出会い アラン・フリード
洞窟を出た先には、見たことのない草花や動物・・・嫌、魔物たち。洞窟を出ただけで別世界だと実感できる。そんな中、一つの疑問が浮かんだ。
「凄いけどさ・・・大丈夫なのか? 魔物って襲ってきたりとか」
《大丈夫ですよ。世界に神に襲う者など殆んどいませんから。知能があれば》
「え?」
そして案の定、今熊の魔物に追いかけられている。大きくて、速くて、何か凄い殺気まで感じるだが・・・
「なんだよこの魔物⁉ てか熊ってこんなに速いのか⁉」
《ですがマスター。解析した所、マスターの世界の動物「ヒグマ」は最大時速六十キロで走ることができるそうですよ。まあ、この熊の魔物の方が断然速いですけど》
「そんなのどうでもいいからどうすればいいんだよ⁉」
有能かと思ってたが、真面目すぎてどうでもいいことまで解析するルシア。良いのか悪いのか良く分からなくなってきた・・・
《す、済みません・・・では、戦うのはどうでしょう?》
「戦う? そうだ! 魔法とかまだ使ってないじゃん!」
完全に異世界の風景に見とれたり、熊に追いかけられてパニックになったりして念願の戦いを忘れていた。魔法やスキルを使わずに、何が楽しいんだ! 前世の俺の夢を達成しなければ!
「で、どうやるんだ?」
《魔法でしたら想像するだけでできます》
「想像・・・おし!」
なんとなく火の球を想像した。アニメで言う「ファイヤーボール」的な感じで。そしたら、なんと手からアニメと同じファイヤーボールが出て、熊を焼き払った。ここまでの威力だとは・・・凄すぎる。
《初めて獲得した魔法が最上級魔法のファイヤーボールだとは・・・流石マスターです》
「・・・ん? さては普通はできないのか?」
《はい。普通は詠唱が要りますがマスターなら可能かと思ったので・・・》
「ま、倒せたし良しとするか」
こんな感じでルシアと会話をして歩いていると、木の陰から少女が現れた。その姿は美しく、一瞬見とれて終った。姿は青く輝く銀髪、白く美しい肌、俺と反対で濃い赤色の瞳。まるで吸血鬼だ。
「うわぁ⁉」
「⁉」
少女は俺の顔を見るや剣を抜いた。
そして、凄い速さで何度も何度も俺に剣を振って来た。
「ちょ⁉ 何だよ急に⁉」
「て、敵じゃない?」
少女は剣を下ろし、弱々しい声で問いかけて来た。良く見るとその目は悲しさに満ち溢れている。
「ああ。戦う気なんてない」
「す、済みません・・・」
それから、俺たちは立ち止まって黙り込んでしまった。と、取やえず挨拶か。
「えっと・・・こ、こんにちは」
「⁉」
すると、少女は急に涙を流した。その姿を見て動転して終った。
「ど、どうしたんだよ⁉ 俺、もしかして悪いことしたか? それだったら謝る。謝るから・・・泣き止んでくれ!」
少女は首を横に振った。
「違うんです・・・やっと同郷の転生者に会えたから嬉しくて・・・」
「ど、同郷ってことは日本人?」
少女は頷くと、涙を拭って頭を下げた。
「私はソフィー・マルディーナです。先程は済みません。私は罪人だから色々な人に追いかけられてるんです。なので兵士の人だと思ってしまい・・・」
「俺はアラン・フリードだ。顔を上げてくれよ。別に気にしてないしさ。後、罪人? 何か悪い事でもしたのか?」
すると、ソフィーさんは黙り込んだ。
「話してくれよ、俺が何か助けになれるかも知れないしさ」
「わ、分かりました・・・」
そしてソフィーさんは話してくれた。悲しく、辛い過去を。