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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
40/85

トラブル発生


 先行するランサーエボリューションⅥは、ワイヤレスイヤホンに無線で送られてくるナビゲーション情報を拾ってゆく。


「――総距離は6.18kmで区間距離は0.50kmです。……次に見えてくる交差点を左折します。歩行者と自転車の横断に注意して下さい。制限速度は時速40㎞……」


 調子よく一般道を駆けてゆくが、さすがに完全通行止めまではしていない。教員とボランティア、有志生徒達の懸命な誘導によって競技が運営されているのである。


「ここのつづら折りを抜ければ農道に出て、一気に加速だ~!」


 農道には自動車も歩行者もいない。だが一瞬の油断が大きな損失を招く事もある。


「――ここまで完璧なスケジュールをこなすランサー! だが前方の原付に気付いているのか~?」


 コマ図には駐車しているトラクターも、その影から飛び出してくる原付も予想されていない。

 

「やっべ~!」


 速度が乗ったランサーエボリューションⅥは、突如現れた原付を回避するために急カーブした。


「ダメだ~! 避けきれねえ~!」


 農道脇のコンクリートの側道には小石がゴロゴロしており、うっすらと濡れていた。


「うわああああああ~! どいてくれええええええ~!」


 その素晴らしい反射神経と判断力で、ランサーエボリューションⅥは、原付に衝突する寸前にギリギリかわしてみせた。だが足を滑らせてしまったのか、元の道路に復帰することはできなかった。


「何という事でしょう! ランサーがコースアウトしました! 彼女は大丈夫なのか? 畑の中に突っ込んでしまったぞ!」


 そのナレーションが豊田2000GTの心臓を貫くと、思わず立ち上がって全身を震えさせた。


「ラ、ランサーさん!」


 野菜畑は連日の雨により、一歩でも踏み入れたら泥まみれになる事は確実である。

 ドローンからの映像は、黒土を派手に吹き飛ばしながら転がるランエボの状況を捉え続けていた。


「……ちきしょう! 原付の野郎、逃げやがったな! 死ぬかと思ったぜ!」


 全身に泥を被ったランエボは、土に足元を取られながらも、ゆっくりと立ち上がって見せた。そこに駆け付けてきたギャラリーが手を伸ばし、泥濘からの脱出を助けてくれたのだ。


「ありがとよ……どうも擦り剥いたぐれえで、骨に異常はなさそうだ」


 紅白のレーシングスーツを汚したランエボは、その場で上下にジャンプして皆に無事を知らせたのだ。


「どこにも怪我なんかしてねー。アスファルトで転倒よりは、よっぽどマシだぜ」


 撮影ドローンに手を振った、ちょうど1分後。高速で迫ってくるクルマ娘の影が見えてきた。

 当然のごとく、ランチア037ラリーのマルティーニ・ストライプだ。


「へへ~ん、キャベツでも収穫してな! あばよ〜!」


 そんなランエボを横目に、わざと盛大に埃を撒き散らしながら通過してゆく。


「……タイムロスは何分だ?」


 救護班にリタイア宣言を断った後、ランエボは時計の針に目を落とし再スタートを切る。乾いた泥が靴から飛び散り、足跡は連続して道路を染めていった。






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