響けカンツォーネ、届けローマまで
私立名車女子学園は親善試合の日に合わせて、校内に洒落た飾り付けを施していた。至る所にイタリア国旗と日の丸をモチーフにした横断幕やのぼりが風に揺れている。
そんな中、異彩を放っていたのが、校内を堂々と練り歩くエキゾチックな三人組の姿だったのだ。シックなイタリアンレッドに染め上げられた制服の胸には、誇らしげに伊太利屋女学院の校章が輝いている。
赤い象のぬいぐるみを抱えて先頭を行くランチア・ストラトスは、カチューシャで纏めた長いブロンドヘアを指先で弄びながら、嫌悪感を思わせるような表情を浮かべていた。
「日本は相変わらず美的センスが酷いわね。雑多な印象で、一貫性やテーマがないものだから、こうなるのよ」
答える小麦色したランチア・ラリー037は、淡い栗色の髪が長身に映えていた。
「姉さん、それは仕方ないよ。芸術を表面上しか理解してないし。それに西欧文化に触れた歴史が、浅すぎるから」
「ふん……。一度ヨーロッパを旅して、大いにショックを受けるといいわ」
偉大な二人の姉達に埋没しがちなランチア・デルタHFインテグラーレ・エヴォルツィオーネⅡは、飾り気ないブラウンショートヘアが、裏表のない性格を表していた。
「う〜ん、サル真似の模倣で成り上がった国だから許してやってよ。でもよく見ると、生徒達のレベルは結構高いみたいよ」
妙な視線を感じた年長組の五十鈴117クーペが、思わず廊下を歩くスピードを緩めて立ち止まった。彼女は校内でも有名な美少女だ。チャンスとばかりにランチア・デルタが駆け寄る。
「ハジメマシテ。体育館はどこになりますか? それより、あなたの黄色を基調としたファッションは、超イケてますね!」
「はあ、ありがとうございます。体育館なら……」
「この学校は、制服の他に私服も認められているのですね~。どこのブランドなのでしょうか?」
「――! よくぞ訊いてくれました。カロッツェリア・ギア時代の名匠ジウジアーロのデザインなんですよ。しかもハンドメイドです」
「な、何と! 何たる偶然! 私の私服やレーシングスーツも原型を留めていませんが、ジウジアーロデザインなんです! まるでデザイナーの導きに、お互い引き寄せられたような……」
意気投合する二人にランチア・ストラトスとラリー037も興味を示し始めた。
「ほう! フィアット・ディーノ・クーペに似て、誰が見ても美しい。いいじゃないか。もうカップル成立だな」
「姉さん、私はあの娘がいいな!」
目ざとくランチア・ラリー037が見付けたのは、ゴージャスな雰囲気の私服を着こなすグラマラスなクルマ娘、オーテック・ザガート・ステルビオだった。
「そこの君だよ、君ぃ! 名前は何ていうの? そこはかとなく、美意識を刺激されるような服装だね!」
「ステルビオと申します。……ふふっ、お分かりですか? この服はザガートのデザインなんです」
「おお〜! その巨乳、いやダブルバブルの意匠は正にザガート! この学校には、こんな素敵な娘もいるのか!」
これにはランチア・ストラトスも感心してしまった。
「へぇ! 我が国のステルビオ峠の名を冠するなんて……ただ者ではないわね、あなた?」
「いやぁ。中身は日産レパードでして、少々恥ずかしいですぅ」
「そんな事はありません。どうでしょうか? ここにいるラリー037と付き合って、更なる高みを目指してみては?」
その時だった。リーダーであるランチア・ストラトスの美少女レーダーに、強烈な反応が示された。
「はうっ! あの上品なクルマ娘は……!」




