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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード1
16/85

ABCの決着


 AZ-1はカプチーノのインコース側にできた狭い隙間から、一気に差してトップに躍り出た。


「もらったあああ!」


 周囲の学生達のどよめきが、湧き上がるような拍手に切り替わる。


『カーブの終わりからゴールまで、ここで急加速……!』


 だがここまでだった。グラウンドに薄く積もった砂に靴底が滑り、AZ-1はバランスを崩したのか、転倒してしまったのだ。

 悲鳴混じりの歓声の中、よろめくAZ-1を尻目にカプチーノとビートが次々とゴールに到達してゆく。


「何てこと……、あと一歩だったのに……!」


 ゴールラインには先に着いたビートとカプチーノが待っていてくれた。


「AZ-1、ナイスファイト!」


「イイ走りでしたよ!」


 膝を擦り剥いたAZ-1に、左右から肩を貸してくれた二人。学園長と生徒会長を始め、勝負の一部始終を堪能したクルマ娘達からの、惜しみない拍手に包まれた瞬間であった。

 サッカーボールを小脇に抱えた大発コペンが、リボンを結んだ本田S660と手を繋いでやって来る。


「最後まで三人共、お見事やったわ~」


「お姉ちゃん、カッコよかったよ。AZ-1さん、ケガは大丈夫?」


「……ああ、ちょっと血が出ただけで、何ともないよ。ビートの妹さんは、いつもカワイイね」


「ああ、私の自慢の妹だよ」


「えへへっ!」


 だが、一着となったカプチーノは、手持ちの消毒薬と絆創膏でAZ-1を応急処置しながら遠慮なく言った。


「こんな底のすり減った古い運動靴じゃあ、ダメですよ。私みたいな新品に履き替えないと」


「そういう事か~。履き慣れた靴がいいと思ったんだけど」


「ところでAZ-1! 早速ですけど、ビリになった人はトップになった人の言う事を、何でも聞いて貰いますよ」


「え~、マジで~? まあ、約束は約束だけど~」


「じゃあ、決まりですね! ウフフ……」


「何だよ、その不気味な笑いは……」

 



  ☆ ☆ ☆




「おっはよ! 諸君!」


 翌日、学校に登校してきたAZ-1を見て、クラスの皆は目を丸くした。

 ピン留めの、おでこを出した髪型も、細かいアクセサリーも何もかも、カプチーノとお揃いにしたAZ-1が教室に現れたのだ。


「どうしたの……AZ-1?」

 

 周りのクルマ娘達が驚いたような表情で、困惑の声を漏らした。ビートはそんなAZ-1を一目見るなり大爆笑した。


「え~と、ボクはオートザムAZ-1じゃありません。……今日からカプチーノの妹になりました。ボクの事、鈴木キャラと呼んで下さいね……」


 すぐ後から続くように教室に入った鈴木カプチーノは、最前列に座る本田ビートに言った。


「私、ずっと前からビートの妹さんみたいな、カワイイ妹が欲しかったんだよね」


「うんうん、ずっとそう言ってたね」


 改名した鈴木キャラは困ったような、それでいて嬉しそうな悲鳴を上げたのだった。


「そうだったのお姉ちゃん?! でもカプチーノ姉ちゃんも十分、童顔で可愛らしいけど……!」


 学園のマスコット的なクルマ娘トリオは、今日も小さな子供みたいに朝っぱらからハイテンションぶちかましだったのだ。


 





 

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