどころではない。
回避すべきウィリアムと思いっきり遭遇してしまった。
しかもジェラルドまで!
え、どうなるの、これ!?
マジパラの攻略対象二人が、私を王都へ連れ戻すために、ここまでわざわざやってきたわけ!?
「ニーナ・コンスタンティ・ノヴァ!」
フィッツ教頭の一喝で、私はごちゃごちゃしている思考を停止させる。
「ウィリアム第三王子さまが、話しかけている。ちゃんと聞かないとダメではないか。お名前を尋ねられていたのだぞ」
「は、はいっ、失礼いたしました」
「フィッツ教頭、大丈夫ですよ。むしろ、彼女と話したいので、1限目の授業はサボってもいいですか?」
な、なに!? ウィリアム、なんてことを!
冗談じゃない。攻略対象と話すつもりなんてない!!
それにいくら王族とはいえ、授業をサボるとか、教師に面と向かって言うなんて!
許されるはずがない!
「かしこまりました」
えっ……、許されている!?
き、教頭---っ!
フィッツ教頭はさらにこんなことまで言い出した。
「3年生は、必須科目以外は自身の強化したい授業を自由に受ける仕組みを当校はとっています。その時間に自身が受けたい授業がなければ、自習が認められていますので、問題ございません。ちなみに当校のカフェテリアは朝から夜まで開いていますので、ご自由にご利用ください。生徒の要望も多いため、個室のご用意もありますから」
そうだった、そうだった、3年生になって、そんなカリキュラムになっていた。
いや、待って!
1限目の私の授業は、必須科目です。
王国史、必須科目でしたよね!
「フィッツ教頭!」
「なんですか、ノヴァ伯爵家令嬢」
「私、1限目の授業は王国史です! 必須科目です!」
「そうでしたか、ノヴァ伯爵家令嬢。あなたはとてもついていますね。この国の王族の方から、この国の歴史について直接お話を聞けるのですから」
「え……」
この教頭、何を言っているの……?
「ウィリアム第三王子さま、ぜひノヴァ伯爵家令嬢に、王国の歴史についても少々お話しいただければ」
「フィッツ教頭、承知いたしました。ノヴァ伯爵家令嬢にはきちんと王国史を話して聞かせます」
「はい。それでは我々は失礼させていただきます。お二人はきちんと登校されたということで、処理をしておきますので」
フィッツ教頭は始業開始のベルと共に、その場にいた教師を連れ、校舎へと戻ってしまった。
本日もお読みいただき、ありがとうございます!
次回は「じっくり話し、説得し、王都に連れ戻す?」を公開します。
じわじわとゲームの抑止力に追い詰められる!?
それでは明日もよろしくお願いいたします。
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