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クルマ娘キュートレーサー  作者: 印朱 凜
エピソード1
14/85

ABCの誓い


 授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると、校庭のグラウンドに自然と人だかりができてきた。

 最近になって生徒会長に選出された豊田2000GTは、今日も優雅に長い黒髪をなびかせながら階下を颯爽と歩いていた。


「あら? あれは一体、何の騒ぎなのかしら?」


 様子を伺いに向かうと、校庭にはすでにエレガンスを身に纏ったようなスーツ姿の先客がいた。この私立名車女子学園の学園長、大徳寺有恒その人だった。


「これはこれは、ご機嫌麗く存じ上げますわ、大徳寺学園長!」


「おお、誰かと思えば君かぁ! 見たまえ、面白い事が始まりそうだよ」


「こ、これは!? 何ですの〜?」


 勝負事にすぐ熱くなる性分のクルマ娘達が、三人娘を取り巻いて声援を送っている。


「お姉ちゃ〜ん! 頑張って〜!」


 よく見ると中等部一年生のキラキラした本田S660が、小学生のような声で姉のビートを応援している。

 いつも澄まし顔の豊田2000GTは、ちょっと憤慨して学園長のすぐ隣で叫んだ。


「また、あの子達ね! 競走で勝手にグラウンドを占有するのは禁止と、この前説教したばかりだというのに!」


 上品にプンスカする彼女に対し、学園長は琵琶湖のように広い心で高笑いするのだった。


「私も元ドライバーだったから分かるが、クルマ娘は走るために生まれてきたようなものだ。他校ならともかく、ここでは自由に走らせたまえ」


 そう言いながら学園長は、シガーの先っぽをカッターで切ると、デュポンのガスライターで火を付けた。紫煙をくゆらす姿は正に英国紳士のようである。


 なぜかこの時、例の英国諜報員のテーマソングがBGMで聞こえてくるような気がした。


 すかさず豊田2000GTは、通学カバンからワルサーPPK型の水鉄砲を取り出すと、学園長に顔射してシガーの火を消してしまった。


「学園長! 校庭での喫煙は御法度です」


「ハハハ……私とした事が! どうか君、見なかった事にしてくれたまえ」



 校庭の隅に設置されたスタートライン上には、すでにビートとカプチーノとAZ-1が並んでいた。特にビートは黄色のレーシングウエアに着替え、気合いが入っていた。


「何ですか!? そこまで、この勝負に懸けてるの?」


 カプチーノがジャージ姿で目を丸くしていると、AZ-1は少しでも動きやすく空気抵抗を減らすためなのか、学園指定のブルマ姿となった。


「ええ~! あなたまで……!」


「何言ってんのカプチーノ! ボクみたいに脱ぎなよ」


 ――Cは結局Aに無理矢理脱がされて、ダブル・ブルマとなった。初夏とはいえ、まだ夕方は肌寒くCは、くしゃみをしてしまう。靴はなぜか履き慣れていない新品を選んだ。

 不敵に笑ったBは、クラウチングスタートの用意をしながら胸を張って宣言した。


「さあ! 一発勝負といこうかね!」



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