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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
26/85

エボリューションⅡ


「毎日隣でトレーニングしているというのに……ライバルの声も分からないんですか? ランエボさん」


 マクレーコーチと共に現れたのは、更に一皮剥けた昴インプレッサだった。


「最近、鍛える事が苦痛などころか、むしろ喜びに変わってきているのですよ。私は強心臓を手に入れ、しかもスタイルに磨きがかかりました。今日から私の事をインプレッサ22B-STiバージョンと呼んで下さい!」



・昴インプレッサ22B-STiバージョン


 スピード:A


 スタミナ:B


 パワー:A(280馬力)


 人気:S


 その他:レア度が高い。



「きゃあああ~! 昴さん!」


 なんと成長に伴い、インプレッサにも追っかけが登場した。以前の地味な天文部時代には考えられなかった事である。


「何だ、何だァ? おもしれェーじゃねえか! このオレと張り合おうってのか?」


 ついにランエボの本気度に火が付いたようだ。インプレッサ22B-STiバージョンは真面目に挑発する。


「排気量UPだけじゃなく、ビルシュタインの脚を手に入れた私に敵うかしら?」


「言うじゃねーか! やったろうじゃん! ――マキネンコーチ、お願いします!」


「ヨシ! ツイテキナサイ!」


 クルマ娘にしか扱えないスーパートレーニングマシーンが登場した。流れる水中で自転車を漕ぎながら、浮かないように手足に鉛のアンクルウエイトを装着するハードメニューだ。スクール水着に着替えたランエボは、躊躇せずプールに飛び込む。


「スタート……! うおおおおおお!」


 あまりに壮絶な光景に豊田2000GTとセリカは呆然と見守るだけだった。


「よっしゃあああ! ランサーエボリューションⅡになったぜ!」


「マダマダ、イケマスヨ-!」


「もういっちょ! おりゃああああああ! ランサーエボリューションⅢの完成だ~!」


「マダ、エボガ足リマセーン! 周遊コースヲ走リコミマショー!」


 ランエボはプールから飛び出すと、アンクルを外しシューズをはいてスク水のままグラウンドを走り回った。


「これならどうだ! ランサーエボリューションⅣだ!」


「モット! エボ、エボ、エボー!」


 スク水が熱で乾き切り、汗で再び濡れる頃、隣に青のブルマ体操服姿のインプレッサ22B-STiバージョンが加わった。


「ランエボさん、私もお供しますよ!」


「てめえが付いてこられっかぁ? そりゃあああ! ランサーエボリューションⅤでい!」


 何やら独りで感動しているマキネンコーチが、メガホンを手に涙声を振り絞った。


「最後ニ、アノ山ヲ登リマショ-! エボエボエボオオオ!」


 ついに我慢できなくなったセリカが、靴をシューズに履き替えながら制服姿のまま走り出す。


「ちょッ!? セリカさん、何もあなたまで!?」


「会長、ちょっくら行ってきます! すぐ戻りますんで~」


 ランエボを先頭に、インプレッサとセリカが山頂を目指してアスファルトの道を駆け抜ける。走る本能を自覚したセリカは、痺れるような快感をインプレッサと共有し、全身が沸騰するように感じた。

 公道をスク水とブルマと制服姿の女子高生が、凄まじいスピードで走る姿に、誰もが振り返る。ひんやりと澄んだ山の空気が、循環器を通してランエボの身体中を満たしてゆく。

 どのくらい経ったのだろう……マキネンコーチの携帯にランエボからの着信があった。


『コーチ! やりました! ついにランサーエボリューションⅥになりました!』


『ヨクヤッタ! アナタニハ、トミ・マキネンエディションノ称号ヲ与エマショウ』



・三菱ランサーエボリューションⅥ トミ・マキネンエディション


 スピード:A


 スタミナ:B


 パワー:A(280馬力)


 人気:A++


 その他:アクティブ・ヨー・コントロールを手に入れた。



 いつしかサインツコーチも現れて、マクレーコーチ、マキネンコーチと肩を組んで、お互いの成果を讃えあった。


「ふぅ……何て人達なの……」


 豊田2000GTには、聞こえてくるはずもないクルマ娘の雄叫びが、山頂からこだましてくるように感じられたのだ。




 




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