ルイサ’s エンゲージメント その1
お待たせしました。番外編です。
ルイサ視点のお話です。
長くなってしまったので分けました。(それでも長いです。)
※誤字修正しました。(2021.11.22)
※誤字修正しました。(2021.12.9)
※誤字修正しました。(2021.12.15)
誤字報告ありがとうございます。
ここ、エスパン王国の王城では、毎年10歳前後の貴族の子女を集めて、大規模な茶会が行われる。子どもながらに貴族であることを自覚するためだとか、やがてそれぞれの家を継ぐものとして自覚させるためとか、なんだかんだそれらしい理由があるようだが、子どもらの親には、子どもの将来の為の「集団見合い」だと思われている。
平民から貴族に取り立てられた新興男爵家のルイサも、御多分に洩れず招待状が届いたので出席してはいたが、作法も未だ覚束ず、周りの貴族子女には蔑まれ、この茶会にいてもほぼ無視されている状態だった。
そのため本来着けるはずの席にも着けず、部屋の隅にじっと俯いていると、不意に声がかかった。
「あら、貴女、お席はどこ?もしかして、分からなくなってしまったの?」
煌びやかな装いと堂々たる態度で、明らかにルイサより遥かに高位の貴族令嬢だと、ルイサにもわかった。
「…席は、あそこです。」
俯いたままおずおずと自分の席を指差すと、その貴族令嬢は少し眉を顰めたようだった。その席には別の誰かが座っていて、そのテーブル席は楽しそうに盛り上がっていたからだ。
「…そう、分かったわ、よろしければついていらして。」
そう言って、貴族令嬢はルイサに手を差し出す。ルイサが手を取ると、そのまま歩き出した。そしてルイサの席のあるテーブルを素通りし、別のテーブルの前で止まる。
「皆さま、私達もお邪魔してよろしくて?」
「テレーザ様!」
そのテーブルは喧騒を離れるかのように、他のテーブルからはやや外れていた。
「もちろんです!どうぞ!」
手早く2人分の席が設けられ、ルイサはテレーザと呼ばれた貴族令嬢の隣に座った。
よく事態が飲み込めず放心していると、テレーザを始めそのテーブルの人達が、ニコニコと人懐こく微笑みかけた。
「この紅茶の茶葉は、このお茶会のためにブレンドされた特別な茶葉なんですって。」
テレーザと反対側の隣の席に座る令嬢が、ルイサに教えてくれた。
「あの、父に聞きました。このお茶会のためだけのブレンド紅茶を作って欲しいと注文が入ったと。」
「あら!もしかして、ロドリゲス商会の?」
「え!ロドリゲス商会?!」
「…はい、あの…」
ああ、また不用意なことを言ってしまった、さっきみたいに無視される。とルイサは俯いた。
「まあお会いできて嬉しいわ!私、ロドリゲス商会のお品物は珍しいものが多くて大好きなの!」
「え?」
思っていたのと違う反応に顔を上げる。
「うちも懇意にさせてもらっていますの!頼んだものもすぐ探してきてくれるから、本当に助かりますわ。」
「僕も最近手に入れたギターは、ロドリゲス商会に頼んだ特注品だよ。」
ルイサの家が営むロドリゲス商会は、ルイサの祖父の代から続く貿易商で、この国では珍しいものや手に入りにくいものを仕入れると評判が広がり、王家に重宝されるようになって、王城に出入りできるように叙爵された家の一つであった。
ルイサが連れてこられたテーブルには、革新的な考えを持つ家柄の子女ばかりで、商会を営むベラスケス男爵家を好意的に捉えていた。
「あ、ありがとうございます!」
「こちらこそいつもありがとう!私、ブランカ。ブランカ・デティモよ。よろしくね。」
「あ、私は、ルイサ・ベラスケスと申します。お話しできて光栄です!」
「僕は、ペドロ・ヴェセシモ。よろしく。」
