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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅹ章 ~エマーラル大陸編・Ⅲ~
98/111

それぞれの戦いと救世の仮面


ドーバル軍によるエマーラル大陸攻略戦が始まり、北西と南西からは激音が鳴り響き、各国の避難している民達は恐怖に怯えていた。


そして、次第に大将格が戦闘を開始した南西部。



「はっ!」



「はっ! せいっ!」



ゼオールとレバンが二人掛かりで大将ルネスと戦っていた。



「今だ!」



ダンっと散弾銃を放ち、同時に飛び込んで剣の突きを放つ。



「ふん!」



しかし、魔弾はルネスの強固な肉体によって弾かれ、剣はランスで弾かれると、その衝撃でゼオールも後方へと飛ばされてしまう。



「―女 王(クイーン)熱針(ヒートスピア)―!」



レバンは再び剣に熱を帯びさせ、鋭い突きを放つ。


だが、ルネスの身体に突き刺さるも致命的な傷には至らない。



「あっちぃな。 だが力が足らんぞ力が! 突きはこうするもんだ!」



ブォっと巨大なランスが物凄い速度で真っ直ぐに放たれ、レバンへと襲い掛かる。



「ぐっ!?」



レバンはそれを剣で受けるも、凄まじい衝撃で吹き飛ばされ、後方の木に叩きつけられた。



「ぐはっ……なんて力ですか……」



「レバン!?」



「おっと、戦争中に余所見はいけないぜ? 命取りだ」



ブォンっとランスではなく、剛腕による裏拳がゼオールの身体に激痛を走らせる。



「ぐぁぁああ」



ズドォンっとゼオールまでもが吹き飛ばされ、周囲の味方兵達はその顔に恐怖が生まれていく。



「おいおい、さっきまでいい感じだったんじゃねぇのか? もっと漢見せて見ろぉ!!」



ルネスは身を低くすると、そのまま周囲の兵達へと突進し、どんどん吹き飛ばしていく。


その姿はまるで重機戦車だ。



「このままでは……マズい……、はぁ、はぁ」



「私が囮になります……殿下、は……」



「ダメだ! もう二度と仲間を、大切な人を失いたくない! その為に力を付けたんだ!」



「……ふっ、分かりました。 でも危険だと判断した場合は逃げて下さい」



二人は立ち上がり、再び剣を構える。



「ほお、良いね。 それでこそ漢だ。 来い!」



「はぁぁあ!!」



「はぁ!!」



ギン、ギン、バシュ、ズバ!


二人の剣技がルネスに傷を負わせていく。


しかし、その傷はまるで小動物の引っ掻き傷なのだが、それでも攻撃を止める事なく、奮闘していく。



「力が足りん! もっと腰を使え!」



「ぐぁあ」



「ぐほぉ」



ルネスはまるで鬼教官の如く、部下を訓練するようにアドバイスをしながらゼオールとレバンを吹き飛ばしていく。



「こんなもんか? 俺を止めねぇとグラーゼンが滅びるぜ?」



「くっ、させるかぁ!!」



ゼオールはルネスの言葉に怒りを覚え、剣を振るい、散弾銃にありったけの魔力を込めると、一気に撃ち放った。


ダダン!!



「ってぇ……、やれば出来んじゃねぇか!」



見ればルネスの腕は散弾によって肉が見え、血が滴り落ちている。



「だが、それで終わりじゃ意味がねぇぞ! おらぁ!」



「ぐほっ……くそ、魔力が……」



「殿下!? はっ!!」



レバンが踏み出し、怪我となったルネスの肩目掛けて切り裂いていく。



「チッ、意外と強度あったか……まあ問題ねぇ!」



ギン、ギンっとレバンの剣とルネスのランスがぶつかり合い、火花を散らしていく。



「―氷の刃(アイススラッシュ)―!」



レバンは氷の魔術で鋭い刃を放ち、それを防ぐ体勢を取ったルネスの後方へと回って首元に剣を突き立てる。


バシュ!


