16:一切なびかない
舞踏会は、滞りなく終わった。
ウィルは相変わらずの社交術で、出会ったブルンデルクの貴族達を、次々と虜にした。クリスは大魔法使い見習いということで、ウィル同様、ブルンデルクの貴族達の注目を集めたが……。それ以上に、ご令嬢たちの熱い視線を集めている。
年頃の令嬢たちの目が、ハートになる気持ちは……よく分かる。なにせ私を腰砕けにした、あの軍服姿なのだから。仕方ない。
でも私という婚約者がいることを知る、コンカドール魔術学園に通う令嬢たちは、どんなにクリスが素敵でも、ただ眺めているだけ。
だが。
他校に通い、私の存在を知らない令嬢も、舞踏会にはいる。彼女達は積極的に、クリスへ声をかけるが……。
「愛する婚約者が待っているから、ごめんね」
クリスは堂々と私の存在をアピールし、どんなに美しい令嬢に声をかけられようと、一切なびかない。
これには正直……感動してしまう。
据え膳食わぬは男の恥、ということわざがある。
だがクリスの辞書には、これに類似する言葉が、載っていないのだろう。
このクリスの姿を見る限り、例えマジパラのヒロイン、ユーリアが近づいたとしても……。
いや、ダメ。それはダメ。
そんな想像をしてはダメ。
万一のことがあったら、取り返しのつかないことになる。
ヒロインには、公には明かされていない、とんでもない幸運設定が、あったりするのだから。
ともかくクリスは、男性に声をかけられれば、立ち止まり、話に応じる。女性については、マダムには対応するが、雲行きが怪しくなると、華麗に理由をつけてその場から退避した。
令嬢については、甘い笑顔と声で私の存在をアピールし、その場を去る。あくまで甘い笑顔と声でやんわり婚約者の存在をアピールされるから、令嬢は何が起きたか分からない。うっとりした顔のまま、じわじわと事情を飲み込み、ため息をつく。そんな感じだ。
「ニーナ、アプリコットのシャーベットを持ってきたよ。一緒に食べよう」
そしてクリスは約束を守り、腰砕けにするような甘い言葉を、一切私に囁かない。代わりにこうやって気を使いながら、そばにいてくれる。ホント、女冥利に尽きる。
この幸せがいつまでも続くようにと、心から願った。
◇
舞踏会の翌日。
甘々の余韻を引きずったまま、目を覚ます。
目を覚まし、ベッドで横になったまま、昨晩のことを思い出す。
滞りなく舞踏会は終わり、クリスは部屋まで私を送り届けると。
我慢の限界、というように、部屋につくなりキスをした。
ケイトがくると分かっていたので、甘いキスの時間は短かったが。
その分、短いキスに、ぎゅっと甘さが凝縮されていた気がする。
クリスが部屋から去っても、その余韻だけで、私はキュンキュンできたし、その気持ちそのままで、眠りに就くことが出来た。
「ニーナさま、また顔がデレていますよ」
もう苦笑するしかないケイトの指摘を受け、両手で頬を軽くたたく。そしてゆっくり、ベッドから起き上がる。
ニーナが大好きなクリスなのでした~♡
さて。プチサプライズ!
本日 18時台 もう1話公開します。
お仕事・学校帰り。
晩御飯の準備前の隙間時間。
もしお時間ありましたら。
ご覧になって見てください。
お忙しい方はまた明日
よろしくお願いします(*^-^)


























