初めて貴族に受け容れられ話に夢中になっていたルイサは、隣にいたはずのテレーザが居ないことに気付く。
「あ、あの、こちらにいらした方は…」
「ああ、テレーザ様ね。先程侍従の方が呼びに来られてどこかに行かれたわ。」
「たぶん王子殿下に呼ばれたんだよ。」
「…え?王子殿下?」
「ああ、テレーザ様は第一王子殿下とご婚約なさっているからね。」
そういえば、この国の第一王子には婚約者がいると聞いたことがある。
「そ、そんな高貴なお方だったんですね…」
雲の上の人だと知り、衝撃で固まる。しかもルイサはお礼どころか名乗ることもできなかった。二重のショックで顔面蒼白になった。
「そうなんだけど、あんまりねえ…」
「うん。あんまりね。」
「?あんまり?」
「あんまり高貴に見えないの。気さくすぎて。」
テレーザは第一王子の婚約者であり、公爵家の子女でありながら、特権意識が薄い…というか正直そういうの面倒臭いと思っているのだと二人は教えてくれた。
ルイサはその日から、いつかテレーザにお礼を言おうと思っていたが、姿を見かけることはあっても、話すチャンスが無かった。それでも虎視眈々とチャンスを窺い、半ばストーカーと化していた頃、第一王子に声をかけられる。
「君、よく見かけるよね?僕のこと好きなの?」
「あ、いえ、そうじゃな…あ、はい、そうです。」
うっかり違うと言ったら失礼な気がして、好きということにする。確かにテレーザの婚約者だからか、テレーザを見ているとフアンも目に入ることが多い。
「じゃあ、一緒に来る?」
「いえ、私では分不相応ですので、あの、遠くでお見かけするだけで十分です。」
「へえ。そう。」
どうやら失礼ではなかったようで、それ以上話しかけられることは無かった。しかし、それ以来、事あるごとに声をかけられるようになってしまう。
「そういえば君、名前なんだっけ?」
「ベラスケス男爵の娘、ルイサと申します。」
緊張して顔をこわばらせながら、つい最近家庭教師から及第点をもらったばかりのカーテシーを披露する。実はテレーザに憧れるあまり、以前テレーザに教えていたという家庭教師を雇い、行儀作法を習っている。ルイサの両親は元々平民なので、貴族、特に淑女としての立ち居振る舞いには心許ない。そのため、ルイサが行儀作法を習いたいと願った時は、大いに喜んだ。両親もまた、右も左もわからない貴族社会に放り込まれて苦労したのだろう。
「そうか、ルイサ。また会おう。」
フアンの連れている令嬢がルイサをジロリと睨む気配がして、彼らは去っていった。
「ルイサ、平気?」
「ブランカ様。大丈夫です。」
「毎度お声がけされるのは微妙ねえ。」
「本命には会えないのにな。」
「ペドロ様。」
テレーザに助けてもらったお茶会で仲良くなった二人だ。
「殿下に随分気に入られたみたいだね。」
「そうでしょうか。」
「そうだよ。殿下は興味のない人間に自分から話しかけることは絶対しない。」
「そうなんですか?」
「現に婚約者のテレーザ様には…」
「ちょっと!」
ペドロは言いかけてブランカに止められる。
「テレーザ様が?」
「ごめん、今の失言。」
「お二人共、バルコニーに出ましょう。」
バルコニーに出ると、涼やかな風が頬にあたり、会場で浴びた熱気を冷まさせてくれる。
「あ〜!気持ちいい〜!」
「本当〜!」
夏の社交シーズンは連日こういったパーティーが開かれ、ルイサも社交デビューしてからは出席を余儀なくされる。それは他の令嬢方のように結婚相手を見つけるためではなく、商売のため、平たく言うと営業である。ただしまだ成人前なので必ずお目付役が一緒なことと、早い時間に退出しなければならないのは非常にありがたかった。
「それで、テレーザ様のことなんだけど…」
