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冬のあしあと

作者: 若松ユウ

 しんしん。さくさく。

 雪の上に、大小ふたつの二の字が続いている。

 ひとつは、若き男の下駄によるもの。

 もうひとつは、幼き少女によるもの。

 シラカバの林を抜けたところで、あしあとはひとつだけになった。

 つかれた娘を、父親が抱き上げて歩いたからである。


  *


 しんしん。さくさく。

 雪の上に、大小ふたつの二の字が続いている。 

 ひとつは、老いた女の下駄によるもの。

 もうひとつは、健やかな青年によるもの。

 カラマツの林を抜けたところで、あしあとはひとつだけになった。

 つかれた母を、息子が背負って歩いたからである。


  *

 

 しんしん。さくさく。

 雪の上に、大小ふたつの二の字が続いている。 

 ひとつは、可憐な雪女の下駄によるもの。

 もうひとつは、愛らしい雪童子によるもの。

 カンチクの林を抜けたところで、あしあとはひとつだけになった。

 迎えに来た雪男が、ふたりを肩に乗せて歩いたからである。


  *


 ずんずん。ぽかぽか。

 日が暮れた村に、点々とあかりがともる。

 父と娘が鍋の支度をしている頃、母と息子は餅を焼いていた。

 そして、雪の精たちは、陽気にうたい、おどっていた。

 ときの流れが、いまよりゆったりしていた時代のこと。

 ある初冬の、あどけない情景である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] しんしん。さくさく。 この表現が水気の少ない雪ってかんじで、最後に風に吹かれて踊ってる様が見えるようでした。
[良い点]  素敵なゆったりとした詩だと感じました。最後の雪の精が冬の足跡を示して、素敵な雰囲気を醸し出していると思います。 [一言]  素敵な詩をありがとうございます。
[一言] 最初から最後まで優しい世界。 あしあとを思い浮かべながら、じんわり胸があたたかくなりました。ひとも妖も、誰もが相手のことを思いやれる世界。素敵ですね。なんだか家族をぎゅっと抱きしめたくなるよ…
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