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流れ作業の美しさたるや

これは本当に言い訳なんですけど、もともと本タイトルはこのタイミングで公開するつもりがなくてもうちょっと練ってからお出しする予定でした。

予約投稿の日時をすっかり忘れていたせいでうっかり投稿されちゃっていました。完全に事故です。


驚くことに結構なPVといくつかのブックマークを頂いていました。ありがとうございました。

引き続きよろしくお願いいたします。

 さて、VRの感動も少し覚めて冷静になってみれば。このゲームの初心者どころか、ゲームそのもの、なんならフルダイブVRが始めてのプレイヤーに親身になってくれるというのは何か裏があるんじゃないか。


 結論から言うと、その疑問は全くの杞憂だった。クローバーさんも大根さんも、戦闘の合間合間にちょっとした攻略情報やコツなんかを教えてくれて、とても楽しく……しかし同時に、かなりのペースで敵を倒していった。


 人の親切を疑うのはよくないのはわかっているけれど、現実でなまじ顔がいいがための苦労を思えば――こう言うと自分でもちょっと高飛車な感じがして嫌だけれど、怪我をする前は下心を持って近寄ってくる男性は山程いた――少しばかりぎこちなくなるのは当然だった。


 とはいえ、クローバーさんも大根さんもそのぎこちなさは初対面の相手特有のそれだと受け取ってくれたのか、むしろおどおどとした私を気遣うように優しく接してくれた。


 そもそもとして、私のアバターは青年の姿を使用している。どうやら声もアバターに合わせて自動で変更されるみたいだから、リアルの私を知ってどうこう、というのはありえない。


 生まれ持った外見や性別に囚われずに仲良くしてくれるのは新鮮で、温かい気持ちになる。気づけば少しずつ敬語も取れてきていた。


「うーん、VR、もっと早くやっててもよかったなあ……」


「急にどうしたの」


「いやさ、実際の顔とか、リアルの事情とかあんま気にせず遊んだりできるわけじゃん。結構気楽でいいなって」


 大根さんは不思議そうに目を瞬かせた。なお、この間も湧いてくる敵(モブ、と言うらしい)がクローバーさんによって流れ作業のように処理されていく。


 クローバーさんのHPが減ってきたら大根さんが前衛を交代して回復を待つ、という流れがローテーションになっていた。


 |フラッシュスタブのような《突進効果付きの》スキルがある私は中衛向けで、前衛が盾や剣で攻撃を受けて怯んだところに飛び込んで倒すのが良いらしいので、少し後ろで待機して、スキルのクールタイムが終了するたびに発動する担当になっていた。


 実際に私が攻撃を受けることはほとんどなく、一方的にクリティカルヒットの表示を出し続けられているから、これは本当に快適なのかもしれなかった。それに一方的に攻撃を当てるのはなかなか楽しい。


 作業感が強くなるかもだけど、とクローバーさんは言っていたけれど、役割分担をきっちり熟した結果たくさん敵が倒れていくのは中々表現しにくい快感があった。


 クールタイムの終了と同時に、地面を蹴ってフラッシュスタブを発動する。相手の胴体を真横から貫くと、何十度目かの消失の演出と経験値の獲得メッセージが表示された。ほら、楽しい。


「あーごめん。初対面の相手にこれ聞いていいのかわかんないけど、リアルでなんかあったの?」


 スキルの発動を終えて戻ってきた私に曖昧な表情で質問したのは、前衛を交代して下がってきたクローバーさんだった。前衛後衛と言っても離れているのは数メートルだから、当然声は聞こえている。


「なんかあったってわけじゃないけど。うーん」


 嘘だ。何かはあったけれど、顔に怪我をしてVRに引きこもりたかった、とはちょっと言いにくい。ましてモデル自体にやってれば外見に囚われずに友達が出来たのかなあ、とはもっと言いにくい。適当にごまかす言葉を探す。


「なんていうか、ちょっと外見にコンプレックス? みたいなのがあって。ここだとそういうの関係ないじゃん」


「ああ、まあ。そうだな」


「それがちょっとだけ嬉しい。その……友達出来たし。上手く言えないんだけど」


 読者モデルをやっていたころの人間関係は良くも悪くも私の外見が綺麗なことに依存していたから、そうじゃない友達ができて嬉しい、とは言えなかった。


 あなた達には感謝している、という意味を込めてなんとか言葉を伝えると、クローバーさんは強面のアバターの表情をニヤリとさせて、バシバシと私の背中を叩いていた。


「これからいくらだって友達増えるだろ、VRを楽しんでくれよ」


「なにそれ、先輩面?」


「VRに関しては俺も大根も長いことやってるし」


「ふぅん」


 クールタイムが開ける。再び飛び込んでモブを処理した。ちょうど経験値が足りたのか、レベルアップ演出が流れる。何度目でもこのファンファーレは耳に心地いいものだった。


 レベルアップおめでとう、ありがとうと言ったやり取りがかわされる。こういったちょっとしたコミュニケーションが、なんだかいいなあと思える。


「さて、そろそろボス戦だね」


 大根さんが剣で回復端末を指し示しながら言う。明るい森の風景には馴染まない、無骨な鉄のオブジェ……大きな立方体で、上にボタンがある、謎の機械のようなものが置いてあった。


 世界観的にどうなの? と言いたくなったが、もしかしたら何か理由があるのかもしれない。なにせオープニングをスキップしてしまったので細かいストーリーは全く追えていないのだ。


 二人に習ってボタンを押すと、体力や魔力、スキルのクールダウンなどが全て回復したのがわかった。


 この端末はボス戦の前には大体置いてあるらしい。その理由もよくわからないが、ひとまずゲーム的にありがたいことには違いない。


「ボス戦に行く前に、作戦会議しようか」


 そう言う大根さんに、素直に首を縦に振った。

 

しばらくは毎日更新します。

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