先程の話の続きを促す。
「ああ、そうだったね。殿下がテレーザ様に興味が無いって話。」
「ちょっと、言い方!」
ペドロがあまりにも事も無げに言うので、ブランカが再度つっこむ。ルイサは「そんな失礼な言い方って!」と抗議する前にペドロが続ける。
「それ以上にテレーザ様は、殿下から離れたがっているけどね。」
「え?!そうなんですか?」
「そうなんです。まあ、昔はそこまでじゃなかったんだけど。」
ルイサは困惑した。第一王子の婚約者なのだから、当然テレーザは将来の王族として大事にされ、また、それに相応しいのだと思っていたからだ。
「テレーザ様が以前、“成人するまでの我慢”だとおっしゃられてましたわ。」
「へえ。」
成人したら結婚するからなのか、成人になったら婚約を解消でもするのか。いずれにしてもそれまでは何もしないということなのだろう。
「あ、ルイサ、このことは。」
「はい。たとえ親でも話しませんわ。」
商人は口が堅いのが基本だ。特に貴族相手の商売は、信用が不可欠。「信用を築くには地道にやらなければならないが、信用を失うのはあっという間だ。」そうルイサの父がよく言っている。
この日は王城で働く使用人向けの品を受注に来ていた。ルイサもそこまでなら任せてもらえるようになり、ゆくゆくは王族や貴族、特にアルボル家、と取引ができるようになりたいと貪欲に商売に取り組んでいる。
「君がベラスケス嬢?」
帰り道、王城の通路で突然、長身の青年に声をかけられる。
「は、はい。ルイサ・ベラスケスと申します。第二王子殿下にお目にかかれて恐悦に存じます。」
「堅苦しいのはいいよ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、時間ある?」
「は、はい。仰せのままに。」
第一王子のフアンによく似た色彩の容姿だが、ふんわりした印象のフアンと違い、第二王子はどこか鋭い猛禽のようだ。
ルイサの連れている侍女、と言ってもロドリゲス商会の人間だが、と共に、行政区域の特別室に招かれる。
「悪いね。ちょっと人に聞かれたくない話なんだ。」
特別室には既に見覚えのある男性が一人待っていた。テレーザとよく似た顔立ちの、ホセ・デ・アルボル小公爵だ。この部屋にはルイサとミゲル、そしてホセの3人しかいない。侍女は気を利かせて初めから外で待機している。
「さすが、ロドリゲス商会は従業員の対応も一流だね。」
「お褒めに預かり、光栄にございます。」
さっきからフランクで耳触りの良い言葉ばかり言っているが、こちらをあからさまに値踏みするような視線は全く気分の良いものではなかった。改めてフアンとの違いに驚く。
「悪い、待たせたな!」
急にドアが開いたと思うと、ノックもせずにズカズカと大柄の騎士が入室してきた。
「ちょっと!遅れた上にノックくらいしなよ。」
「悪い悪い。急いで来たんだ。大目に見ろよ。」
第二王子と砕けた話し方をする大柄の騎士に、思わず目を剥くと、くるりとルイサの方を向いた。
「この子が例のお嬢さんか。」
「アントニオ、レディに対して失礼な言い方をするな。」
今まで一言も口を聞かなかったアルボル小公爵が、初めて口を開いた。
“さすがテレーザ様のお兄様。お優しいのはお家柄なのね。”
密かに感動しているルイサに、アントニオはうやうやしく礼をする。
「レディ、失礼いたしました。私は、近衛騎士団の団長をしております、アントニオ・プリメローと申します。」
「あ、初めてお目にかかります。ルイサ・ベラスケスと申します。」
プリメロー家といえば、侯爵家筆頭だ。ベラスケス男爵家からすれば雲の上の存在に等しい。
“王族に公爵家と侯爵家なんて、私、場違い過ぎるし!”
