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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード2
21/85

二人目はインプレッサ


 セリカがトレーニング開始してから間髪入れず、豊田2000GTは私立名車女子学園の文化系部活動が行われている部室棟へと単独で向かう。

 

「さて、あの方はもう、いらっしゃるかしら?」


 夕暮れが迫る中、豊田2000GTが少し迷いながらも辿り着いたのは、最上階にある天文部のドア前。周囲には、あまり人の気配もなく、うす暗い廊下は少々不気味だった。


「ごめん下さい。生徒会長の豊田です」


 ノックすると、訝しげな顔をした少女……(スバル)インプレッサがひょいと顔を出した。体育会系が幅を利かせる学園内において、あえて地味目の天文部を選択している事からも分かるように、意思の強さを物語る瞳を眼鏡の奥から覗かせている。しかも馬鹿にされないように、外見には人一倍気を遣っているような可愛らしさだった。


「これは驚いた。会長自らが部室まで訪ねてくるなんて……。今日は一体何の御用でしょうか?」


 切り揃えられた完璧ボブカットが印象的なインプレッサは、明らかに警戒している様子が手に取るように分かる。


「事前に連絡もなく、突然顔を出して驚かせたかしら? だとしたら、ごめんなさいね。実は、あなたにお願いがあってここまで来たのです」


「今からプレアデス星団の観測に忙しいのですが……。まあいいでしょう」


「おうし座にある有名な星団ですね。日本ではズバリ、すばる……たしか、あなたの親戚のアルシオーネさんは、その中の最も明るい恒星にちなんで名付けられたとか……」


「さすがは会長。あらゆる方面に博識でいらっしゃる……ようこそ我が天文部へ」


 整理された部室には天体望遠鏡の他に、綺麗な星空の写真が誇らしげに飾られていた。しばし豊田2000GTは、時間を忘れて昴インプレッサとロマンチックな星々の話をするのだ。


「……さて本題の伊太利屋女学院との大事な一戦なのですが、どうかあなたにも参加していただきたいのです!」


「はい、いいですよ」


「えっ? 今、何と?」


 豊田2000GTの懸念をよそに、昴インプレッサは意外にもすんなりとOKの返事をくれた。力んだ本人が、思わず拍子抜けするほどに。


「豊田家には色々と借りがありますからね。ウチのBRZは豊田86さんと双子の姉妹でもありますし」


「そうですか! ランチアとの勝負に参加してくれると!」


「それにしても、目立たない私の走りが結構速いってよく知っていましたね」


「もちろんですわ。早速明日からトレーニングを開始しましょう」


「やると決めたからには、全力でやらせてもらいます」


 超が付くほど真面目なインプレッサは、立ち上がると生徒会長からの激励を一身に受けたのだ。すると同じような眼鏡をした部員達が奥から出てくる。


「おお~ッ! 部長、頑張って下さい!」


 部室にいた大柄のレガシィとフォレスターは目を輝かせると、拳を握り締めてインプレッサにエールを贈った。ランチアとの勝負の日は近いが、頼もしい仲間が増えた瞬間である。







 

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