ルネスの首から血が噴き出て、ついにルネスが膝を突いた。



「首は鍛えようがないですからね……」



「ふん、良い腕だ。 だが、これで終わりとはいかんぞ?」



「なっ!?」



ルネスが膝を突きながらもグッと首に力を入れると、筋肉の膨張によって血が止められていく。



「俺がどんだけ戦争で動いたと思ってる。 これくらいの応急処置は当然だろ」



「さすがは軍人と言ったところですか……参りましたね……」



「ぬかせ、お前も執事とは思えない殺気だぞ? ふん!」



再度レバンの剣とルネスのランスが火花を散らしていくのだが、ルネスの強靭な肉体に思うようなダメージを与えられず、次第にレバンの体力が削られていく。



「おっと、隙ありだぜ!」



ルネスがランスを突きではなく、横にぶん回してレバンを吹き飛ばす。



「ぐはっ」



更に追い打ちをかけるように鋭い突きがレバン目掛けて放たれた。



「がぁ!?」



レバンは咄嗟に避けたのだが、思いの外ダメージが大きく、上手く避け切れなかった。


そして、ズバンっと音を立ててゼオールの方へと吹き飛んでいく。



「レバン!!」



「ぐぅぅ……しまった……」



「レバン、お前……」



「困りましたね……やはり、逃げて下さい」



「嫌だ! お前、足が……これでは」



先程のルネスの猛進によってレバンの左足がランスの犠牲となってしまった。


膝から下は既にその場にはなく、吹き飛ばされている。



「片足だけか……まあ命があって良かったじゃねぇか」



「くっ、このぉぉお!! よくもぉぉぉおお!!!」



ゼオールは散弾銃を取り出し、「―無数(カウントレス)の 牙(ファング)!―」と、前回よりも沢山の魔弾を撃ち放ち、ルネスを囲っていく。



「なんだこりゃあ?」



「うぉぉぉおお!!」



牙の様な鋭い魔弾が次々にルネスへ襲い掛かり、辺りは土煙が昇っていく。



「はぁ、はぁ、魔力、が……」



「くそ、痛ぇじゃねぇかよ全く……」



土煙が払われると、全身血だらけになったルネスが立っていた。


しかし、未だその闘志は健在。



「化け物め……」



「殿下、逃げて、下さい!」



レバンは足を押さえ、止血をしながらゼオールへと投げ掛ける。



「逃げない! 何か手はあるはずなんだ!」



「そんなもんねぇよ! 生きるか死ぬかだ! そして、もう飽きたからこれで終わりだ!」



既にゼオールは魔力の消費でフラフラな為、突進してくるルネスの攻撃を躱す力は残っていない。



「殿下ぁぁぁああ!!」



レバンの痛みを堪えた呼び声が鳴り響く――




※ ※ ※ ※ ※



時は遡り、数時間前――



「クロ、大変! 血の匂いが広がってる」



「くそ、まさかドーバルがエマーラルに進軍してたとは思わなかった」



「これ、結構マズいんじゃねぇか?」



「ああ、そうかもな……皆、生きててくれよ……

ルル、何か情報は?」



「そうね……確かにエマーラルだけはドーバルの支部が無い。

だからずっと狙ってたのだけれど……


真っ先に狙うのはローズベルドのはずね」



「エリーが邪魔って事か」



一行はエマーラル大陸の手前で一度魔動機を止め、作戦会議をしていた。



「この前貰った大将達の情報、ここで役に立ちそうだな」



「ええ、そうね。 ただ、誰が加わってるかは分からない。

どこかで情報を得られればいいんだけど……」



「いや、時間がない。 このまま行くしか手は無さそうだ」



「私の予想だと……」



ルルナリアはエマーラル大陸の地図を開き、皆の前に広げる。



「先ずはローズベルド、エリネールを狙う。


そうなると、必然的に船や魔導飛空艇を停めるのはこことここね」



「南西と北西……ローズベルドを挟み撃ちにしてからイーリスとグラーゼンをっていう事か」



ルルナリアの言葉にクロビが予想をしながら話していく。



「恐らくだけど、グラーゼンは元々武力が低い。

逆にイーリスはフラーネス王が戦神と呼ばれる人だから南西に兵を集中するわね。

私ならそうする」



「さすが戦術を得意とするだけあるな」



「大体の戦も実は裏で私が伝えてたのよね」



「ルルの把握力は物凄い。 だからこそ、ドーバルもここまで支部を増やせたんだ」



パトリシアがルルナリアの功績を自慢気に話していく。



「ならルル、俺等はどう動けばいいか指示してくれ」



「そうね……ローズベルドのエリネールは良いとして、グラーゼンとイーリスにハンターや戦闘に向いてる人はいるかしら?