この状況に我に返り、わずかに足が震え出した。それでもここで倒れるわけにはいかない。グッと下腹に力を入れ、姿勢を立て直す。
「私はアルボル公爵家のホセです。早速ですがベラスケス嬢、いくつか質問をさせていただきたいのですが、できる限りお答えいただけると助かります。」
「はい、アルボル卿。なんなりと。」
“さすが、テレーザ様のお兄様。権力を笠に無理強いして来ないのね。ご兄妹揃ってお優しい。”
ルイサの脳内ではテレーザに係わることは全て好意的に変換しているようだ。本人それとは気付かず、ホセに柔らかい笑顔を向けた。
「先ず、単刀直入にお伺いしますが、第一王子殿下とはどのようなご関係で?」
「無関係です。」
本当に単刀直入に訊いてきたホセに、ちょっとムッとしながら答えた。
「そうでしたか。しかし、夜会や舞踏会では親しげに話をする様子を見ている方が多いと。」
「それは、第一王子殿下が話しかけるからです。」
“誰が言っているか知らないけど、変な噂を立てられたら、テレーザ様にご迷惑がかかるじゃない!”
ルイサの最重要ポイントはいつまでもテレーザだった。
「じゃあ、第一王子殿下とは個人的には親しくないと。」
「はい。さっきからそう申し上げております。」
もうイライラする様子を隠そうともせずに、言い放った。
「ふむ。」
ホセはミゲルに視線を向けると、ミゲルは眉間に皺を寄せて考え込んでいた。
「…ぶっ!」
突然吹き出したアントニオが、肩を震わせて笑い出した。
「殿下も当てが外れたな!」
大笑いしているアントニオをギロッと一瞥し、ミゲルがルイサの方を見た。
「すまない、ベラスケス嬢。私達が勘違いをしていたようだ。」
そう言うと、仕切り直しにとソファーに座るよう促し、ホセにお茶の用意を頼む。
全員の前にお茶が用意されて、ミゲルは改めて口を開いた。
「では改めてベラスケス嬢、君は兄上に対して、特別な感情は無い、ということで合っている?」
念を押すように訊ねられた。
「もちろんです。そんな失礼なことありようがございません。」
「失礼なこと?」
毅然と答えると、なぜか訝しがられた。
「当然じゃあないですか!テレーザ様の、アルボル様のご婚約者様なんですよ!そんなテレーザ様に失礼なこと、するわけないじゃないですか!」
相手が第二王子であるのにも構わず、ルイサは怒りの余り顔を真っ赤にして声を荒げた。
それにはさすがのミゲルもそしてホセも、驚いて目を丸く見開いた。アントニオはさらに爆笑している。
「お嬢さん、いや、ベラスケス嬢、貴女はもしかして、テレーザ嬢が好きなのかい?」
笑い過ぎて息も絶え絶えになりながら、アントニオがルイサに話しかける。
「好き、なんて…!」
途端に今までの勢いを無くし、頬を染めたルイサは俯いた。
「…そ、尊敬申し上げているだけです。」
打って変わったか細い声で、3人の耳にようやく届く。
「そうなんだ。確かに彼女に憧れる気持ちはわからないでもないけどねえ…」
「そうなんです!すごく素敵でお姿を拝見するだけでうっとりしてしまうし、高貴なお立場を鼻に掛けないし、とってもお優しいし、お声も綺麗だし、仕草も優雅だし、…」
ルイサは堰を切ったようにテレーザのことをここぞとばかりに褒めまくる。これにはさすがのアントニオも、口をポッカリ開けてルイサを見た。
「…一度だけ、お話ししたことがあるだけですけど、それからずっとお慕いしております…」
ルイサの剣幕に圧倒されていた3人は、また、俯いて赤くなってしまった彼女の様子に、やっと我に返る。
ゴホン!と咳払いをして、ミゲルが口を開いた。
「…つまり、君は兄上じゃなくて、テレーザが目当てだったのか。」
「…。」
ルイサは俯いたまま、コクンと頷いた。
口元に手を当ててしばらく考えたミゲルが変なことを言い出した。
「じゃあさ、テレーザと‘義理の姉妹’になる気はない?」
