14:クリスにとってはご褒美(?)
隠れずに顔を見せてとクリスは言うが。
こんな緩みきった顔を……。
クリスに見せるわけにはいかないっ!!
苦肉の策でとった私の行動。
それは……。
顔を見られないよう、クリスに抱きつく――だったのだが。
どうやらこれは、クリスにとってはご褒美(?)だったようだ。喜んだクリスは、ケイトが部屋に来るまでの30分間、私のことを溺愛してくれた。
でも30分後。
部屋にやってきたケイトにクリスは……。
たっぷりお叱りを受けていた。
婚約者とはいえ、寝ている私の部屋に、魔法を使って忍び込むなんて!と。
「返す言葉がありません」としゅんとするクリスは、それはそれで激レアで。秘かに何度も心の中のカメラで、シャッター切りまくりだった。
◇
夜になり、舞踏会のため、ドレスに着替えることにした。
今日のドレスは、シルクサテンのロイヤルパープル。胸元と裾に、ライラック色の糸と銀糸で刺繍が施され、ガラスビーズが飾られている。なぜこのドレスを選んだのかというと。クリスは今日の舞踏会で、儀礼用のロイヤルパープルの軍服を着ると教えてくれていたからだ。
今日着用する軍服には、襟や袖に繊細な刺繍が施され、飾りボタンや飾緒は、華やかなものになっているとクリスから聞いていた。そしてこのロイヤルパープルの軍服は、特別な軍服だという。実はジェラルド同様、クリスだけに着用が認められているものだというのだ!
これまで、騎士養成学校を卒業した大魔法使いなんて、いない。大魔法使いに求められるのは、とにかく圧倒的に強い魔力。武術までは、求められていない。だがクリスは、騎士養成学校に入学し、さらに優秀な成績で卒業している。
未来の大魔法使いであり、騎士としても優れた能力を持つクリスのために用意されたのが、彼の瞳にあうロイヤルパープルの軍服だった。瞳はもちろん、アイスシルバーの髪にもあう、素敵な衣装だ。
「ニーナさま。イヤリングとネックレスは、こちらのライラックの花をモチーフにしたもので、いいですか?」
ドレスへの着替えを手伝うケイトに尋ねられ、私は元気よく頷く。
このイヤリングとネックレスは、王都に行った時、クリスがプレゼントしてくれたもの。ライラックの花をモチーフにしており、美しいライラック色の宝石が、ふんだんに使われている。勿論、私のお気に入り。何より、左手の薬指の、クリスがくれた婚約指輪との相性も抜群だ。
この婚約指輪にも、ダイヤモンドと共に、ライラック色の美しい宝石が埋め込まれていた。私としては、ライラック色の宝石の方が、ダイヤモンドよりも輝いて見える。多分、推しフィルターが機能しているからかもしれないが。
ともかく全身全霊で、クリスを想起できるドレスと宝石を身に着けた私は、大満足だ。ちなみにハーフアップにした髪は、ドレスと共布のリボンで留めている。
「ニーナさま、本当にお美しいですよ。……第三王子さまとの、初めての夕食会の席では、壁紙のようなドレスを着ていましたからね。眼鏡もなくなり、別人のようです」
ケイトの言葉に、そんなこともあったと思い出す。
あの時はアンソニーに突然告白され、なんとか自分以外の女子に、目を向けて欲しいと思っていた。かつその時の夕食会の主役は、ジェシカとウィルと思っていたから……。
あの地味ドレスに眼鏡の私を見たら、クリスはどんな反応をするだろう。
「もしあの時のニーナさまを、クリストファーさまがご覧になったら……。驚くでしょうが、『ニーナ、その姿は新鮮だよ』とか言って、やっぱり溺愛なさるのでしょうね」
ケイトの指摘には、笑うしかない。
確かにクリスだったら、そんな反応をしそうだ。
ケイトと二人で笑っていると、舞踏会へエスコートしてくれるため、クリスが部屋へやってきた。
壁紙ドレス眼鏡ニーナでも。
クリスの溺愛はきっと止まらない~!
そして。
エスコートのために部屋にやってきたクリスは……。
もう愛が溢れすぎて……。大変!
ということで明日は 11時台に
「どうしても甘えたい」を公開します。
それでは皆様、ゆっくりお休みくださいませ。
黄砂が大量飛来しているようなので
通勤通学、お洗濯物、お気を付けください。
ではまた明日お会いしましょう~☆

























































