81、中学時代の同級生
「ありがとうございましたー!」
店員さんからクレープを受け取った俺と楓は、適当に休めそうなところを見つけたので一緒に座る。
「思ったより良くできてんな」
「おー…」
俺たちが買ったのはバナナクレープだ。
中にはクリームやチョコソース、チョコチップなどが入っている、手作り感満載のクレープだ。
「わたしも今度、作ってみようかな?」
楓はさっきから買ったクレープを見て目を輝かせて感動している。
面白いなこの子。
「い、いただきます」
「んじゃ、俺も」
二人同時にクレープを口にする。
おぉ…これは、なかなかいいな。
バナナとクリームがいい感じに合って、これだけでもうまいのに、所々チョコのクリームとは違った甘さが口の中に広がる。そしてこのもちもちの生地!最高。
「うまいな、これ」
「はむっ」
言いながら楓の方を見たが、楓はクレープを夢中で食べていて周りを気にする余裕がなさそうだった。
「あむっ…あ、ごめん!な、何か言った?!」
「あぁ、いや、気にしなくていいよ」
クレープをあっという間に食べ終えた楓は、自分が夢中になっていたことに気づいたのか慌てだした。
「ほ、ほんとにごめんね!」
「うまかった?」
「…おいしかったです…」
「ならいいじゃん」
「う、うん」
こういうのって人に気をつかうもんじゃないから気にしなくていいんだぞ?
俺もさっさと食べちゃうか。
「あれ?楓ちゃんじゃーん」
「え…?」
残りのクレープに口をつけようとしたら、知らない女の子が寄ってきた。
制服はここの学校のものじゃないから他校の生徒だろう。
楓を知っているようだから中学時代の同級生か?
「さ、紗英ちゃん…」
「あ、覚えててくれたんだー」
「あ…うん…」
紗英ちゃんさんはニッコニコ笑顔で楓に向き合っている。
しかし、楓の方は怯えたような顔だった。
「…あれ、もしかしてデート中?」
そう言って紗英ちゃんさんは俺の方を見てくる。
あ、どうも。
とりあえず軽くお辞儀しておく。
「そ、そんなんじゃないよ…」
「だよねー!楓ちゃんだもんねー!」
「…」
何だろう、この楓の事を良く思っていないような感じ。
「楓ちゃん空気読めないから迷惑かけないようにしないとね!」
「…」
あぁ、そゆこと。
こいつ、中学の時、楓と仲が良かったグループのやつか。
紗英は俺の方を見てくる。
「中学の時、いじめられてたんですよ。この子」
「…へぇ、そうなんですか」
「…やめ、て…」
さっきまでの楽しかった雰囲気は一切感じられなくなり、この場だけ一気に温度が下がったように感じた。
「教科書隠されたり、机の中荒らされたり、ほんとにかわいそうでしたよ」
「やめて…!」
「いや、事実じゃん」
「っ…」
紗英は、もはや笑顔ではなかった。
真顔で、何かを射抜くような視線で楓を見ていた。
なんだこいつ。急に出てきてムカつくな。
俺は努めて明るい声で話す。
「ははっ、マジウケるんですけど!」
「…ぇ」
「ふふっ、でしょ!」
ほんと、マジウケるんですけど。
「自分からいじめてたって言ってるのマジウケるわ!」
「…は?」
「…あ、さひ、くん…?」
さて、どうなるんでしょうね。