「はい!?それはどういう…」
義理の姉妹、ということは、ホセと結婚するということなのか、それともミゲルと…?いや、まさかどちらも有り得ない。では、公爵家の養女になれということなのか。ルイサは混乱する。
「君に兄上と仲良くなってもらいたい。」
「は?!ありえません!」
「まあ、聞いてよ。」
「待ってください。殿下。唐突過ぎますよ。それにこれを聞いてしまったら、ベラスケス嬢は断れない上に、嫌な目に遭うかもしれない。」
ホセがミゲルを止めに入った。またもルイサは「テレーザの兄」に目が輝いた。
「そうだな。お嬢さん、聞かないで今すぐ帰っても良いぞ。」
「…それは私を何かに巻き込むおつもりだからですか?」
「聡い子は話が早くて助かるね。」
ニヤリと微笑むミゲルを見て、やはり本性はこちらの方なんだなとルイサは思った。
「僕はテレーザを娶りたい。だから、兄上にはテレーザと婚約を解消してもらう。」
「え?!どうしてそれが…」
と言い掛けたが、先程のミゲルの言葉を思い出す。
「…つまり、私が第一王子殿下と仲良くなって、婚約者の座を奪い取れ、と?」
「本当に君は聡いんだねえ。国有数の貿易商の家柄だけあるな。」
褒められたって何も嬉しくない。これがテレーザなら別だが。
「何度も言いますが、そんな失礼なこと、」
「まあまあ、待ってよ。肝心のテレーザは兄上との婚約を解消したがっているんだ。」
「…!」
“ペドロ様とブランカ様のおっしゃっていたことは、本当だったのね。”
「まさか、成人されてからご婚約を…」
「ん?それどこから聞いた?」
突然声が鋭くなったミゲルに迫力負けしそうになる。友人に聞いた、と正直に言うのは得策では無いと瞬時に判断する。
「この国の結婚は、基本、本人達の意志によります。お家同士の結びつきのための婚約であったとしても、両者が成人してから改めて意志を問うことができると。」
「お手本のような答えだね。さすがミジョン先生の教え子だけある。」
「…!」
そんなことも調べているのか!ルイサは背筋がゾワリとする。ミジョン先生とは、テレーザの家庭教師をしていた先生で、ルイサもその先生に教わっている。
「滅多に人に教えないと聞くけれど、君は優秀なんだね。テレーザと同じだ。だから見てもらえたんだ。」
テレーザと同じ先生にお願いしただけだが、自分がテレーザと同じだと言われた気がして、ルイサはつい照れてしまう。
「だから、そんな君にしかできない。しかも君は兄上に気に入られている。」
正直、ミゲルの策に乗るのは癪だ。しかし、テレーザが婚約解消したがっているのならば、力になりたい。あの時の恩返しにもなる。
「…わかり、ました。テレーザ様のためでしたら。」
「ああ、それともし、兄上との結婚が嫌なら、こっちでなんとかできるから大丈夫。その後の縁談まで責任持つよ。」
「ありがとうございます。」
お礼を言うまでもなく当然なのだが、念の為、ミゲルの言質が取れたのでそのお礼だ。
「ベラスケス嬢、面倒をおかけするが、私の名において我が家も今後必ず貴女の力になる。何かあった時は頼って欲しい。」
「…もったいないお言葉です!」
“さすがテレーザ様のお家!こんな私まで気にかけてくださるなんて!”
ルイサは満面の笑みをホセに向けた。
「…さっきから気になるんだけど、僕に対する態度と、ホセに対する態度が違うよね。」
「それは仕方がないんじゃないか?」
「そうだな。」
「なんでだよ!」
「商人は特に、商売や人に関する見識が優れているものだからな。」
ミゲルは納得いかず憮然としているが、皆先程までの空気と打って変わり、和やかなムードで密談を終えた。
お読みいただきありがとうございました。
余談ですが、初め、本編のエピローグに入れるつもりが思いの外長くなってしまい、ざっくり削って番外に持ってくることにしました。そうしたら、さらに長く…主人公が出てこないのに…。