突然の婚約破棄
「君との婚約は、破棄する!」そんなバカ発言をしているのは、私の婚約者クロス・スーザリア王太子殿下。申し遅れました、私はこのバカ…いいえこの王太子殿下の婚約者であるアメリア・フォートナーともうします。
何故このような事になっているのかそれは、クロス殿下の隣にいる少女、ふわふわのピンク色の髪にくりくりとしたサファイアの色の目の令嬢、フィリー・ヘルティア様。どうやらこのお二人が私の事を、陥れようとしているようです。
「君のような心の無い悪女とは、この国の王妃にすることは出来ない!よって婚約を破棄しこのフィリーと婚約する!」
このバカは、私との婚約の意味をよく理解していないようです。
「良く分かりました。あなたとの婚約破棄を受け入れます」
この婚約は、この王太子殿下を支えるために結ばれたものです。要は、頭の足りない殿下の子守を王家から押し付けられたのです。
私、アメリア・フォートナーは、この国の公爵家の次女として生まれました。父と母は、政略結婚でしたがとても仲が良くおしどり夫婦と呼ばれています。そんな優しい父と母そして5才上の兄と2才上の姉に囲まれとても幸せでした。銀色のストレートの髪に少しつり目の紅い目の容姿をしていて、周囲の人達はとても可愛がってくれました。
ですが、その幸せな日常は私が8才になったときに崩れ落ちてしまいました。この国の王太子殿下の婚約者に選ばれてしまったのです。顔合わせのお茶会に王太子殿下に言われた言葉は、
「お前、俺の好みの見た目ではない!婚約者としてせめてそばに置いてやる。感謝するんだな!」でした。
「ありがとうございます。王太子殿下に相応しいよう努力いたします」私のこの返答を聞いた大人達は、王太子殿下のコントロールを私に任せる様になりました。
この日から王妃になるように厳しい教育が始まりました。王妃に相応しいように、王太子殿下を支えるためにと、父は、「王太子殿下との婚約が嫌だったらいつでも解消しよう」そう言ってくれました。
ですがこの婚約は、王家からの打診でした。クロス殿下と婚約していれば家の延いては、家族の為になりますなので婚約者と言う名の子守役をしていたのですが…このクロス殿下は、分かっていらっしゃらなかったようです。
この国には、貴族や商人の子息が通うことの出来る学園があります。その学園では貴族の子息令嬢が人脈作りをしたり、学業に励み王城の文官となれるようにまたは、国に仕える騎士になるなどそれそれ自分の為に努力する場です。ですが例外と言うのは、やはりいらっしゃるようです。それがクロス殿下の隣に居るフィリー嬢です。彼女はもともと下町の平民だったのですが父親が子爵だったらしく子爵令嬢としてヘルティア家に迎え入れられました。
貴族令嬢には無い天真爛漫で、コロコロと変わる表情にクロス殿下は、彼女にのめり込んで行きました。それこそ、卒業パーティーに婚約破棄を、訴えるまでに…
「アメリア、君には未来の王妃を害した罪で国外追放の罪に処す!」
「はぁ?クロス殿下私は、害など与えていませんが?どのような事でしょうか?」
「アメリア様は、私の教科書を破いたり水を掛けたりしてきました!」
どうやら、私の事が邪魔で冤罪を掛けようとしているようです
「バカは、いい加減にして頂きたいのですが?」
「王太子の俺に向かってバカだと!不敬だぞ!」
どうやら、自覚まで無いようですね
「知りませんよ?あなたが困っても私は何もしませんよ?」
「ああ!お前など二度と見たくないここからすぐ立ち去れ!」
本当に救いがありませんね、あなたは知らないでしょうね、フィリー嬢が他の貴族子息とも私的な付き合いがあることも、他に優秀な王子殿下がいるにも関わらず王太子でいられたのは、私が婚約者であったからと言うのに。私の家族達が宰相として又は社交界を取り仕切って居るなどこの国に居なくては、そもそも国として成り立たなくなるような程の人材だということを、公爵家の家族が他の国から良く移住しないか?と言う引き抜きの声がよく掛かることも、この国にこだわる必要性がないことも
「あなたは、それでもいいんですね?」
私はそうつぶやきながら会場を後にした。