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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
66/85

さよなら伊太利屋女学院


 空を見上げると黄昏の匂いがするような祭りの後。

 人通りが少な目の名車女子学園の裏門から、堂々と出て行こうとする一団があった。

 その中の一人、ランチア・デルタHFインテグラーレ・エヴォルツィオーネⅡは、堰が切れたように喚き始める。


「あ~っ! ムカつく! 何なの、アイツらは? また交流試合を申し込んで今度こそ、ぶっ潰してやるんだから!」


 同じく我慢していたのだろうか、ランチア・ラリー037も負けじと振り返ると、彼方にある時計台の校舎に向かって大声で叫んだ。


「覚えてろ! 帰ったらフェラーリとアルファロメオに言いつけてやる! 首を洗って待っていやがれ!」


 双方の怒号を制するかのように、ランニングエレファントのぬいぐるみで背中をポンポンと突っついたランチア・ストラトスHFは、最後までスマートのまま立ち去るようにアドバイスした。


「二人とも見苦しいですよ。王者たる者は、去り際も美しいものなのです」


「そんな事言ってもよォ……!」


 腹の虫が治まらないような、ラリー037の態度を見かねたのだろうか、校門裏手で無許可ゲリラ屋台を営業していた謎のクルマ娘から、威勢のいい声を掛けられた。


「オイオイ何やねん、アンタら! そんな辛気臭い顔せんと、ウチのお好み焼きでも食べて帰り~」


「お好み焼き……だと?」


 エプロンと鉢巻きを身に付けたポニーテールの少女は、下に名車女子学園の制服を着ている。ガッポリ儲かったのだろうか、ほくほく笑顔で三人に手招きをしているのだ。


「ちょうど店を畳むとこやねん。三枚残ってるさかい、遠慮せず食べていき~な!」


 興味津々のラリー037は、鉄板上で香ばしく焼けている物を見るなり、驚きの声を上げた。


「何だ? こんな黒いソースがかかったピッツァなんて、見た事もないぞ!」


「何や〜ピザやって? う~ん、まあ和風のピザと言えん事もないなぁ。そうや、ジャパニ―ズスタイルピザやねん」


 躊躇する事もなく、お好み焼きにかぶりついたランチア・デルタと続くラリー037は、思わず言葉を漏らした。


「ええっ? 生地に大量のキャベツが練り込まれている?」


「トッピングは何なんだ〜?」


 小腹が空き始めたのだろうか、ランチア・ストラトスもパックされた一片に、素手で齧り付いたのだ。


「熱い……! これが噂に聞くオコノミヤキですか。チーズなしの甘辛いソース! 焼き方も、ひっくり返したりして全然違う。ピッツァとは似て異なる物ですね」


「そうやねん。帰ったら宣伝しといてや」


「ご馳走様です。ところで、アナタのお名前は?」


 黒髪のポニテ少女は、少し恥ずかしそうにタオルで顔を拭う。大衆的な親しみやすい顔だ。


「ウチの名前か? まあ、名乗るほどのモンやないけど……大発シャレード・デトマソや」


 その名を耳にしたストラトスは、驚きの表情を隠せなかった。


「デトマソ……? ひょっとして我が校のデトマソ・パンテーラと何か御関係が……?」


「いや、ウチは生粋の大阪生まれやねん。デトマソさんには、プロデュースして貰ったというか……」


「そうなんですか! 是非とも伊太利屋女学院に来て頂いて、この料理を振る舞って貰えませんか?」


「まあ、ええけど~! ウケるかどうか、分からへんで〜」


『よし、やったね……!』


 本来の元気を取り戻した伊太利屋女学院のエース達は、屋台の電気が消えるまで、いつまでも話が盛り上がっていたようである。


 いつしか遠巻きにできた人だかりへ、校舎から聞こえてくるチャイムが、何事もなかったかのように吸い込まれてゆく。



 




【ラーメン・スタンプラリー編 終わり】 


 


 

 

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