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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
46/85

速きこと風のごとし


 瞬きする間もなくトールゲートを越え、スタートダッシュから全開走行をキメる豊田セリカGT-FOUR RC! 彼女は、沿道に集まった観客の声援を一身に受けながら爆走する。わざわざ美容室まで行って染めてきた髪と、誇らしげなレーシングスーツが濃密な空気を切り裂く。


『……豊田2000GTさん、あなたを必ず守って見せます。どうかサインツコーチ、見守っていて下さい。今のコンディションは最高! 私を応援してくれる全ての生徒や地元の人達! 私は期待に応えちゃいますよ~!』


 万感の思いに浸るセリカは、走る喜びに満たされてゆく。ハイハイハイ、正にランナーズ・ハイの状態である。そんなモニターに映し出される勇姿を、かつてない敵意剥き出しの視線で凝視するクルマ娘がいる。

 正確無比な時間の守護者、伊太利屋女学院チームのリーダーにしてラストランナー、そう! ランチア・ストラトスHFである。


「私からエレファンティーノを奪おうとするなんて……いい度胸してるじゃない! 絶対に勝利してTOYOTA2000GTさんと付き合ってみせます!」


 まるで現代アート、芸術的とまで思える美しいレーシングスーツを翻し、今か今かとスタートを待つ。


「出ました! 伊太利屋女学院の最終兵器! 赤きラテンの血の象徴! ランチア・ストラトスHFが発進してゆきます! 速い速い、前走に追い付いてしまいそうです」


 発進加速は明らかにセリカに劣るものの、ラリーマスターの名に相応しく、無駄のない走りを披露するストラトス。ラリー競技のために特化したクルマ娘と、噂される実力は本物だった。


「……伊太利屋女学院の皆で繋いできたポイントは200ポイント。対戦相手は現在210ポイント……十分に逆転を狙えますわ!」


 その時、ラリーを邪魔する不届き者のロードバイクがストラトスに迫ってきた。


「おお~っ? ネエちゃん、メチャ綺麗だね! 速すぎるよォ! どこまで行くの~?」


「もう、うるさい!」


 ストラトスの肘鉄がヘルメットに入った瞬間、ライダーは自転車ごと転がっていった。まるで何事もなかったかのように、続く舗装道路を正確無比に攻め、リエゾン区画を過ぎた後、ついに荒れたコースのスペシャルステージに差し掛かった。


「田舎の凸凹道は、体重の軽い私の見せ場ですね」


 ストラトスが持つしなやかな脚は、サバンナのトムソンガゼルを思わせた。そのダートをものともしない力強い走りで、盛大な砂煙を残してゆく。だが、それ以上に拍手喝采を浴びながら前を加速していく影が、モニター上に大きく映し出された。


「セリカです! 最後の走者であるセリカGT-FOUR RCが、皆の期待を胸に荒れ地を進みます! 集計されたポイントは、相手方を僅かに上回っているようです。このまま逃げ切る事はできるのか~?」


 学園に戻ってきた途端、聞こえてくる耳障りなナレーションの声に、トップの走者であったランチア・デルタHFインテグラーレEvoⅡの表情が曇った。


「う~ん……不本意だけど、これはやるしかないわね。我々の名誉を汚される訳には、いかないっての……」


 

 

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