転生 アラン・フリード
初投稿ですが、宜しくお願いします。
平凡な会社員だった俺は、ある男に殺され人生を終えた。
そして、新たな生活が始まったのだ。神としての生活が――
俺には朝の習慣がある。
まず、出勤の準備を終え、朝食を作る。その後、興味のないニュースをつけ、ぼーっと見ながら朝食を済ませ出勤する。それが俺のいつもの朝の習慣だ。
だが、今日はニュースに無関心な俺でも箸が止まるニュースが放送されていた。そのニュースはというと俺の大大大フォンの歌手のニュースだ。
当然、テレビに写真が出された瞬間、すぐさまニュースに耳を傾けた。
「速報です。世界が誇る歌手とされる、小鳥遊千尋容疑者が連続殺人を犯しました。千尋容疑者は逃走中に急に倒れ、死亡しました。理由は分からず、今の所突然死とされています。詳しい内容は情報が入り次第お伝えします。次のニュースです」
「マジか! 千尋さんが・・・」
大大大ファンの歌い手というのは、この小鳥遊千尋さんのことだ。ライブも行ったし、CDも全て買い占めた。穏やかで優しいあの千尋さんが連続殺人というか、人を殺すなんて考えられない。
悲しみに暮れながらも出勤するが、気持ちが乗らない。
すると、近くから突然悲鳴が上がった。それと同時に目の前の人々が次々に倒れて行った。
恐怖で足がすくみながらもその場から逃げようとするが、目の前には男性が包丁を向けてが走って来ていた。
「逃げられない」諦めかけていると男性がこちらに目をやった。その顔を見るや否や体が動かなくなった。
だって、その顔は半分黒く溶けて、薄気味悪い笑みを浮かべているのだから。まるで人間ではなく「悪魔」だった。
そのまま逃げることもなく男性に刺された。生まれて一度も感じられなかったその痛みに耐えられず筈もなく、その場に崩れた。
そのまま意識は飛び、目の前は暗くなった。
目を覚ますと、大きな洞窟の中にいた。
さっきのことを思い返すと、ちゃんと記憶がある。死んだと思っていたが、危機一髪で死を逃れたという可能性だってあるやもしれない。
だが、目の前には見たことのない宝石のような石や変な形をしている草たち――
「これってもしかして念願の異世界転生か!」
近くにある池を覗き込む。そこには俺ではない男が映っていた。
輝く金色の髪に淡い青色の瞳、さらっとした体つきのイケメンな少年が立っている。これは絶対に俺じゃない。確実に異世界転生だ!
「これが俺・・・イケメンだな!」
俺は興奮して辺りを走り回った。
すると、「――様」という女性の声が聞こえた。流石に自分じゃないと思ってたので最初は無視していた。
が、その声は俺の名前「結城智也様」と呼んできた。様は意味不だが、一応「俺に何か用ですか~」と叫んだ。
すると、足音が近づいて来た。
そして、角から俺と全く同じの姿の奴が出て来た。
「ど、ドッペルゲンガー⁉」
「違いますよ。何言ってるんですか? まあ、智也様の分身なので体は同じですよ」
「分身」という言葉で異世界だと確信した。
まあ、忍者がいるとしたら出来るかも知れない。
それにしても、こいつが呆れてる理由が分からない。別に思ったことを言っただけなんだが・・・
すると、俺の分身は会釈をしてきた。
「初めまして。私は智也様の守護神です」
「え? 守護神?」
「簡単に言えばスキルですかね?」
「普通スキルに自我なんてありませんよね」
俺が見て来たアニメや漫画では、そもそも喋るスキル何て見たことなかった。まさに「AI」だ。そんなものに自我があるとしたら最強だろう。
「普通はありませんが、智也様が普通じゃありませんから。何せこの世界の最強種族、神族なんですから」
「か、神だと⁉」
神は”世界における最強の存在”そんなの誰でも分かることだ。そんな神に平凡な社会員だった俺がなるとは・・・
「でも、何で俺が神に?」
「智也様は誰にでも親切で優しい、お方。周りの人に流されず、自分の意思を尊重するその姿。それが他の世界の神に認められたのです!」
この守護神さんとやらは、とても嬉しそうに話してきた。俺には何が嬉しいのか理解できない。それに、前世ではその尊重する姿が嫌われる原因だったんだが・・・
そして、今気が付いたが、守護神さんの女性の声に男性の顔は妙に合わなくて気持ち悪い。声がとても綺麗だから俺みたいな体ではなく、もっと美人な体を持って欲しいものだ。
「取やえず、智也様と合体しても良いですか?」
「合体? そんなの出来るのか?」
「はい。分身体にただ入ってるだけですから。では!」
すると守護神さんは消え、何かが俺の中に入るような感覚になった。
そして、頭の中にはさっきまで聞いていた守護神さんの声が聞こえた。
《これで合体完了です。智也様・・・いえ、マスター。これから宜しくお願いします!》
「ああ、宜しくな」
《あ、念じるだけで話せますよ》
(えっと・・・こんなんでいいのか?)
