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結局テンプレが正義になりがち

 攻略情報見てさっくり倒すのと初見で突っ込んでみるのどっちがいい? と大根さんが私に問いかける。不思議そうに首を傾げる私に、苦笑しながらクローバーさんが答えた。


「初見のボス戦が楽しいって人も結構いるからな」


「……???」


「つまり何だ、一回攻略情報を見ちゃうと、ボス戦って自力で倒せなくなっちゃうっていうか、自分で攻略してる感がなくなっちゃうって思う人もいるわけ」


「うーん、なんとなくわかった」


 攻略情報を見たって別にボスが勝手に倒れるわけじゃないから良いと思うんだけど、人によって感じ方は色々あるってことだろうか。


「アオイさんはどっちかなと思ってさ。まあ流れ作業でモブ倒してレベリングしてる時点で今更かもだけど……」


「ううん、ありがとう。そっか、どうしようかな」


 攻略情報を見てその通りに倒すのもそれはそれで楽しさがあるだろう。でも、ボス戦と聞いてすぐに向かってみたいのも事実だった。


「なんか、ボス戦って負けたら何かあるの?」


「デスペナとか? このゲームデスペナ緩いからなんにもないよ、拠点に戻されるだけ」


 大根さんが答えてくれた。なるほど、死んでも特に迷惑がかかったりしないのか。なら、せっかくだし初めてのボスくらいは何も見ないで突っ込んで見るのも楽しいかもしれない。


 拙い言葉でそれを伝えると、大根さんもクローバーさんもニッコリ笑って頷いてくれた。


「でもまあ、レベルアップで覚えたスキルくらいは確認したほうがいいし、スキルポイントは振ったほうが良い」


 頭の上にクエスチョンマークを複数浮かべて首をかしげると、これまた丁寧にゲームシステムを教えてくれる。わからないゲーム用語も、逐一丁寧に解説してもらった。


 このゲームは職業(クラス)ごとにスキルツリーが存在して、基本的にパッシブスキルはこれで取得するらしい。その他に、フラッシュスタブのようなアクティブスキルがあって、それは行動によって条件を満たして自動取得だったり、クエストの報酬だったり、アイテムを使って覚えたりするらしい。

 私のクラスは初期設定の「ソルジャー」のようだった。メニュー画面からスキルツリーを見ると、よくわからない大量のスキル郡が並んでいる。どうやら前提となるスキルの取得が条件のスキルもあるらしい。樹形図のようで、なるほどツリーという単語がわかりやすい。


「大根さん、これスキルって適当に振っていいの?」


「振り方で結構変わっちゃうからホントはよくない。あと振り直しは課金」


「まあ課金はいいんだけど……ちなみにいくら?」


「500円。本格的にやり込みたくなったら課金して振り直すとかでもいいんじゃない?」


 うーん、そういうものかなあ。座り込んでいるクローバーさんをちょいちょいと手招きで呼び寄せて、スキルツリーの画面を見せながら聞いた(ちなみに、他人にメニュー画面を見せるには結構面倒な設定が必要だったけど、これも二人が教えてくれた)


「ソルジャーのスキルのテンプレってどれ?」


「それ聞いちゃう?」


 大根さんが笑った。大根さんは「トリックスター」という軽装の戦士クラスで、クローバーさんは私と同じ「ソルジャー」クラスのはずだった。


 二人はwikiを見て攻略するタイプらしいから、自分のクラスのテンプレ……テンプレート、よくある構成のこと、くらいは知っているだろう。


「こういうのの試行錯誤の楽しみもあるかもしれないけどさ、早く強くなりたいじゃん」


「そっか。それなら全然いいんだけどね」


 ゲーム攻略を自力でやりたい派とWikiを見てやりたい派がいるらしいことは聞いたけど、私は結構どちらでもよかった。

 スキルは適当に振るにも面倒だったから聞いて終わるならそれでいいかなと思っただけで。後々まで影響があるならボス戦とは事情がちょっと違う。


 クローバーさんの言う通りスキルを振ると、パッシブによってHPが増えたのが目に見えてわかる。レベルが上がれば攻撃力に特化するか、耐久に特化するかに別れるらしいが、今はそこまでスキルを振れるほどレベルが高くなかった。


 ついでだから、と言われるままアクティブスキルを確認すると、《フォースインパクト》が増えていた。武器を勢いよく叩きつける、隙が大きい代わりに威力が高いスキルらしい。《フラッシュスタブ》は飛び込みがある分アクティブスキルとしては控えめな威力らしかったので、高火力なスキルは少し嬉しい。


 準備万端になったところで、地面に置かれた円形の機械の上に乗る。これは転送装置らしく、上に乗って起動すると一定の場所までワープできるという代物らしかった。


 ファンタジーなのかSFなのかよくわからない。さすがに気になってきたので、ボス戦終わりにでも世界観の設定はちゃんと見てみようかな。


 そんなことを考えていると、ふっと視界が切り替わった。目の前には3メートルくらいの大きさの……なんというか、熊がいた。頭に花が生えた、熊だ。


 間違いなく、こいつがボスらしかった。



攻略情報情報見る派と見ない派、どっちもゲームを楽しんでいていいなと思います。

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