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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード0
6/85

プリンスとポルシェ 3


 名車女子学園のグラウンドにあるコースでは、連日クルマ娘達による模擬レースが行われ、近日開催される第2回日本グランプリに対する練習に余念がない状況であった。


「うりゃあああ!」


 掛け声だけは気合いの入っているプリンス・スカイラインGTも、そのうちの一人。さらさらの髪をなびかせながら激走し、紺のブルマから伸びるやや太短い足に力を漲らせていた。

 同じ体操服姿の五十鈴ベレットGTは、ストップウオッチの紐を手首に巻いたままプリンスに駆け寄る。


「すごいじゃん。最初は正直、酷かったけど、徐々にタイムを縮めていっている感じかな?」


「う~ん、去年は豊田勢に完敗だったけど、今年こそはやっぱ本気出さなくっちゃねえ!」


 突如、コースを一緒に並走していた豊田1600GTや脱兎山(ダットサン)ブルーバードSSSから動揺の声が上がった。


「ええ~! あのポルシェもレースに参加するの? もう優勝なんて無理じゃん」


「見た目通り、メチャクチャ速いって聞いたけど……」


 その噂の中心人物が、颯爽とグラウンドのコースに姿を現わした。チーターのように細長く、しなやかな四肢。速く走るために生まれてきたような体躯に、学園の生徒達は思わず絶句したほどだ。

 

「コース取り、タイム計測をお願いシマス」


 ポルシェ904は本番さながらに地面を蹴って走り出した。

 ピンと伸びた姿勢による無駄のない走り。見惚れるような美しいストライド。

 何と表現したらよいのだろう……。プリンスや五十鈴を始めとする日本のクルマ娘は、体操服の上着の裾をブルマの中に入れ込んでいた。腰回りが貧弱なためブルマに負けており、完全にカボチャパンツ状になっていた。

 だがポルシェ904は違う。恵まれた下半身を覆うブルマは、ボディラインに完全フィットしており、まるで競泳水着のよう。それらを隠すように上着の裾を下ろしているのが、興ざめなほどだった。


「胸も私より大きいし、大人のサイズだぁー」


 目を輝かせたプリンス・スカイラインGTは、切り揃えられた黒髪を自らの手で押さえつつ、見とれるようにポルシェ904の走りを目で追う。


「すごい……! やっぱポルシェさん、カッコいい!」


 グラウンドに金色した一陣の風が駆け抜けた。当然のようにコースレコードを更新するようなタイムだった事は、驚くに値しない。

 走り終えたポルシェ904は、汗をタオルで拭いながら息を整えていたが、コース外にプリンス・スカイラインGTの姿を見付けると、嬉しそうに駆け寄ってきた。

 それを目の当たりにした豊田1600GTと脱兎山ブルーバードSSSは、思わず顔を見合わせる。


「えー! あんな地味で目立たない子と友達なの?」


「学校でも羊みたいに大人しい奴と仲いいなんて、意外~」



 呑気に水分補給中のプリンス・スカイラインGTに向かって、ポルシェ904は満面の笑みを浮かべた。


「プリンス! 私の走りは、どうでシタカ?」


「うん、すっごく速かったよ! それに何て言うか……、とっても綺麗だったし」


「Danke schön! あなたの走りも、決して悪くはなかったデスヨ」


「そんなあ! ずっと見ていてくれたの? へへっ! 無理して褒めなくっても……」


 その言葉を聞いたポルシェ904は、急にかしこまってプリンスの赤くなった顔を眺めた。


「ど、どうしたの? ポルシェ……さん?」


 少し動揺したプリンスに、ポルシェは意味ありげな笑顔を捧げる。


「プリンス。……あなた、今度の日本グランプリに出場するのデショウ?」


「ええ、そのつもりだけど……」


「それはヨカッタ。実は私も日本のレースに参加したいと、前から思っていマシタ。そこでプリンス! 是非、私と勝負してクダサイ。あなたとレースで走る事ができて、私はとても嬉しいデス!」


「え、えええ~!?」





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