《はい!》
心の中で喋るのは違和感があるが、別に嫌ではないし考えないことにした。
その後、守護神さんにこの世界のことを少し聞いた。
そこで、なんとこの世界には沢山の転生者がいるということが分かった。
理由は、昔の神が俺のいた世界を偶然見て、とても気にったらしく、新たな文化を取り入れさせ発展させるために色々な異世界から転生させるようにしたそう。そしたらいつの間にかポンポン転生者が出て来たらしい。少し考えが軽い気が・・・
(転生者か・・・もしかしたら日本人がいるかもしれないしな)
《そうですね。では、マスター。私がマスターに名前を付けますので、マスターは私に名前を付けて下さい》
(名前? 何でだ?)
《この世界とあちらの世界では人物が違います。結城智也という人物は魔王ルシファーに殺され、お墓の中ですから。今は私が呼んでいるの名前は偽名になります》
(そ、そうか・・・ん? 俺、魔王に殺されたのか? 人間じゃなくて?)
そう思えば、男性の顔が恐ろしかったのを覚えている。あの笑顔、あの溶けた黒い顔。思い出すだけで鳥肌が立つ。やぱっり人間じゃなかったんだ・・・
だが、魔王という凄い奴が何故異世界の人間を殺したのだろう。殺して何の代価があるのやら。
《はい。この世界で最強である神を滅ぼそうとしている魔王です。デス・スライムという生物を使い、異世界の人間などに融合して体を乗っ取ります。そのまま融合者は今の体に耐えられず死にます。そしてその者たちは悪魔として転生し沢山の生物たちを殺し、血肉を吸収し殺した相手の能力を獲得することが出来ます。そして最強の兵器を作り、神に襲い掛かろう。という感じです》
成程。そういう考えだと話が通る。
だが、俺は何も問題ない。デス・スライムとやらと融合してる気配もないし、ただ刺殺されただけだ。だったら何故・・・
理解できないこともあるが、取やえず俺が危険な状況だと言うことは理解した。まさか、神が狙われてるとは・・・
(じゃあ俺、危なくないか?)
《大丈夫ですよ。よっぽどのことがない限り、マスターは見つかりませんよ》
(まあ、そならいいが・・・じゃ、相棒にいいの考えてやるよ)
《流石マスター!》
守護神さんは大丈夫だというが、最強とおける神が最強ではなくなりそうという状況に至る世界。ちょっと・・・嫌、だいぶ心配だ。
それから数分。ようやく名前を考え終えた。守護神さんはというと、俺を見てすぐ思いついていたらしい。凄いのだったら俺のはどうなるのか・・・
《ではマスターからどうぞ》
(えっと・・・守護神さんはルシア・フリードで)
《流石マスター! ネーミングセンスもばっちりですね!》
(そ、そうか?)
俺はネーミングセンスがないとばかり言われていたので、アニメキャラを名前を貰った。
まあ、喜んでいるようだしそれでいいだろう。
《ではマスターの名前ですね。マスターはアラン・フリードです》
(アランか・・・凄く気に入った)
アランという名前は聞いたこともないが、何故かしっくりときた。凄い数のアニメや漫画を見た中にない名前。もしかしたら合ったかも知れないが、これが一瞬で考えたとは、流石守護神さんです。
(じゃ、取やえず洞窟から出るか)
《案内しますね》
(宜しくな。相棒)
《はい!》
そんな感じで、名も知れない洞窟の中を一人(二人)で歩き出した。
その洞窟の抜けたその先には広い森があり、日本とは違う世界が広がっていた。
そんな中、あなたは現れた。笑顔をなくした、黒く染まって終った心を持つ、本当は笑顔の絶えない死神と呼ばれるあなたが。