10:つい、デレ顔になってしまう
「追跡魔法発動。魔力痕跡、トラッキング」
自分の手から一瞬白い光が見え、次の瞬間。
倍速で映像を見ているような景色が目の前で広がり……。真っ赤なシルクのドレスを着た、気の強そうな女性の姿が見えた。前腕には、ドングリとフェレットを模した紋章が見え、そこに文字が浮かび上がる。
腕に刻まれる紋章には、家の紋章と守護霊獣がいる場合、その守護霊獣を模した姿が一緒に刻まれる。そしてこの紋章の守護霊獣の姿に、守護霊獣召喚証明の内容も記録されている。私はその認証内容を読み取る。
このフェレットの名前はアビー、登録されている都市はレイククリスタル、そして召喚者の名前はテレサ・C・ブリッジスね。情報を読み取ったので、瞬きをすると。
「トラッキング成功のようだね、ニーナ」
嬉しそうなクリスの顔に、再び気持ちが持って行かれそうになる。でも忘れないうちに、読み取った情報を刻印しないといけない。
「では、次は魔力刻印で情報を」
クリスの言葉に頷き、次の魔法を詠唱する。
「魔力刻印発動。レイククリスタルのテレサ・C・ブリッジス」
フェレットの背に、雲のように白い、私の魔力の痕跡が残っている。これを読み取れば、召喚者の情報はバッチリ伝わる。
「できたわ、クリス!」
「うん。成功だ」
クリスがフェレットを抱き上げ立ち上がると、そこにジェシカがやってきた。
「ニーナ、すごいわ。追跡魔法も、魔力刻印も完璧ね」
ジェシカが自分のことのように喜び、そしてクリスからフェレットを受け取る。
「クリスが分かりやすく指導してくれたから、ちゃんとできたと思うわ」
「ニーナがちゃんと集中し、魔力を上手く調整できたから、成功したんだよ。調整を失敗すると、トラッキングも途中までしかできない。これはニーナの実力だ」
笑顔のクリスが、私の頭を撫でる。
ジェシカがすぐそばにいるのに。
つい、デレ顔になってしまう。
すると。
「キュッキュッ」
ミルキーがポケットから顔を出し、甘えるような声を出した。
「ふふ。本当にニーナは、クリストファーさまとラブラブですわね」
ジェシカが微笑み、ウィルの呼びかけが聞こえる。
「ジェシカ、そのフェレットが終わったら、このリスも頼む。あと、ニーナとクリス、今日のノルマは一人50匹だから。あ、クリスは100匹だから。とっとと頼むよ」
100匹!?
と思うが、クリスなら難なくクリアできそうだ。
だから。
「「「はーい」」」
クリス、ジェシカ、私は揃って返事をして、保護活動を再開した。
◇
午前中いっぱいかけ、多くの守護霊獣の保護を行うことができた。すべて終わったわけではない。でも、明日また活動すれば、終わるだろうとウィルが判断し、今日は終了となった。丁度お昼時に終わったことから、銀狼と同化していたクリスが、かつて案内してくれた泉へ、みんなで向かった。
そこからは、楽しいランチタイム。
ランチタイムといっても、何もない。みんなで食材調達から、スタートだ。
ウィルと魔法騎士は、川で魚を釣り、クリスはその魚の調理をする。意外だったが、クリスは料理が得意だった。というのも、子供の頃からあちこち旅をしていたクリスは、たまに野宿することもあった。だから自炊もお手の物だったのだ。まさかクリスに「料理得意」の要素まで加わるとは思わず、私はただただ驚いてしまう。
前世では、祖父も父親も、料理はまったくダメだった。母親が風邪で寝込んだ時。父親は料理ができないため、「これで元気が出るのでは?」とウナギのかば焼きを買ってきて、母親に激怒されていた。熱が出て食欲もないのに、こんなに脂がのったものを食べられるかと。家族がこんな感じだったから……。男性は、料理がそこまで得意ではない、と思っていた。
でもクリスが料理は得意というのなら……。せめてジェシカからお菓子作りを習い、甘いものは私にまかせて、くらいにならなければ。そんなことを思いながら、ジェシカとアンソニーと、ベリーや木苺を摘んでいた。
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