えっと、フラーネス王以外で」



「ああ、ならイーリスは第一王子とS級ハンターのレオンなんとかってのがいる。

後、第一王女のメイは色眼持ち。

グラーゼンは俺の友人で第一王子のゼオールと、その執事のレバンだな。

まあ、グラーゼンの方が武力が低いのもあって、その二人しかいないが、イーリスは騎士団と兵がいる」



「そう……多分、イーリスが兵を回してるはず。

連合軍ね。

でも、グラーゼン側が不利なら……クロはそこに。

リッシュはエリネールのところ、リースはイーリス国の前に。

リシアとダコルはローズベルドの北と南にそれぞれ降りてどちらにでも動ける状態にして。

後は、それぞれが通信で状況を伝えて人出が足りない場所へ移動していくのがいいと思うわ」



「なるほどな、了解」



「分かった」


そして、それぞれが仮面を被ると、クロビがある事に気付いた。


「あっ、ダコルの仮面が無いな……」


ダコル以外はロスターナで仮面を作って貰っていたが、その後に仲間となったダコルは持っていない。


しかし、「いや、あるぞ!」とリッシュがポーチを開いた。


「ルッセル行った時、ドンズのおっさんに幾つか作って貰ってたからな」



リッシュがポーチから鬼風の仮面を取り出してダコルに渡す。



「助かる。 これで正式に仲間になった気分だ」



「だな! ようこそ!

じゃあまあ、また戦いだけど、死ぬなよ。 ルルはどうする?」



「私はクロがグラーゼンの街で降ろしてくれればいいわ。

そしたらこっちで情報集めて伝えるから」



「分かった。 状況見て指示を頼む。

じゃあ行こうかっ!」



一行が魔動機を起動させ、エマーラル大陸へと向かった。


そして、大陸の上空を飛んでいると至る所から煙が上がり、森が燃えているのが見える。



「じゃあさっきの作戦通りに! 皆、またあとで!」



「「「了解」」」



リースはイーリスへ、パトリシアはそこから北西の激戦区へと走り、リッシュはローズベルドの手前でダコルを降ろすと、そのままエリネールのいる場所へと向かった。


そして、クロビはルルナリアをグラーゼンで降ろすと、南西へと飛び立った。


「さて、ここでドーバルを叩けばある程度は弱まるだろ」



すると、森の方で何かを叫ぶ声が聞こえた。



「あれは……ゼオ!? マズい! 間に合うか!!」



魔動機に魔力をめいっぱい注ぎ、ブォォォ!と速度を上げて一気に下降していく。


そして――







ギン!



