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初心者なのでそんな設定は知りませんでした

 紅色の閃光が相手の胸へと走る。流れ星のような美しいその軌道は、体を貫くその寸前に青色の衝撃によって斜め上に打ち上げられていた。


 私が今使った技……というか、今覚えている唯一の技「フラッシュスタブ」は、一瞬で飛び込んで相手の体を串刺しにするスキルらしい。


 けれど、どうにもこのモンスターには攻撃が通用しないようだった。何度「フラッシュスタブ」を繰り出しても、当たる直前でモンスターの持つ剣に弾かれてしまう。


 弾かれた剣を元に戻そうとするこの時間がもどかしい。VRゲーム特有の、体を動かしたいのに金縛りのように動かない硬直時間に焦りを覚える。


 モンスターもどうやら無理な姿勢で技を出したからか、同じように硬直しているようだ。けれど、ほんの僅か、瞬きの一回分だけ相手が早く動いた。上から下に大きく振り下ろす攻撃だった。


 私は技を出すのを諦めて、防御が成功するように祈りながら剣を上に掲げた。ガン、と強い衝撃が腕から足を走り抜ける。どうにか体がすっぱり斬られるのは防げたようだ。


 そのまま腕にぐっと力を込めて押し返すと、それに合わせて後ろに大きく飛び退いて距離を取られた。しばらくにらみ合いが続く。うかつに「フラッシュスタブ」で飛び込んでは、また防御されるかもしれない。もう逃げようかな、と思ったところで、相手が強く踏み込むのが見えた。


 瞬間、世界がスローモーションになるような感覚が訪れた。相手の手元が妙に大きく、拡大されてさえ見える。その手に輝いたのは赤色の閃光(フラッシュスタブ)。私の胴体を今まさに貫かんと突き出される切っ先が見えた。


(どうだろう、できるかな)


 思い出すのは、これまで五回も私のスキルを防いだあの青い光。何かの技のエフェクトなのだと思う。技は覚えてないけど、それでも同じような動きで上手く剣をぶつけたら、同じことができないだろうか。


(失敗しても、別にいいしね)


 このゲームで死んでしまったときにどうなるかは知らないけれど……どうせ、初めてから一日も経っていないのだ。大して失うものもない。


 避けるよりは、あれをやってみたい……そう思って、突き出される剣を見据える。体感ではじりじりと、しかし実際は一瞬で繰り出されているであろうそれに、間に合えと下に構えた剣を跳ね上げる。


 剣と剣がぶつかるまでは一分も二分もかかったような気がした。けれど、剣が触れ合った瞬間、世界の速度が元に戻る。ガキンと大きな音が弾けた。確かに剣先は胸からずれて、私の肩をかすめていた。


 モンスターの顔は鎧で見えないけれど、驚いたかのように動きが止まる。細かいところまで作り込まれているなあ、と感動した直後、相手の攻撃が再びやってくる。


 同じように下から上へ、剣の真ん中のあたりへ自分の剣を置いて跳ね上げるイメージでやってみる。けれど、今回は跳ね上げる寸前にドリルのような回転の動きをされて、うまくできなかった。


 そうして私の胸はぐっさりと剣に貫かれると思ったのだけれど……剣先が私の体に当たると同時に、全身が後ろに吹き飛んだ。不思議に思ってHPを見てみると、なんと戦闘の最初から全く減っていない。


 体を起こしながら、バグだったら嫌だなあ……と思っていると、モンスターがゆっくりと剣を下ろしたまま近づいてきた。そうして、しばらくじっとその場に立っていた。


「え、なんだろ。本当にバグっちゃってるのかな」


 思わずそう声に出してつぶやくと、目の前のモンスターはすっとしゃがみこんで、がしゃりがしゃりと鎧の音を立てながら地面に指を擦り付け始めた。


 何してるんだろう? そう思って覗き込むと、そこにはこう書いてあった。日本語で。


『もしかして、音声チャット切ってる?』


 ……音声チャット? え? なにそれ?

 

用語とかシステムとかを主人公がよくわからない状態なのは最初だけの予定です。

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