13:大魔法使いクリストファーは猫タイプ
「ニーナ」
驚いて笑うクリスの声が、妙に大きく聞こえる。
耳元に息がかかり、ハッキリとその声が、聞こえたように感じる。
いや、なんでだろう?
手にサラサラとした、クリスの髪の感触があるのだけど。
そしてこの香り……。
透明感のある清楚な香りがする。
え、まさか。
一気に目が覚めた。
開いた目に飛び込んできたのは、端正なクリスの顔だ。
あれ? まだ夢を見ている??
もう一度、目を閉じようとした。
でも、自分の両腕が、クリスの首に絡み付いていることに気づく。
「ニーナ、目覚めたかな?」
この甘い声は……。
現実!!
「えっ!? どうして、なんで、クリス!?」
「驚かせてごめんよ、ニーナ。もうそろそろニーナは起きているかな、って思って、会いに来てしまった」
「わ、私……」
「ケイトに聞いたら、ニーナはまだ寝ているって、言われた。でもニーナの寝顔を見たくなってしまい……。ごめん。ケイトに魔法を使い、部屋に入ってしまった」
大魔法使いクリストファーは、マジパラにおいて、猫タイプといわれていた。時々とる気まぐれな行動……それを加味すれば、部屋に入ったことは……。それはもうこの際、構わないだろう。
それよりも何よりも、もしかして……。
「ニーナは、とても気持ちよさそうに寝ていた。僕はただ、その愛らしい寝顔を、見るだけのつもりだったけど……。あまりにも可愛らしい寝顔で……。だから、ごめん。寝ているニーナに、キスをしてしまった」
頬を赤らめ、瞳を潤ませるクリスに、文句なんて言えるはずがない。こんな照れ顔を、惜しみなく推しが見せてくれるのだ。眼福以外の何ものでもない。
繰り返しになるが。
それよりもむしろ……。
「軽くキスをして、終えるつもりだった。でも、寝ぼけていたのかな? ニーナが僕の首に腕を絡めて……」
やっぱり~~~~!
私からクリスに、私からクリスに……!
キスのおねだりをしていたぁぁぁぁぁ――!
猛烈に恥ずかしくなり、掛け布の中に隠れた。
「ニーナ!? ごめん、怒っている!?」
「……怒る!? 怒るわけがないわ」
「!? ではどうして顔を隠すの!?」
「そ、それは……」
首に腕を絡めていた。
その上で。
キスのおねだりをしてしまうなんて―――!
普通に恥ずかしい。
それに伯爵令嬢としても、あり得ないだろう。
「……ニーナ」
「……」
「もしかして……、その、腕を絡めたことが……恥ずかしいの?」
核心を突かれ、魂が抜ける。
たった一度の行動だ。
それなのに。
百年分ぐらいの恥をかいた気がする。
「!!」
掛け布に隠れる私を、クリスが優しく抱きしめている……!
「ニーナ、そんなに恥ずかしがらないで」
「……」
「ニーナに怒られてしまうかな? 寝ぼけていたとはいえ、あんな風にニーナに甘えてもらえて、僕は嬉しかったよ」
「……!」
「とても嬉しかったし、ニーナのことを、より愛しく思えたよ」
マーブルおばさんのお店の、バームクーヘンより甘い言葉。
完全に意識を失いそうになる。そして学習する。
そうか、そうなのか。
女子からあんな風に甘えても、許されるのね。
いや、クリスだから許してくれるの!?
そこは、恋愛経験値がない私には、分からない。
でも、クリスは受け入れてくれた。
つまり、はしたない女、とか、女からキスを求めるなんて、とは思わなかったということだ。少し安心し、でも恥ずかしさは消えず。かと言ってこのまま隠れているわけにもいかないので。
ちょこっとだけ、掛け布から顔を出すと。
すぐにあの輝くような、ライラック色の瞳と目が合う。
心臓がドクンと大きく脈打つ。
「ニーナ、ポケットから顔をのぞかせる、ミルキーみたいに可愛いよ」
ココアに追加で砂糖を5つぐらい投入したような甘い言葉に、どうしたって顔がデレてしまう。こんなデレ顔は見せられないと、再び掛け布の中に隠れようとすると。
「ニーナ、隠れないで。僕の大好きなニーナの顔、見せて欲しいな」
一枚布を隔て、クリスの甘い囁きが耳に届く。
この声でこんな言葉を囁かれ、そのまま隠れているなんて、できるはずがない!!
甘々警報発動中!!
(*/▽\*)
続き、気になりますよね!?
多分、気になってくださっている……と思い、サプライズ!
今晩、もう1話公開します☆
本日、夜21時台に「クリスにとってはご褒美(?)」を更新します。
皆様、寝るための準備やお仕事がひと段落されていたら、ぜひぜひご覧くださいませ。
勿論お忙しい方はご無理なく、明朝にでもご覧くださいね!

























































