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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
61/85

突然の失格


「――こ、これは何と言う事でしょう! 豊田セリカGT-FOUR RC選手、ラーメン店のスタンプが押されたカードを紛失してしまったようです! とんでもない失態です! もし出てこなければ、問答無用で失格となります。こんなハプニングが待っていようとは~! あまりにも、お粗末な結果です!」


 ラーメン・スタンプラリーの要であるスタンプカードを無くしたセリカは、泣きそうになりながらも必死で探し続けていた。周囲にいるスタッフ一同、そしてランサーやインプレッサまでもが、時間が経過してゆくにつれて無言となり、現実を受け入れる心構えとなってきた。


 とうとうカストロールカラーのレーシングスーツを脱いでまで探し始めたセリカを、ランサーは優しく制止するのだ。


「……おい、セリカ! もういいよ……」


 体育館で見守っている全校生徒達も、先程までの盛り上がりが、まるで嘘だったかのように()()となり、中には鼻をすすって泣き始めるクルマ娘まで出る始末だった。

 この悲惨な状況に、伊太利屋女学院のランチア・デルタHFインテグラーレEvoⅡだけは内心ほくそ笑んでいた。


『なあ~んだ! わざわざこちらから仕掛けなくても、このマヌケ娘は自滅したんだ……。意図せずに逆転勝利を掴めたけど、これも普段からの行いがいいから勝利の女神様が手を貸してくれたんだわ』


 ついにセリカは、崩れ落ちるように両手両膝を体育館の床に付けて叫んだ。


「わ、私……思いっきりやってしまいました! 会場の皆さんに、一緒に走った仲間に、どう申し訳を立てたらよいのか全く分かりません! 本当にごめんなさい!」


 会場のどよめきを押しやるように、赤いジャケットのクルマ娘達が動き始める。

 最初こそ呆然としていた伊太利屋女学院だったが、ランチア・ストラトスHFを筆頭とする3名の選手は、釈然としない面持ちながら、コメントするために歩み寄ってきたのだ。


「え~、何だか偶然手にした勝利のようで、いまいちスッキリと致しませんが、これもルールに従って勝ち取った正真正銘の誇りある勝利です。勝負の世界はシビアで、最後の最後まで何が起こるか分かりませんね。それがラリーの面白い所でもあるのですが……!」


 暗いムードに陥ったままと思われた、体育館の一角から拍手が伝播してきた。それは仏蘭西女学院や伊太利屋女学院の応援に駆けつけた生徒達が占める席からである。


「伊太利屋女学院のランチア・ストラトスHF選手! 堂々とした勝利宣言です。皆さんラーメン・スタンプラリーの勝者に拍手をお願いいたします!」


 会場となる体育館に、徐々にではあるが盛り上がりが戻ってきた。先程までの葬式のような雰囲気は、交流試合には似合わない。


 赤い象のぬいぐるみを抱えたランチア・ストラトスHFは、セリカやインプレッサ、ランサーに向かって微笑みながら、何かを伝えるために美麗な顔を近付けてきたのだ。



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