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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード3
72/85

山中越え


 その頃、先行する三菱GTOと彼女を追跡する日産フェアレディZ・スカイラインGT-Rコンビが、峠道へと向かう麓にまで到達していた。何でもアリの違法追跡劇は、まだ始まったばかりだ。

 とにかく持て余すほどの加速力で、グイグイ先行していた三菱GTOだったが……もう息切れしてきたのか、坂道前の路上で弱音を吐いていた。

 あまり深く考えずに猪突猛進するような、見た目もパワーも過激な娘だったのだ。


「せ、制服のまま走るのキッツい! それにコンビニで買ったペットボトルが、こんなにも邪魔になるなんて……」


 巨大サイズのミネラルウォーターを一気飲みしながら、汗で貼り付いた前髪を直していると、見覚えのある制服ペアが傍を通りかかった。

 そのうちのフェアレディZが、長い髪を遊ばせながら人懐っこい笑顔で挑発してきた。彼女は長距離タイプのせいか、汗ひとつかかず涼しい顔をしたままである。


「ねえねえ彼女! もう休憩? ちょっと飛ばしすぎなんじゃないの?」


「うっせ! 今からどこを探すか考え中なんだよ」


 今更ながら考えなしに、ここまで来た事を白状した。意外にも『それは私達も一緒』とスカイラインGT-Rは、爽やかな口調で擁護したのである。

 どうも日産ペアは、この状況を楽しんでさえいるようだ。


「Z! とにかく峠にあるコンビニまで行ってみようよ」


「そうね、GT-R。もしギャラリーがいたら、話が聞けるかもしれないし」


 スカイラインGT-RとフェアレディZが駆け出すと、GTOも飲みかけのペットボトルを放り投げた。


「負けるか~! どっちが先に峠まで辿り着けるか競争だ!」


 熱くなりやすいスカイラインGT-Rは、早くも上り坂をモノともせずに加速し、マイペースなフェアレディZを置き去りにした。その背中を見失う前に、本気モードになったGTOが、ターボを利かせるように追いかけてくる。


「ワインディングロードはお手のもんだよ!」


「させるかぁ! お食事券はオレのもんだ!」


 その時、坂道を下ってきた軽トラが3人の前に迫ってきて、ギリギリの道幅でパスしていった。特に最後尾にいたフェアレディZが轢かれそうになる。


「ひえええ! 交通規制もされてないし、夜間のライトなしランは危険すぎます! やっぱ止めにしませんか~?」


 こんな夜間に、しかもグレーの制服姿で山道を駆け登るリスクなど気にしないGTOは、相手を鼓舞するように言った。


「この一瞬のスリルが、たまんねーんだろが! なあ! GT-R!」


「ああ! ここに置いてっちゃうよ! Z~!」


「待ってよ! こんな人気のない山の中に独り残されたらと……考えるだけでも恐ろしすぎる~!」


 右に左にガードレールをすれすれになぞるクルマ娘らは、ホーンを鳴らす本物の車を巧みに避けながら、ギャラリーポイントがあるカーブを目指してひた走ってゆく。





 

 





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