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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード3
69/85

ロードスターのゆくえ


 ここで副会長の松田コスモ・スポーツが、端正な顔を少し曇らせながら目の前に集まった6名に伝えた。


「アンフィニRX-7の言う通りだ! 事件性があるかどうかは現在、微妙なラインだ。もし我々が今日中に、失踪したユーノス・ロードスターを発見できなかった場合は即、警察に通報とする!」


 真剣な副会長の言葉に、一堂に会した走り屋達の間にも、並々ならぬ()()()()が湧き起こるのだ。


「なお、協力してくれた皆にも、学園長からの報酬があるという事だ……」


 現金なスカイラインGT-Rが人一倍反応する。


「おおっ! あの大徳寺学園長から? これは期待!」


「馬鹿者! そこ、不謹慎だぞ! 友人が行方不明だというのに」


「スミマセン……」


「話の腰を折るなというに……え~、大徳寺学園長は今回の件を耳にして、大いに心配されているそうだ……」


 ここで本田NSXが、鋭い視線をパッシングのように光らせて一般的な意見を述べた。


「そんなに心配なら、すぐにでも警察にお任せした方が……」


 ばつが悪そうに咳払いをした後、松田コスモ・スポーツ副会長は、悪魔の笑顔を見せた。


「――学園長は、大きな事件になって世間から注目される事態を恐れている。最近はSNSで一発だからな。だから早々に我々の手で解決しなければ……」


 勿体ぶる副会長に、ついに三菱GTOからのツッコミが入った。


「だからサッサと言えよ! 学園長からの報酬って何なんだよ?」


 歯切れのいいイケメン生徒からの言葉に対し、RX-7が庇おうとしたが、コスモは構わず続けた。


「そんなにも知りたいのか。よし……いいだろう。報酬は学園にあるカフェテリアのお食事券、1年分だ。ただし……」


「ただし……?」


「近い、近い!」


 思わず詰め寄る6名をいなしながら、コスモは宣言したのだ。


「ただし! 報酬をゲットできるのは、最初にロードスターを探し出した1人だけだ! ペアになって山分けするのも不可!」


「何だ、ケチくせ~」


「今、何と言った?」


「――おい、スープラ!」


「ちょっと! 私、何にも言ってません!」


 ざわめく走り屋達に一喝した副会長は、この場からの解散を命じた。手がかりは、あまりに乏しい。唯一の情報は、ユーノス・ロードスターが終業式後の開放感からか、峠に走りに行ったという曖昧な物だけだった。


「どけ、どけ、どけ~! お食事券はオレのもんだ~!」


 早速、直線番長の三菱GTOが飛び出すと、制服姿のままで走り去った。


「負けるか~! 行くぞ! ゼェエエット!」


「はい皆さん、お先にね!」


 R32GT-Rがシューズの底を摩擦で鳴らしながら走り出した。フェアレディZがそれに続く。


「……私は暫く考えてから出発する」


 さすがは頭脳派、本田NSXは学園へと引き返すようだ。


 残された豊田スープラは、しばらく呆然としていたが、すぐ何かを思い出したようにスマホで誰かに連絡を始めた。峠道に詳しい、親戚の豆腐屋の娘のようだ。






 


 


 

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