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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード3
70/85

双子のAE86


「もしもし? 豊田とうふ店ですが……」


「あっ! スプリンタートレノ? 私よ、スープラです……!」


「あ~、スープラ? 私はカローラレビンだよ。ちょっと待ってて、今トレノに代わるから……」


 何だか、そわそわしているスープラの無頓着な会話に、RX-7が近寄って聞き耳を立てている。


「はい、トレノっすけど……」


「良かった、家にいたのね! 早速だけど、ぜひ訊きたい事があるの!」


「一体、何すか急に? そんなに焦って?」


「黙って聞いて! アナタ、よく山中越えの峠道を通って京都まで走りに行くそうね」


「今は、そんなに行ってないっすよ」


 かのユーノス・ロードスターが、峠道で事故った可能性を捨てきれないスープラは、細い糸を手繰るように何とか食らい付く。


「ウソおっしゃい! 昨夜、走りに行ってた事は、目撃情報があるんだから」


「げっ! 日産180SXの奴……」


「お父さんにバラされたくなかったら、何もかも話しなさい」


「分かったよ、何でも訊いてくれ」


「昨日の峠道で、何か事故や異変が起こった事はない?」


 暫くの沈黙の後、トレノは特にそんな事は起こらなかった旨をスープラに伝えた。


「そう、じゃあ正直に話すけど、実はユーノス・ロードスターが、昨日から家に帰ってないの。何でもいいから、何か心当たりはないかしら?」


「ええ~! そうだったんだ! アイツが行きそうな場所って……」


 早くも居場所のヒントを掴んだ事に、心躍るスープラが訊き返すのだ。


「行きそうな場所って……どこなの? 教えて!」


「琵琶湖一周のソロキャンプ……かな?」


「え~! 琵琶湖一周~? その目的地は?」


「さあ、そこまでは……でも、マキノ町のメタセコイア並木を見てみたいって前から言ってたような……」


「何~? あのメタセコイア並木~?」


 そこまで聞き取ったRX-7は、副会長のコスモ・スポーツに一瞥すると、猛スピードでダッシュしていった。


「ああっ! 盗み聞きしているとはズルい! 制服のままで行くつもり?」


 すぐにスマホを鞄にしまったスープラは、コスモにも抗議した。


「並大抵の距離じゃないですよ? いいんですか、もう日没まであと僅かなのに!」


 コスモは、すでにメタセコイア並木の噂をキャッチしていたらしい。複数からの情報を得て確証を得たようだ。


「ふっ! 我々はクルマ娘だろう? 走り切れる範囲内だな。さすがに夏休みに入った生徒達の細かい活動までは、生徒会も口出しはできないさ」


「むううう~っ」


 不満の塊で頬を膨らませたスープラは、準備運動もそこそこに、RX-7の軌跡を追ってスタートを切ったのだ。




 

 

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