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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
44/85

最後の走者


 スタートゲートに向かう豊田セリカGT-FOUR RCが、白いレーシングスーツとシューズの最終チェックを済ませた後、ウォーミングアップを始めた。赤と緑のストライプが映えるカストロールカラーが、学園の体育館に設置された大型モニターにはっきりと映し出される。


「やっべえええ! ウチらのスーパースターが登場だ! 気合い入れろおおおっ! セリカ-!」


 友人の本田プレリュードと日産シルビアを中心とする応援団が立ち上がり、モニターに向かって声援を送り始めた。それが全校生徒に波及してゆき、台風のように渦巻く盛大なセリカ・コールにまで発展していった。


「……サインツコーチ、きっとどこかで見ていてくれているはず……ですよね! 私、最後までやり遂げますから!」


 セリカが決意を胸に、華奢な拳を握り締める。その目には今まで見られなかった、走りに飢えたクルマ娘だけが持つ、内燃機関に湧き出す爆発的なパワーとトルクを思わせる情熱の光が宿っていたのだ。

 無機質なモニター越しからでも伝わるような熱すぎる覇気に、ナレーターの松田コスモスポーツは思わず口をつぐみ、生徒会長の豊田2000GTは万感の思いで溢れる思いを口にする。


「今回、一番の成長を遂げたのは三名のうちで、どなたか……優劣付けがたいですけど、豊田セリカさん……私は、あなたがトップだと信じています!」


 やや遅れてランチア・ストラトスHFが姿を現わした。今まで気付かなかったが、愛玩している赤い象さんのぬいぐるみ……ランニング・エレファントを信頼するラリー037に託したようである。


「ふふっ! ラリーマスターで、生ける伝説である……この私が二番目ですか? 仕方のない事とはいえ、後塵を拝する屈辱を見事、ここで晴らしてみせますわ!」


 セリカとはまた一味違う、白いレーシングスーツにデザインされた赤と緑のイタリア国旗を思わせる洗練されたライン。最初からストラトスのために用意されていたかのように完成している。そしてカチューシャで留めた金色のロングヘアが、その美少女度を満点に引き上げていると言っても過言ではない。


「フェラーリと同じ心臓が、昂ぶってまいりましたわよ!」


 一方でスタート前なのに、微塵も緊張感を見せないセリカGT-FOUR。彼女のランチア・ストラトスに対する印象は、微塵も変わっていない。


「ストラトスさん、とっても綺麗……それに速そう」


「当然ですね。あなたも量産大衆ベースの割には、結構イケてますわよ」


「でも、何だか今日は負ける気がしません」


「何ですって!?」


「負ける気が、全くしないんです! まるで、走るクルマそのものになったようです!」




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