「ゼオ、間に合った」



「ク、クロ……なのか?」



「あんだ? 仮面……そうか、お前が噂の仮面で紅眼か?」



「どっちだっていいだろ? とりあえず、一回どけっ!」



クロビは黒鎌を振るい、ランスを弾くと縮地で速度を付け、ルネスの腹に蹴りを打ち込む。



「ぐっ、良い蹴りじゃねぇか」



ザザーっと少しだが後方へとルネスが追いやられる。



「レバンさん……大丈夫、じゃなさそうだな……」



「申し訳ない……私はこれ以上は戦えませんね……」



「でしょうね。 あっ、でも聖女と知り合ったんで、足が必要なら生やせるかもしれませんよ」



「はは、お願いするかもしれません」



「分かりました。 先ずは、こっちか。 

ゼオは? 大丈夫か?」



「ちょっと魔力切れだね」



「なら、ここは俺がやろう」



「ふん、来い紅眼! お前ならちょっとは楽しめるんだろう?」



「別に楽しむつもりはないけど、なっ!」



ギンっと再び黒鎌とランスが激しくぶつかり合う。



「―黒針(くろばり)―!」



「チッ、ふん!」



ルネスは筋肉を膨張させて針を外へ出す。



「おいおい、そんなのありかよ」



「残念だった。 お前の戦い方はある程度情報が回ってるぜ?」



「そうかい。 じゃあこういうのはどうだ!」



クロビは鎌の刃部分を消し、黒棍を構えて素早く振り回す。



キン、キンと音を立て、競り合っていくのだが、ルネスがランスを勢いよく振り抜き、クロビを吹き飛ばす。



「ってぇ……最近、馬鹿力多くないか?」



「まだこんなもんじゃねぇよな?」



「はぁ~、はっ!」



黒棍をクルクル回し、ルネスの突きに合わせてそれを受け流していくと、隙を突いて棍を叩き込んでいく。



「チッ、意外と重てぇな」



「そりゃあ鍛えてるからなっ!」



ズンっと更に重力の魔術を加えて一気に振り下ろしていき、体勢が崩れる瞬間を見逃さずに手を当て、勁を放った。



ズン!



「ぐほっ……やるじゃねぇか……勁を放つとは……お前は東方国の人間か」



「知ってるのか。 まあどっちでもいいけどな」



「だが、勁を使えるのはお前だけじゃないぜ! ふん!」



ルネスは勁を込めた拳を振り抜き、クロビをガードの上から吹き飛ばした。



「ぐはっ」



「これでお相子だぜ、紅眼」



「ちっ、厄介な……」



「どんどん行くぜぇ~!!」



遂には二人が武器を捨て、互いに勁を込めた拳をぶつけ合っていく。



ズン!


ドン!


徐々に地面が割れ、クレーターが生まれていく。


そして、魔力を練り直したゼオールが立ち上がった。



「クロ、もう大丈夫だ!」



「よし、二人で畳みかけるぞ! あの時の修業を思い出せ!」



「ああ!」



ゼオールも力の流れを読み取り、ルネスの拳を受け流していく。



「小癪なぁ! おらぁ!」



ルネスは二人の攻防に段々苛立ちを覚え、ガシっとクロビとゼオールの頭を掴むと、そのまま地面に叩き落した。



「ぐあ!?」



「がはっ!」



「ったく面倒なガキ共だ、そろそろ終わりにするぜ」



ルネスはこれまでの戦いで既に血だらけの状態。


しかし、全くと言って良いほど勢いは衰えてなく、二人を力でねじ伏せていく。



「くそっ……なんて身体してんだよ」



「全くだね……私もそろそろ限界かもしれない」



クロビもゼオールも、特にゼオールはここまでの戦いでダメージも大きく、疲労が顔に出ている。



「ゼオ、魔力を限界まで銃に込めろ。 あのタイプは筋肉に覆われてるが、口ん中はそうでもない」



「なるほど……だが、難しそうだな。 やってみるけど」



「よし、俺が突破口を作る! ―重力(グラビティ)雷撃(ライトニング)―!」



クロビから重力と雷の魔術が行使され、ルネスの周辺に圧力が掛かる。



「これしき!」



「まだだぞ! ―黒雷(こくらい)―!」



そして、漆黒の雷がルネスへと降り注ぐ。



「ぐぁぁああ」



さすがのルネスも黒炎を含めた魔術は防ぎ切れず、全身に火傷を負っていく。



「ゼオ、今だ!」



「うぉぉおお!!」



ダっと縮地を用いて距離を詰め、跳躍すると雷によって悲鳴を上げているルネスの口にガボっと散弾銃を突っ込んだ。



「っ!?」



「レバンの足を奪った報いだ!」



ダダン!



