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New Threats(?)

アオイと別れた後の大根視点の話です。

 アオイさんと別れてすぐ、メールの通知が入った。クローバーからの連絡だ。アオイさんと話し込んでいて間違わせの時刻に遅れてしまったし、いい加減怒っているだろう。


 メールを見ると心配の文言が並んでいた。心苦しく思いながらも「今行く」と返信して、テレポートアイテムを使用する。


 このアイテムは安全な場所で使うことで最後に立ち寄った町まで移動するものでショップで安く売っている。移動が手軽なゲームなのはいいことだな、と思う。なにせ、フルダイブVRのゲームは実際に体を動かすわけだから、長距離の移動は肉体が疲れなくても何かと負担なのだ。


 町の中央の噴水にワープすると、いい加減待ちくたびれたという様子でベンチに座って頬杖を付くクローバーがいた。軽く手を振ると、立ち上がってこちらに近寄ってくる。


「遅かったじゃんか」


「悪い。ちょっと初心者と絡んでて」


「初心者? なんで?」


「なんか音声チャットもつけ忘れてるようなヤツでさ、全身鎧だから敵と間違えて斬りかかってきてさあ」


「えぇ……嫌がらせとかじゃなくて? マジのやつ?」


「話した感じはそうっぽい。なんかVR自体初心者だってよ。子供って感じでもなかったなー」


 今どき珍しいこともあるもんだな、とクローバーは呟いた。全く同意だ。今やVR機器は一家に一台どころか一人に一台でも珍しくはない。にもかかわらずVRゲームで遊んだことがないというのは、かなり珍しい。


 小さい子供ならまだしもというところだが、アオイさんはそう子供っぽくはなかった。


「せっかくなんでちょっと話してフレ登録とかしてたわけよ。悪かった」


「そういうことならしゃーねーわ、で、そいつは今いないの?」


「飯食ってくるってさ。後で合流してもいい?」


「いいよ、俺も顔見てみたいし。つかお前は大丈夫なん?」


「何が?」


「せっかくのオフで遊ぶゲームで身内以外が居て」


「別にリアバレするわけじゃないし。しつこく聞かれたりしなきゃいいんじゃね?」


「ならいいや」


 まだ戻ってくるまでには時間がかかるだろうから、適当に戦闘エリアをぶらつく。現れる敵をなで斬りにして経験値に変えながら歩いていると、唐突にクローバーが雑談を振ってきた。


「そういうやアオイさんが殴ってきたのってどのへん?」


「ちょうどこの辺だわ」


「このゲームPKないじゃん? 当たるとどうなんの?」


「強い衝撃でノックバックする感じかな、当たった感じだと」


「当たった感じ?」


 クローバーがこちらを向いて聞き返した。クローバーが戦っていた敵が、目線を外されたことによって好機と判断したのか、大きく振り下ろす攻撃を繰り出している。


 慌ててカバーに入るためにスキルを使用する。フラッシュスタブは、弾かれることなく敵の顔面を貫き、消滅エフェクトを発生させた。


「余所見はダメだろ」


「いや、悪い。でも待ってくれ、お前、相手の攻撃当たったの?」


「当たったよ。あとスキル弾かれたりしたわ。このゲームパリィ用のスキルとかあんだっけ? 俺取ってないけど」


「ねえよ、対人ゲーじゃないんだぞ。スキル弾かれた? マジで? どれ?」


「フラッシュスタブ。飛び込むやつ。……何をそんな驚いてるんだよ」


 クローバーは立ち止まると、こちらをはっきりと見て言った。


「いいか。まず、VRで思い通りに体を動かすのは難しい。体のサイズが現実に近づけられるゲームならまだマシだけど……これはお前に言うまでもないけどさ」


 まあ、そうだ。格ゲーなんかでは体の大きさや、時には性別さえ違うアバターを使うことがあるけど、どうしてもそれに対する違和感がある。ゲームを上達するにはまずアバターコントロールから……なんて言われるくらい、VRでの体の動かし方のコツというのは難しかった。


「その状態で、いくら動きがスキルで補助されるゲームとはいえ、突進系のスキルを弾くなんてできるわけねーだろ。人の攻撃を弾くスキルなんかないんだから。お前に攻撃当てるのはもっと無理」


「大げさだって、できるやつもいるでしょ」


「いやわかってないね。だいたいフラッシュスタブ弾くのだってタイミング相当練習しないと無理だろ」


「できたけど」


「自分のことがよくわかってないみたいだから言うけどお前ゲーム上手いんだよな」


 クローバーが大きくため息をつく。僕の肩を掴んで、言い聞かせるように、もしくは宥めるように言葉を続けた。


「現役プロゲーマー・『LEN』の感覚で判断しちゃダメだろ」


「そんなもんかな」


「そんなもんだよ、ホントに初心者なんだったらかなり掘り出し物かもわからんな」


「やめてよ、始めたばっかの相手にごちゃごちゃ聞くの」


「わかってるよ。いやしかし、すげえヤツ見つけたな」


 運命ってやつか? と煽るように言った。まあ、そうと言えなくもないけど、どうせ同じ運命なら野郎じゃなくて女の子とがよかったかもしれない。


 そういうとクローバーは笑い転げて使い物にならなくなった。アオイさんが来るまであと20分くらいの間にどうにか笑いをやめさせないといけないことを考えて、どんよりとした気分になった。

次はすぐアオイ視点に戻ります。

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