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拒絶の幼馴染  作者: ひゃるる
44/200

44、大袈裟なんかじゃない

 西日が通学路を照らし、二つの影が長く伸びる。

 俺の隣には雨宮先輩。

 なぜこんなことになってしまったのだろう。いや、俺のせいなんだけどね。

 学校から出て五分も経っていないが俺たちの中には会話はなかった。

 この人怒ってるんじゃないか?怒ってないわけないよな?ひぇぇ…怖いよう。


 「…もうこんな時間になっちゃったんだね」


 「すみませんすみませんすみませんすみません」


 やっぱ怒ってるわ。そりゃそうだわ。俺があの場で居眠りなんかしてなければもうちょっと余裕を持って、なんなら自由時間が少しあるくらいで帰れたはずなのだ。それを潰されたのが仕事をしていない後輩となると怒るのも仕方がない。


 「いや、ほんとに申し訳ないです…あの、俺に出来ることならできる範囲で引き受けますんで…」


 「ん?今何でもするって言った?」


 「言ってねぇよどんな耳してんだ」


 さすがにそこまで言っていない。何でもするとは言っていない。先輩なのにいつも通り言い返してしまった。これも雨宮先輩のせいだ。


 「でも、俺のせいで仕事が遅れてるんで文句は言えないっすね」


 「もうそれは気にしてないよ」


 「え」


 「仕事のことは別に急いでないから大丈夫。だから気にしないで」


 どうやら気にしないでくれるようだ。

 気にはしていないようだが、雨宮先輩の顔はまだ不満げだった。


 「…えっと、じゃあ何でそんな不満そうなんですか?」


 「…」


 俺がそう聞くと雨宮先輩は足を止めてその場で止まり、少し怒ったような顔でこちらに顔を向けた。


 「…仕事の事は別にいいの」


 「え、あぁ、はい」


 「でも、無理しないでって言ったよね?」


 「あ…」


 そういうことか。雨宮先輩は俺のことを心配してくれていたようだ。


 「お昼もゼリーだけだったし…この暑い中、倒れたりしたらどうするの?」


 「いや、大袈裟ですって」


 「大袈裟なんかじゃない!」


 「っ?!」


 初めて聞いた雨宮先輩の叫び。

 先輩の目は怒りだけではなく、心配の色もしていた。

 本当にこの人は優しい。そんな先輩にここまで言わせてしまった自分が嫌になる。


 「…すみません」


 「謝らなくていい」


 「…」


 「もう少し、自分に気を使って?」


 「はい…」


 「反省した?」


 「はい…」


 この歳にもなって普通に説教されるのはなかなか恥ずかしい。でもこれに関しては完全に俺が悪いので潔く説教を受ける。


 「男の子って佐倉君みたいに我慢して頑張ろうとする人多いけど、周りのみんなは結構心配してるんだよ?」


 「…」


 「佐倉君が体調崩したりしたら…私が嫌だから…」


 「先輩…」


 この先輩は、優しすぎる。

 ただの後輩にここまで言ってくれる先輩なんてそういないだろう。


 「とにかく!今日はしっかり休んで!」


 「は、はい!」


 急に大きな声を出されてびっくりしてしまう。


 「そして、今日の事はそのうち罰として佐倉君には何かしてもらいます」


 「…了解です」


 「反省しなさい」


 「…申し訳ありませんでした」


 「謝罪はいりません」


 そう言って雨宮先輩はそっぽを向いてしまう。

 …いい先輩だなぁ。

 つい最近知り合ったばかりのただの後輩をこんなに心配して、怒ってくれるなんて…。


 「先輩」


 「ん?」


 「ありがとうございます」


 「…よろしい」


 雨宮先輩はいつも通りの笑顔でそう言った。

 夕日が照らす通学路。そこには亜麻色の髪の毛が光を反射させてキラキラと輝いていた。

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