9:フェレットと触れ合うクリス
銀狼の呼びかけに、それぞれの守護霊獣が反応していた。
ポケットに入れていたミルキーは、ひょっこり顔を出している。ジェシカのスノーボールも、銀狼の方を見て、鼻をふんふんさせていた。アンソニーのモズは、クリスと銀狼の上空を、旋回している。
ウィルのイーグルは、待ての指示に従い、肩で待機しているが、その目は銀狼に向けられていた。魔法騎士のそれぞれの霊獣も、待ての指示で動きを止めている。
この様子を見るだけでも、銀狼の呼びかけは、間違いなく効果ありを示していた。
そして。
「来たな」
ウィルの声に周囲を見ると。
分かりやすいのは空だ。
様々な方角から、いろいろな種類の鳥が飛来しているのが見える。
さらに時間差で、フェレット、リス、ウサギ、野ネズミ、ハリネズミ、チンチラ、トカゲなどが続々と集まってくる。
「よし。クリス、ニーナ、魔法騎士のみんな、追跡魔法を頼む。追跡が終わったら、アンソニー、ジェシカ、残りの魔法騎士で転移魔法を頼む」
ウィルの声に皆、頷き、魔法の詠唱を始める。
私はすぐそばにいるハリネズミを抱き上げた。
人間慣れしていて、かたい針を立てることなく、私に抱き上げられている。
つぶらな瞳で私を見上げるその姿を見るにつけ、こんな可愛い守護霊獣を捨てるなんて、と信じられない気持ちになる。
「ニーナ」
声に振り返ると、銀狼を連れたクリスがすぐ後ろにいた。
「追跡魔法は、初めてだよね、ニーナ」
「そうなの」
「大丈夫。僕が教えるから」
微笑んだクリスは、私が抱き上げているハリネズミに手をかざす。
一瞬、その微笑みに胸がときめいたが、今はそれどころではないと、気を引き締める。
「今回、追跡魔法で追うのは、召喚者の魔力だ。だから守護霊獣に直接触れなくても、大丈夫だ。僕がしているようにかざした状態でも問題ない」
「なるほど」と頷くと、「では魔法を詠唱するよ」とクリスが言うので、「うん」と返事をする。
「追跡魔法発動。魔力痕跡、トラッキング」
ハリネズミにかざされた指先から、淡いライラック色の光が一瞬見えた。そしてクリスの瞳が遠くを見ていると思ったら……。
「魔力刻印発動。アクスブルクのデジ・アルバート」
ハリネズミに、クリスの魔力の痕跡が残され、そこに召喚者が住む都市と名前が刻まれた。この情報を守護霊獣保護施設にいる騎士が読み取り、召還状を送りつけるというわけだ。
「ではこのハリネズミくんは、そこの魔法騎士に転移をお願いしようか」
クリスの言葉に頷き、ハリネズミを、転移魔法を担当する魔法騎士に渡す。
「ではニーナ、今の手順通りでやってみようか。この子でどうだい?」
クリスがしゃがんで手を伸ばすと、一匹のマーシャルフェレットが寄ってくる。ピンク色の鼻をくんくんさせ、髭を揺らす姿は、実に可愛らしい。というか、フェレットと触れ合うクリスが、あまりにも癒しを感じさせ、またも心のレンズでシャッターを切りまくる。
「ニーナ?」
顔を上げ、こちらを見るクリスの美しさに瞬殺される。
周囲からは、しゃがんだと見えただろうが。
普通にクリスの美貌の笑顔に、腰を抜かしていた。
だが、悟られないよう、落ち着いたフリをして声を出す。
「うん。この子で追跡魔法を試してみるわ」
「ではさっきの呪文を詠唱してみて、ニーナ」
ニッコリ笑顔のクリスに、またも心を持って行かれそうになる。だがなんとか気合を入れ、フェレットに手を向ける。
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次回は「つい、デレ顔になってしまう」ともう1話
合計2話を公開します。
1話目は、明日、11時台に公開します。
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