ゼオールの散弾がルネスの口内で爆発を起こし、プスプスと音を立てながらルネスが崩れていく。



「ふぅ~、とりあえずこっちは片付いたか」



「ああ、クロが来てくれて助かった。 すまない」



「いいよ、先にレバンさんだな」



「レバン、大丈夫か!?」



「殿下、止血はしましたので、大丈夫かと」



「治療班、レバンの治療を頼む」



「「「はっ」」」



治療班がレバンをグラーゼンの陣営へと運んでいく。


すると、リースから通信が入った。



『クロ、そこにゼオいる?』



「ゼオ? いるよ」



『ゼオぉ~、大丈夫なの!? ゼオぉ~』



リースの通信魔道具から聞いた事のある声が聞こえる。



「メイ、大丈夫だ。 クロのお陰で助かった。

レバンが重傷ではあるが……」



『うぅ……良かった。 でもレバンさん……うぅ』



「とりあえずこっちは片付いた。 リース、大将格が動いてるから気を付けろ」



『うん、わかった』



「じゃあ本陣潰すか?」



「そうしたいが、ちょっと体力が……少し休ませてもらうよ」



「分かった。 じゃあまた後で」



「ああ……」



クロビがその場を離れると、ゼオールは崩れる様に倒れた。



「ゼオール様!? 治療班! 直ぐに殿下を運べ!」



「はっ」



ゼオールはルネスとの激しい戦闘によって体がボロボロだった。


表面上では傷はそこまでなのだが、激しい突進や巨大なランスによって体内にダメージを負っていたのだ。



※ ※ ※ ※ ※



≪ローズベルド城前≫



「どうにか抑えられているかの……状況は?」



「はっ、北西ではアルフレッドとレオンの二人が大将各と交戦中、やや押され気味です。

南西ではレバンが片足を失い、ゼオールがダメージによって倒れました。

が、その前にクロ殿の参戦で大将格は討ちました」



諜報部隊長のルルがエリネールへ報告をする。



「クロが来ておったか……と言う事は……」



「そういう事だ」



「リッシュか」



「それぞれが手分けして分散してる。

俺はここを任されたからな。 どうすりゃあいい?」



「そうじゃの、今のところは進軍を抑えられておるのじゃが、先に本陣は潰したい。

頼めるかの?」



「本陣ねぇ……俺は後方支援だからな。 こっからあの船ぶっ壊すか」



「ほう、それもここでの修業の成果か?」



「だな。 行くぜ、フルバーストショット!!」



リッシュがローズベルド陣営から魔力を練りに練った熱線を遠くの船目掛けて撃ち放った。


ズキューンっと凄まじい音を立て、真っ直ぐに飛んでいくと、やがてドーバル軍の船が大爆発を引き起こす。



「これで敵が増える事はねぇだろ」



「さすがじゃの。 さて、掃討戦といこうか。

―星の嘆き、命尽きるは数多の流星、最期の灯は敵を殲滅せん!

流星雨(ホーリーレイ)≫!!」



エリネールの光魔法が上空へと打ち放たれ、次第に雨の様に鋭い光がドーバル兵達を襲っていく。



パシュン!パシュンっとリッシュは後方から兵達の頭部を確実に撃ち抜いていった。



「こっちはもう大丈夫じゃろう。 後は北西じゃな」



「ああ、あっちは新しく入った二人が居るから大丈夫かもな!」



「また増えたのか。 大分組織っぽくなったの」



「だろ? 『仮面の(マスカレード)断罪人(コンビクション)』ってんだ。 かっけぇだろ?」



「まっマス……ま、まあいいんじゃないかの? うん」



「だろ? なんならエリネールも入るか?」



「いや、妾は大丈夫じゃ。 気にするな! よし、行くぞ」



エリネールは何故だか無表情のままその場を立ち去っていくのだった。



「ダコル、リシア、南西はほぼ片付いた。 後は北西だからそっちへ頼む」



『分かった』



『了解した』



「クロ、そう言う事だから!」



『おう! さっきの船の爆発はリッシュだろ? まああれでとどめみたいなもんか』



「かもな! じゃあ後でな」



『はいよ』



そして、仮面の(マスカレード)断罪人(コンビクション)は各自が北西へと向かって行った――


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