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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
37/85

第一チェックポイント

 ラーメン屋の女性店員が怪訝そうな顔で伊太利屋女学院チームに訊いてきた。


「茹で加減はどうなさいますか? おすすめはバリカタですが、お急ぎならハリガネになさいますか?」


「ハリガネ? ワイヤーをどうするんですか?」


 ランチア・デルタとラリー037が、ハリガネをスマホで検索しているうちに豚骨ラーメンが出てきた。

 とろみのある白濁したスープにシンプルな具……ネギ、チャーシュー、海苔にキクラゲ……どれもイタリア娘にとっては、初めて見る未知の食材ばかりである。丼から立ち上る湯気にデルタは、恐る恐る顔を近付けてみる。


「くっさ! 何なの? この獣臭は!」


「お客さん、九州の豚骨はこんなものですよー」


 ニコニコ顔の店員に対し、デルタとラリー037は、矢継ぎ早に質問攻めにする。


(ポルコ)の骨を使った料理? オッソ・ブーコみたいなものかしら?」


「このキクラゲって何ですか? それに黒い紙みたいな海苔って何ですか?」


 黒シャツの店員は、興奮気味の二人に困惑した。


「……ははは、英語で何ていうんだろ?」


「ノー! 我々にはイタリア語で!」


 そこでランチア・デルタは、慣れない箸からスプーンとフォークに切り替える。


「それにしても……どんなパスタよりも細い! 全く別の食べ物じゃない」


「急げ、デルタ! もう躊躇している場合じゃないぞ!」


 フォークで素早く巻き取った麺に、デルタがスプーンごと口を付ける。


「あ、熱ィィィいいい!」


 近くに控えていた名車女子学園側の第二走者である三菱ランサーエボリューションⅥが、思わず眉をひそめて言う。


「アンタら、ちょっと騒ぎすぎ! 貸し切りじゃねえんだよ、他の客が逃げちまうじゃねーか」


「そんなに言うんなら、ハンデをよこせ!」




 その頃、昴インプレッサ22B-STiバージョンは、ランチア・デルタが走ってきた轍をトレースするように激走していた。沿道から、地元の声援を一身に受けながら走る。


「がんばれ―! 青い服の、ねーちゃん!」


 女児から手を振られたインプレッサは、親指を立ててウインクする。コマ図通りに走るインプレッサは天体の運行のごとく正確無比である。


 その頃、体育館にいる豊田2000GTはナレーターと共に、モニターから映し出されるリアルタイムの映像を、食い入るように見ていた。


「そう、早すぎても遅すぎてもいけません。ナビゲーターからの指示に従いながら、先の先を読んで状況判断しながら進むのです」


 ついにスペシャルステージに差し掛かった。インプレッサは全力のタイムアタックに挑戦する。


「やああああああ――――――――――!」


 前傾姿勢になった本気の走りが爆発した。全ての視界が後方に流れゆき、並走するバイクも置き去りにされる。風切る音が集中力を研ぎ澄まし、ナビゲーションの音声だけを拾う。

 スマホ撮影していた見物客はインプレッサの姿を見失い、誰も捉え切れないスピードに舌を巻いたのだ。


 


 

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